ファンクショナル・アプローチによる年間計画の立て方 3STEP

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■人生は1000カ月。時間は有限なのだ

人の一生は「何カ月」あるかご存じですか。平均寿命は概算で約1000カ月分です。人生は72万時間と言われてもピンときませんが、月数では人生はたった1000カ月にすぎない。

さらに衝撃の事実を申せば、未就業期やリタイア期を差し引くと、「働ける期間」は全体の半分、約500カ月でしかない。

なぜ、そんなことを言うのか。時間というリソースは有限だ、ということをいま一度認識してほしいからです。時間は限りあるもの。ためられませんし、お金で購入することもできません。

年間目標、つまり貴重な500分の12(月単位)、40分の1(年単位)を考えることは人生という尺度においてかなり重要な作業となるのです。

私は長年、ファンクショナル・アプローチ(以下、FA)という米GE社で開発された問題解決の技術を使い、様々な経営・事業・個人(ビジネスマン)を対象とした時間管理などのスキル改善に取り組んできました。

FAとは、ある問題を一度、ファンクションに置き換えてから解決しようとする手法です。ここで言うファンクションとは「役割、機能、意図」のこと。自分にとっての課題の目的や本質が何かを明確にすることが改善の出発点となるのです。

年頭の今、FAの思考によって年間目標を立てようとするとき、最初にするべきなのは、図のように「私は今年、○○を△△する!」という具体的な内容のファンクションを掲げること。わかりやすい例を言えば、「対前年比業績を2倍にする」というように2013年の自分のファンクションを定義するのです。この際、ポイントとなるのは目標の「程度」を明確に書くこと。「営業活動を精一杯頑張る」といった漠然とした目標で程度が曖昧なものはNGです。

程度のはっきりした目標が固まれば、次は、その達成に必要な細かな仕事をリスト化して、それぞれに適したターム(期間)を決める作業に移ります。四半期では何をするか、そして1カ月では何をするか、さらに1週間、1日、と短いタームに落とし込むのです。

■仕事量の見積もりは想定の1.4倍

ここで気をつけてほしいのは、ひとつの仕事にどれだけの時間を見込めばいいかという問題。

実際に仕事にかかる時間はおおむね当初の想定の1.4倍で見積もっておけば大丈夫でしょう。100時間で完了しそうな仕事なら、140時間です。

なぜなら、どんな仕事であれ、緊急を要する割り込みの案件発生や不測の事態による遅延リスクが潜んでいるからです。

割り込みなどの遅延リスクに遭遇するのが週あたり何日で、そのうちそれに対処しなければいけないケース(発現率)が何%で、その作業に何時間かかるか(影響度)をかけあわせると1日平均0.4の時間リスク(ロス)が出ることがわかったのです。

どんなに効率を重視しても時間ロスは起きる。よって、それをあらかじめ見込み、0.4のバッファ時間を設けたうえで、タームごとの仕事量を決定すべきなのです。余分に見えるこのバッファこそが、時間オーバーで行き詰まって計画倒れ、といった事態を防いでくれます。もし、ターム内で時間が余ったら、次のプロジェクトを前倒しでやっていけばいいでしょう。

誰にも身に覚えのある時間オーバーという失敗の元凶はスケジュールの見積もりの甘さだけではありません。ターム内でもタスクの「役割」をしっかり確立せず、程度のはっきりしない目標にしてしまっている人が多いのです。

たとえば、この1年間で「新規契約件数を3倍にする」という目標を掲げたとします。達成のために、「1日の飛び込み営業を100件する」「月に名刺交換数を300にする」といったことを短いターム内の目標にする人がいます。

これらは一見、具体的に見えますが、「手段」を述べたにすぎません。「○○回やった」という手段が完了しても役割が達成できたとは限りません。たとえば、「おどおどせず堂々と顧客にプレゼンし、『わかりやすい説明だった』とほめてもらう回数を月5回以上達成する」。年間目標と同じく、役割をはっきりさせることが目標設定のあり方です。

■年間目標の前に人生の目標を決める

続いてやるべきは、タームごとに落とし込んだ小ファンクションの進捗状況を定期的にチェックすることです。たとえば「毎週土曜」「毎月30日」はチェックの日と決めて、こまめに計画と現状とのギャップを確認し、翌日から改善するのです。

絶対に避けねばならないのは、「40日間の夏休み計画の達成度チェックを8月31日にする」というような行動です。実践すべきは、40日間を10日ごとのタームに分割し、それぞれの役割をはっきりさせること。そしてタームが1回終わるごとにその都度、進捗状況をチェックするということなのです。

現在は、パソコンやスマホにアラート機能のあるアプリがあります。手段は何でもかまいませんが、必ずチェックできるような仕組みをつくりましょう。

どうも前述したような具体的な目標が立てにくいという人もいると思います。そんなときはもう少し長いタームで自分がどんな人生を歩みたいのか考えてみてください。

それがわかれば、そこから逆算して年間目標が立てられ、さらにそれを四半期や1カ月、1週間、1日と細分化することが可能になるのです。

以前、勤務していた会社で新入社員に「何のために入社したか?」と聞きました。ほとんどの新人が「世のため、人のために」といったはっきりしない回答だったのですが、1人だけ「高級スポーツカーに乗るため」という回答がありました。思わず笑ってしまいましたが、それが、当時の彼の人生の大目標なら大いにけっこうです。

「その目標を絶対に達成しなさい。そのために1日、1週間、1カ月をまじめに働き、業績をあげ、稼いで節約に励みなさい。ファンクションを変えるなよ」

彼に送った助言は、読者の皆さんへの言葉でもあります。

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ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役 横田尚哉

経営コンサルタント。総額1兆円の事業改善に乗り出し、コスト縮減総額2000億円達成。著書に『ビジネススキル・イノベーション』など。

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(ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役 横田尚哉 構成=プレジデント編集部)