色気が加わった新生シアタープロダクツ<2013年秋冬コレクション>

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 良い意味で肩すかしを食らった気分だった。「THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)」の新デザイナーに就任した藤原美和は小物ライン「ensemble THEATRE PRODUCTS(アンサンブル シアタープロダクツ)」のデザイナーだったが、彼女のこれまでの作品は完璧なまでに「昭和の西洋」だった。むせ返るようなバタ臭さと、チープな素材を高級に見せるテクニック、そしてユーモアのセンスがある作品は、熱狂的な濃いファンを魅了するけれど、決して一般的なカワイイではなかった。だから2013-14年秋冬コレクションで「FRIDAY」というテーマでOLの1日を表現するなら、昭和30年代のオフィスレディがランウェイをおしとやかに歩くものだと思っていた。(文・ファッションジャーナリスト 増田海治郎)

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 そんな事前の予想は大はずれ。「働く女性の1日、とくに出社と退社のモメントに注目しながら、1日の時間の流れの中で起こる気持ちの変化をスタイルで表現した」(藤原)というコレクションは、とてもモダンで大人っぽく艶っぽいものだった。これまでのシアターの美点である「儚さと永遠の少女っぽさ」に、惜しまれつつ2013年春夏で休止する武内昭によるメンズブランド「PASCAL DONQUINO(パスカルドンキーノ)」の「長く着られる」要素と、同じく休止する藤原が手掛けてきたアンサンブルの「懐かしい西洋」の要素が最高のバランスで加わり、さらに、今までもあったけれど巧妙に隠されていた「色気」がひょっこり顔を出している。ブランドとしての総合力が明らかにパワーアップしたと感じさせた。

 出社するためのオフィスウエアは、抑制と露出のバランスが絶妙だ。ファーストルックのグレーのカシュクールジャケット(素材はSUPER120's)は、フロントのマニッシュな雰囲気とバックの大胆な露出のギャップに心を奪われる。スーツのディティールを1着に収めたリバーシブル天竺のジャンプスーツは、スウェット感覚で着られるイージーさと艶かしさが同居する逸品。一方でアフターファイブは華やかかつパワフルで、社交界を連想させるマキシ丈のケープドレスや、ドレープが美しい大柄な花柄のミニドレス、そしてレッキスラビットのファージャケットのインナーに着たランジェリーやマイクロショーツなど、下着と洋服の境界線を曖昧にする試みも見てとれる。

  「花金(はなきん)」という言葉が死語になって早20年。ディスコはもちろんクラブ文化も衰退の一途を辿っているが、あの頃のOLには仕事も遊びもとことん楽しむパワーがあった。80年代をストレートに表現した音やボディコンシャスなシルエットでバブル時代を懐古しつつ、なんとなく元気がなさそうに見える現代の女性たちに「今を楽しく艶やかに生きましょう!」とメッセージを送っているようにも思えるコレクションだった。(文・ファッションジャーナリスト 増田海治郎)


■THEATRE PRODUCTS 2013-14年秋冬コレクション全ルック
 http://www.fashionsnap.com/collection/theatre-products/2013-14aw/