もしも科学シリーズ(58):もしも賞味期限切れの食品を食べたら


海外のバラエティ番組で、1週間ほど放置したサラダが液体になっているを見たが、本当に起きるのだろうか?



消費と賞味の期限はどちらも大事な意味を持っている。無視して食べれば、食中毒で命を落とすことさえあるのだ。



■2つの期限



食品に関する期限の定めは、食品衛生法とJAS法の2つがあり少々ややこしい。まず1948年に施工された食品衛生法で、乳用牛乳等に製造年月日の表示を義務づけたのが始まりで、次いで1970年にJAS法に基づく品質表示基準制度が開始され、「政令で指定された物資」も表示するようになった。



製造年月日のおかげで何日前の食品かひと目で分かるようになったが、現在のように「いつまで」の意味ではないので、安全か否かは個々に判断するしかない。そこで1985年に期限表示が導入され、のちに消費期限、賞味期限、品質保持期限の3種類が誕生した。



3種類もあるとどれを信じれば良いか分からなくなってしまう。そのため何度かの変更を経て、2003年に品質保持期限を賞味期限に統一し、現在の消費/賞味期限の2種類となったのだ。



消費者庁の資料によると、消費と賞味の違いは、



 ・消費期限 … 品質が急速に劣化する食品 / 安全を欠くこととなる期限



 ・賞味期限 … 比較的品質が劣化しにくい食品 / おいしく食べることができる期限



と定められている。つまり、賞味期限はおいしく食べるための目安なのに対し、消費期限を越えると危険と解釈できる。



一般消費者に直接販売される食品の場合、表示義務のある食品は、



●消費期限



 ・弁当、そうざい、サンドイッチ



 ・食肉、生かき、魚介類



 ・乾燥した野菜、果実(かんきつ類とバナナを除く)



●賞味期限



 ・スナック菓子



 ・カップ麺、レトルト食品、缶詰



 ・牛乳、バター



などだ。賞味期限=目安なら、古い缶詰でも膨らんでいなければ食べられるという話は、あながちウソではなさそうだ。対して牛乳は劣化が遅く、農林水産省のパンフレットにも賞味期限と記されているのだが、それならなぜ製造年月日が気になったのか不思議だ。



■100℃に耐える毒素



消費期限を越えた食品は食中毒のリスクが高まる。腐敗や菌類の繁殖が進んでいるからだ。



腐敗は食品や空気中の微生物が、タンパク質やアミノ酸を分解することが原因だ。粘りや味の変化、刺激のあるアンモニア臭、卵の腐ったような硫化水素臭、乳酸菌によるエタノール臭がしたら腐敗が進んでいる証拠だ。



アメリカ合衆国農務省(FSDA)のwebでは、4.4℃以下(=華氏40度以下)の冷蔵庫で保存できる期間が食品別に示されている。生の牛肉や豚肉は3〜5日、生卵は3〜5週間、といった具合だ。



缶詰や工場でパックされた調理済みの食品も完全ではない。缶詰は長期保存に適した方法で、シチューやスープなどは5年ほどもつが、トマトやオレンジのような酸度の高いものは1.5年程度とされている。パック済みの製品はもっと短く、ハムは1週間、ベーコンなら2週間、ホットドッグも2週間ほどとされている。



生卵が5週間もつのは勉強になったが、真空パックされたホットドッグが販売されているのは驚愕だ。



もし食中毒を起こすと、命を落とすことさえある。汚染指標菌に指定されている黄色ブドウ球菌は、普段から皮膚や鼻孔に生息している常在(じょうざい)菌なのだが、これが生み出す毒素・エントロトキシンが吐き気や腹痛を引き起こす。毒素は100℃の熱湯で30分加熱しても分解しないので、傷んでから調理しても手遅れだ。



O157に代表される腸管出血性大腸菌はベロ毒素を出し、溶血性尿毒症症候群を引き起こす。強い腹痛や血便、重症になると尿毒症によるけいれんや意識障害に発展する。厚生労働省も「重要なお知らせ」として注意をうながしているほどだから、その危険性を語るまでもないだろう。



どちらの期限も開封前が前提で、開封後は急激に傷みやすい。冷蔵庫に入れておけば大丈夫と思われている場合が多いがこれは間違えだ。



食品の廃棄は望ましくない。消費期限を過ぎないように自分の胃袋に見合った量を購入し、賞味期限内においしく頂くよう心掛けたい。



■まとめ



数年前に購入した非常食の期限が切れた。アメリカ国防省が採用している保存食MRE(ミール・レディ・トゥ・イート)なので、丈夫に作っているだろうから、パッケージが膨らんでいなかったら食べてみようと思う。しばらく誌面に現れなかったら、無謀なチャレンジだったと笑ってほしい。



(関口 寿/ガリレオワークス)