もしも科学シリーズ(54):もしもパラレルワールドが存在したら


海外SFドラマ「フリンジ」では、パラレルワールドが描かれている。もう一人の自分に会ったら、どんなリアクションをするのか楽しみだ。



パラレルワールドは存在するのだろうか?ビッグバンから始まったこの宇宙は一つだけとは限らず、並行宇宙が存在すると唱える科学者も多い。ワームホールに飛び込めば別の世界に行けそうだが、予想できない時間と空間が待ち受ける命がけの旅行になりそうだ。



■26次元の世界



この世界は縦・横・高さの3次元に、時間を加えた4次元として認識されるのが一般的だ。しかしこの宇宙を解明しようとしている学者は、9次元や11次元とする説が強く、なかには26次元と唱えた説もある。



何次元かを決めるには、構成している要素を何種類と定めるかによって決まる。空間と時間を合わせた3+1=4次元も、これ以外の要素も加味すれば26次元でも不思議はない。一つの例として「力」を挙げると、日常生活では強弱ぐらいしか気にしない力も、万物理論では4種類に分かれる。



 ・強い力 … グルーオン



 ・電磁力 … 光子



 ・弱い力 … ウィーク・ボソン



 ・重力 … 重力子



これらは、元は一つのエネルギーだったが、宇宙の誕生後に4つに分かれた。最後に生まれた「弱い力」のはビッグバンのわずか1兆分の1秒後というから、初期の宇宙はさぞかし慌ただしかったに違いない。



パラレルワールド=異次元と考えるのは性急で、この宇宙の中に存在する可能性もある。ノーベル物理学者であるスティーブン・ワンバーグ博士は宇宙をラジオに例え、空間には何種類もの電波が飛び交っているのに対し、そのうちの1つしか受信できないラジオのように、他の世界を認識できていないだけだという。同様に考えれば、同じ宇宙の中に認識できない空間があっても不思議ではない。宇宙の70%以上を占める暗黒エネルギーが正体不明なのだから、人間が認識していない空間があっても驚く話ではない。



高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、地球近傍に反物質世界がないかを調査している。幸か不幸か結果はNoだが、パラレルワールドが反物質世界だったら、行き来するのは危険すぎる。もう一人の自分と出会った瞬間に対消滅し、両方の世界がなくなってしまったら、ドラマの撮影もファーストシーズンで打ち切り確定だ。



■ちぎれる空間



アインシュタインの特殊相対性理論では、重力と空間は密接な関係が示されている。ベッドのような柔らかい素材に鉄球を置くと、その重さで鉄球付近が沈み込む。同様の現象が空間でも起きるというのだ。



現在確認されている物質のなかで、もっとも重いのはブラックホールだが、太陽の数億倍クラスの質量を持つ超巨大ブラックホールの周囲では、空間さえもひずみが生じる。ベッドの上の鉄球のように、ブラックホールが空間に沈み込むのだ。



この状態がさらに進むと、宇宙はちぎれ、水玉のように離れてしまう。宇宙の膨張を紹介した際にも触れたが、別の宇宙(マルチバース)の完成だ。一度離れてしまうと、宇宙間の行き来は容易ではない。ブラックホールとホワイトホールを合体させたワームホールが有力とされているが、残念ながら確認例はなく、現時点では架空の存在でしかないからだ。



この宇宙も、別の宇宙から派生した可能性は否定できない。パラレルワールド=別の宇宙と考えれば、意外と簡単に見つかるのかもしれない。ただし並行宇宙は存在しても、われわれが存在する世界とつながりを持った並行世界とは限らない。量子テレポーテーションを用いれば関係を持たすことはできるのだろうが、誰が、何のために関連づけるのか疑問が残る。加えて街や地球規模でおこなうなら、莫大(ばくだい)な労力とエネルギーが必要になるが、偶然起きる可能性はゼロに等しいだろう。



もしパラレルワールドに行けるチャンスがあっても、残念ながら、もう一人の自分と会える可能性は極めて少なそうだ。



■まとめ



強い力・グルーオンと比べると、重力は10の38乗分の1(=千京分の千京分の1)に過ぎず、ごく微弱な力でしかない。ビッグバンやブラックホールは強大な力を持っているが、宇宙全体から見れば誤差の範囲と言えるだろう。



そんな重力でさえ、人類はいまだにコントロールできない。パラレルワールドにたどり着くには、まだまだ時間がかかりそうだ。



(関口 寿/ガリレオワークス)