集中のコツ、上手な時間の使い方

がんばっているのに成果が出ない。そう感じているビジネスパーソンも多い。第一線で活躍し続けるにはもちろん、自己研鑽が必要だ。だが、その勉強は本当に、仕事の役に立っているのだろうか。ハイパフォーマーの学びの習慣を、600人アンケートの結果を交えながら紹介しよう。

▼村井瑞枝さんからのアドバイス

多くの方と同じく、私が人生でもっとも集中して勉強したのは大学受験のときです。朝6時に起きて通学前に勉強して、お昼休みや放課後も図書館で勉強。塾から帰った後も机に向かい、お風呂30分、ストレッチ30分など、勉強以外のことは時間を決めてできるだけ効率的にやろうとしました。すると今日は何時間できた、とゲーム感覚で楽しくなり、長時間の勉強も苦にならずにすみました。

その後、TOEFLを受けたり、アメリカの大学に留学するために必要なSAT(大学進学適性試験)を受けたときも、空いている時間はすべて勉強に注ぎ込みました。受験などでは、テストの日程が決まっているので、そこを逃すともう後がないという焦りも大きい。ゴールが決まっていて否が応でもやらざるをえない環境にいれば、自ずと集中力も出ます。いかにそうした環境に自分の身を置くかがカギだと思います。

ゴールのある環境に身を置けない場合は、ランチタイムを活用しています。ランチタイムは、どう転んだところで最長1時間です。あまり気が進まない勉強でも、苦しい時間は長く続かないと思えばそれなりに集中できます。

ランチタイムで足りなければ、仕事終わりにカフェで勉強します。ただ、その場合も時間は1時間に限定しています。その気になれば夜はいくらでも時間を使うことができますが、それゆえに緊張感がなくなり効率が落ちてしまう。どこかで区切りが必要です。

大きな目標に向けて数カ月単位で勉強する場合も、毎日コツコツ勉強をする場合も、大切なのはゴールの設定です。終わりがあると思うから、人はがんばれるのではないでしょうか。

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村井瑞枝●レストランプロデューサー
辻調理師専門学校にて調理師免許を取得後、米ブラウン大学、伊ボローニャ大学にてアートを学ぶ。帰国後、JPモルガン、ボストン コンサルティング グループを経て現職。訳書に『ウォールストリート・ジャーナル式 図解表現のルール』がある。

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▼阪部哲也さんからのアドバイス

仕事上どうしても必要な勉強と、いますぐ必要ではないが長い目で見たときにやっておいたほうがいい勉強では、適した時間帯や場所が違います。

いますぐ必要な本や雑誌は、帰宅後に風呂の中で読みます。あまり長く湯に浸かっているとのぼせてしまうので、ページをめくる手は速くなる。読み終わるまでお風呂から出ないと決めて本に向かうと、あっという間に1冊読み終わります。

一方、急ぎではないが忘れずに読みたい本は、ホテルのラウンジで人と打ち合わせした後に読みます。マンガ喫茶やファストフード店ではカジュアルすぎて気が抜けますが、ホテルのラウンジは品のあるお客さんが多く、緊張感が持続します。お勧めは丸ノ内ホテルのラウンジです。ピアノの音色が流れて雰囲気が落ち着いているし、コーヒー代が高いので、しっかり勉強して元を取ってから帰ろうという気になれます。

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阪部哲也●KANAEアソシエイツ代表取締役
1973年、奈良県生まれ。同志社大学法学部卒後、旧富士銀行、不動産会社、リクルートエージェントなどを経て、エグゼクティブサーチファームであるKANAEアソシエイツ設立。「日本ヘッドハンター大賞」金融サービス部門で最優秀賞受賞(2011年)。

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▼神永正博さんからのアドバイス

集中したいときのとっておきの場所は、何を隠そう電車です。サラリーマン時代、毎日片道1時間かけて会社に通っていましたが、博士号を取るための学位論文は通勤電車の中で書きました。さすがに論文の清書はできませんでしたが、メモに計算を書き込んだり、混雑しているときは乗車前に問題を頭の中に入れ、揺られながら考えていました。論文の下地になる部分は、電車の中で完成されたといってもいいでしょう。

どうして通勤電車がよかったのか。理由は2つあります。まず1つは、まとまった時間を取れること。働きながら勉強する場合、まとまった時間を確保するのは非常に困難です。1日の中で唯一、細切れではない時間が通勤時間でした。

もう1つ、アノニマス(匿名)でいられることも大きいと思います。自分の部屋や研究室で机に向かっていると、電話がかかってきたり宅配便が届いたりして、何かと邪魔が入ります。一方、電車の中は大勢の人がいるにもかかわらず、私を知っている人は誰もいない。自分がアノニマスなら、まわりもアノニマス。そうした環境に身を置くと、かえって自分だけの世界に集中できるのです。

おそらく同じことは多くの人が経験しているはずです。京大の近くに「進々堂」という喫茶店があります。ここは長居が可能で、それなりに混雑していましたが、司法試験の勉強をしている学生や、小声でゼミの授業を行っている先生もいた。適度なにぎわいが勉強にちょうどよかったようです。

集中するのに必ずしも静かな環境は必要ありません。集中力が続かないときは、いっそ外に出て人ごみに紛れたほうがはかどるかもしれません。

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神永正博●東北学院大学教授
1967年、東京都生まれ。東京理科大学理学部卒、京都大学大学院理学研究科博士課程中退。東京電機大学助手、日立製作所研究員を経て、東北学院大学准教授に就任。2011年より現職。著書に『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』など。

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(村上敬=構成 佐粧俊之=撮影)