2015年にエンジンサプライヤーとしてF1に復帰すると見られるホンダ。どういう背景があるのか。モータージャーナリストの赤井邦彦氏が現在の状況を解説する。

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 引き金となったのは2012年10月、本田技術研究所の山本芳春社長の英Autocar誌での発言だった。
 
「個人レベルでの話ですが、いつかまたF1に参戦することを願っています。機会が与えられれば復帰したいですね」
 
 本田技術研究所は、ホンダの研究開発部門。そこの社長が個人的見解だと断ってはいるが、F1への復帰希望を語っているのだから、周囲が期待するのは当然だ。
 
 次にF1復帰の話題がホンダの役員の口から語られたのは、2013年2月に行われたホンダの2013年モータースポーツ活動体制発表会の席だった。そこで記者から出たF1復帰に関する質問に答えたのは、誰あろう伊東孝紳社長だった。
 
「ホンダは常に世界の中で一番になるという夢を持って日々努力している。その夢を達成することも目標のひとつだ。F1に関しては残念ながら前回は好成績が残せず、その時の悔しい思いはずっと持ち続けている。夢は持っていなければいけないと自覚している。ただ、すぐに達成してしまうと意味がないし、やるからには達成しなければならないとも思う。F1に関しては、一生懸命勉強中です」
 
 実は、この時に広報部が用意したコメントは、「F1に関しては勉強中」というものだけだった。
 
 だが、伊東社長は心中期するところがあったのか、自ら溢れる思いを付け加えている。この社長のコメントは、ホンダ全社員の気持ちを表したものだ、とは元広報部の高見聡である。
 
「F1は競争ですから一番が取りたい。『2番じゃ駄目ですか』なんて論外です。しかし、それが出来なかったから、今度挑戦するときには絶対に1番を取る、という気持ちです」
 
 再びF1復帰の舞台に立つ社員たちの強い意気込みが伝わってくる。F1はホンダのDNAなのだ。

※週刊ポスト2013年4月12日号