今の住宅用の鍵って安心?鍵のメーカーさんに聞いてきた!



不動産物件に欠かせない、玄関ドアの錠前。最近では「1ドア2ロック」がはやりだそうですが、その鍵の性能自体はどうなっているのでしょうか?

国内トップシェアを誇る住宅用鍵メーカー、美和ロック株式会社の広報室長・宇佐美さんと取替市場開発推進室長・保立さんに、鍵の最新事情を伺ってきました。



■ピッキング事件で大きく変わった錠前の世界



――住宅用の鍵についてお伺いしたいのですが、一昔前の鍵と最近の鍵とではどんな点が違うのでしょうか?



宇佐美さん まず、錠前を取り巻く環境というのが、2000年あたりに起きた「ピッキング事件」を境に大きく変わりましたね。



――中国の窃盗団がピッキングで侵入して……という事件ですか。多発したことで大きな問題となりましたね。



保立さん そうなんです。それまで日本では防犯に対する意識というのが薄く、どちらかというと他人事のような感じでした。しかし、その事件がテレビで報道されるにつれて、一般のユーザーさんが「鍵」というものに関心を抱くようになりました。



宇佐美さん 鍵自体もピッキング対策など大きく進化しましたが、ピッキングに対しては鍵業界だけでなく警察や国も動きました。2003年に「ピッキング防止法」という、正当な理由がない人は開錠道具を所持してはいけないという法律ができたんです。



――新しい法律ができるほど大きな事件だったんですね。



保立さん あとは「性能表示の義務」もこの法律でできました。これはユーザーに「商品性能」をより分かりやすく知ってもらうためのもので、例えば「バールで壊そうとすると何分かかりますよ」というようなものです。



宇佐美さん 要するに粗悪品を排除するものですね。鍵というのは安心できるものじゃないとだめですから。



■ピッキングだけじゃない泥棒の手口!



――ピッキング事件以降、法制度の改革など大きく変わった錠前の世界ですが、現在の鍵は防犯性能はどうなっているのですか?



宇佐美さん 現在はピッキングされにくい横型のシリンダーを使っているので、ピッキングはほぼ不可能になっていますね。



――それは心強いですね。



保立さん ただ、ピッキング以外にもいろいろな手口がありまして、ドアなどに穴を開け、そこから専用器具を入れてドア内側のつまみ(サムターン)を回す「サムターン回し」やバールで無理やりこじ開ける方法、ドリルなどを使って鍵穴を破壊するやり方もあるんです。



――う〜ん、かなり強引な方法があるんですね……。



宇佐美さん 泥棒は別に元に戻す必要はないですし、壊せばいいだけなので強引な方法を使いますよね。ただ、こういったやり方にもちゃんと対策をしています。サムターン回しに対しては、サムターンに上下のスイッチを付けてこれを押さないと回らないような仕組みのものがあります。



――ドアの反対側からは開けにくい仕組みになっていると……。



宇佐美さん それから、ドアにはデッドボルトというドアから出て壁の穴に入る金属パーツにも工夫がありまして……



――あ、デッドボルトというのは、鍵をかけるとカシャっと飛び出すパーツですね!



宇佐美さん そうです。デッドボルトの先端に鎌のようなパーツを付け、余分にロックさせることで、バールでこじ開けても開きにくくなっています。また、ドリルなどを使って鍵穴を破壊するやり方に対しては、鍵の内部パーツを頑丈なものにすることで、破壊しにくくしています。



――もし破壊するとしても、非常に時間がかかるようになっているのですか。



保立さん 泥棒が嫌がるのが時間がかかることと音が鳴ることなんです。警察が行った調査では、侵入するのに5分以上かかると犯行をあきらめやすくなるそうです。



宇佐美さん 私どもは『CP認定』という性能認定された錠を取りそろえています。これは「あらゆる手口に対して5分耐えることができたもの」に対して認定がされるもので、錠に限らずドアやガラスなど建物に関するものすべての製品にCP認定の制度がありますよ。



――なるほど。5分耐えることは本当に大事なことなんですね。



保立さん とにかく時間がかかればかかるほどあきらめやすくなるので、鍵を2個付けたりすることは非常に有効なんです。



■防犯面はもちろん使い勝手の良さを向上させる



――防犯に対する対策以外に、目新しい性能を持つ鍵はあるのでしょうか?



保立さん 最近では「電気錠」が増えてきていますね。



――電気錠というのはどんなものですか?



保立さん 例えば、鍵をリーダーに触れさせるだけで鍵が開いたり、鍵を持っているだけでドアを開けることができたりするものです。



――車の鍵みたいですね!



宇佐美さん そのとおりです。車なんかは鍵を持っているだけでドアロックが解除されますよね。それと同じです。



保立さん 集合住宅のエントランスなどはこういった電気錠が多くなっていますね。



――電気錠の利点というのは何ですか?



宇佐美さん 取り出したり、錠前に鍵を差し込まなくてもいいという点です。特にお年寄りは錠前に鍵を差し込むのが難しいという人が多いですから、持っているだけで開けることができるのは助かるそうです。一種のバリアフリーですね。



――なるほど。高齢化社会でもありますし、そうしたお年寄りが使いやすい鍵というのはうれしいですね。



宇佐美さん 最近では、エレベータースペースの操作盤に鍵をタッチするとエレベーターが作動し、自分の部屋の階まで移動するというシステムもあります。



――まるで近未来映画のようですね。そこまで鍵は進化しているのですか。





保立さんによると、国内には旧式の鍵のままの住宅がまだまだ多くあるそうです。被害に遭ってからでは遅いですし、この機会に自宅の鍵の性能表示などを確認してみてください。

(貫井康徳@dcp)