演出家、放送作家、大学講師とマルチに活躍されている倉迫康史さん。3月には演出を手がけられている三島由紀夫の戯曲、『わが友ヒットラー』の公演が行われました。そんな倉迫さんに、青春時代の読書体験について聞いてみました。

「子供の頃から本当に本が好きで、読むのに集中しだすとごはんも食べずに読み続けるような子供だったんです。小学4年生くらいからいわゆる大人むけの文庫本を読むようになりまして、なかでも一番好きだったのがアレクサンドロ・デュマの『三銃士』。ダルタニアンという主人公が若い時から歳をとっていくまでが描かれているんですが、その『ダルタニアン物語』の一番最初が三銃士なんです。その第2巻『妖婦ミレディの秘密』に出てくる妖女がすごく色っぽくて、子供心にワクワクしていましたね。一番最初に自分の意志で大人向けの買った文庫本は、その後の人生に決定的な影響を及ぼしているなと思います」


――確かに、小学生とは思えないハイレベルな趣向ですね。

「子供ってませているところがあって、本を読み始めるとどんどん難しいものを読みたくなっていくんですよね。するとだんだん児童文学じゃ物足りなくなってくる。他にも江戸川乱歩にハマりました。乱歩とかって図書館にずらっと並んでるじゃないですか。子供向けで置いてある割には大人の怪しい世界があって...。だんだん大人の世界に憧れはじめたので、そこで読み始めたんだと思うんですよね」

――青春時代はさらに難解なものがお好きに?

「中高一貫の男子校に通っていたんですが、そこの男子寮に入っていたんですね。すると1部屋に8人くらいいて、自分のスペースがベッドの上しかないんです。だからこっそりラジオを聞くか、こっそり夜中に本を読むかぐらいしか楽しみがなかったんですよ」

――そのときはどんなものを読まれていたんですか?

「当時はSFが流行っていまして、僕は平井和正さんの『幻魔大戦』などを好んで読んでいました。それでいわゆるハードSFみたいなものにハマって、中1から中2にかけてはSFを読み漁りましたね。そこから広がっていってライトSF、新井素子さんの作品とかまでいくという...。中学時代はそんな感じでたくさんSF本を読みました」

――とくに衝撃を受けた作家さんは?

「SF作品ということを越えて、文体に衝撃を受けたのは新井素子さんですね。いまだと普通になっている一人称で「私こんなことおもったんだ」という、口語体で会話するように書かれている手法。可愛い世界もグロテスクなことも、主人公の目を通して本を通して自分に語られるように書かれていて、"こんな書き方があったんだ"ってすごくびっくりしました」

――かなり大きな発見だったわけですね!

「あと当時は思春期の男の子だったので、女の子の気持ちを知りたい時期じゃないですか。それが荒井さんの作品を読んでいると、女の子の心のなかを覗いているような感じになったんですね。"女の子ってこんなこと考えてるんだ..."っていうのが、少女マンガとか読まない僕にはすごく新鮮だったし、こういう文体があるんだって思いましたね」

次回は、倉迫さん演出の舞台『わが友ヒットラー』や近代日本文学の魅力ついてお聞きします。お楽しみに!



《プロフィール》
倉迫康史(くらさここうじ)
1969年生まれ。宮崎県出身。早稲田大学卒業後、演出家を志し、演劇活動を開始。シアターカンパニーOrt-d.d(オルト・ディー・ディー)主宰・演出。にしすがも創造舎アソシエイト・アーティスト。洗足学園音楽大学、桜美林大学講師。2013年、三島由紀夫の戯曲『わが友ヒットラー』で演出を手掛ける。






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