もしも科学シリーズ(55):もしもビタミンを摂り過ぎたら


健康や美容に欠かせないビタミン。ストレスや生活リズムの乱れによっても消費されるので、サプリメントや補助食品を愛用している方も多いだろう。





ビタミン不足から病気になる話は多いが、もしも過剰摂取したらどうなるのか?わずかな量でも作用の大きいビタミンは、必要量を超えると健康を害するものが多い。わずか10万分の5gを超えただけでも、深刻なダメージを与えるビタミンさえ存在するのだ。



■ビタミン不足で幻覚?



ビタミンは主に炭素(C)、水素(H)、酸素(O)から成り立つ有機化合物を指す。炭水化物やタンパク質のようなエネルギー源にはならないが、ごく少量で代謝や合成を促す作用を持つ。レモン果汁でおなじみのビタミンCの正体はアスコルビン酸で、炭素×6、水素×8、酸素×6で構成され、自然や美容のイメージとは裏腹に、紛れもない化学物質だ。



ビタミンは大別して水に溶ける水溶性と、油に溶ける脂溶(しよう)性がある。前者はビタミンB/C/葉酸などが有名で、後者はビタミンA/Dが代表格だ。



水溶性ビタミンは摂取しやすいのが利点だが、熱に弱いものが多いので生や短時間の調理が望ましく、対して脂溶性は比較的熱に強く油になじみやすいので、調理した方が吸収率はアップする。生野菜か野菜いためでは、同じ野菜でも摂取できるビタミンが違ってくるのだ。



代表的なビタミンのおもな働きは、



●水溶性ビタミン



・ビタミンB2 … 脂質・タンパク質代謝の補酵素



・ナイアシン … 糖質・脂質・タンパク質代謝



・ビタミンB6 … 神経伝達物質の合成



・ビタミンC … 免疫機能増強、血中コレステロール低下



●脂溶性ビタミン



・ビタミンA … 暗順応、細胞の成長や分化



・ビタミンD … カルシウムやリンの代謝調節



・ビタミンE … 抗酸化作用、免疫増強



・ビタミンK … 血液凝固、骨形成



で、聞き覚えのあるビタミンだけでも身体に重要な役割を果たしているのだ。



ごく微量でも強く作用する特徴は、言い換えれば、わずかでも不足するとダメージが大きいことを意味する。



例えばナイアシンが欠乏すると、皮膚や胃腸の炎症から始まり、頭痛や不眠症、重症になると幻覚や錯乱を引き起こす。血液の凝固を促すビタミンK不足は、鼻や歯肉など粘膜から出血しやすくなり、乳児の場合は頭蓋(ずがい)内出血につながることもある。



■しびれるビタミン?



ビタミンを摂(と)りすぎたらどうなるのか? 不足と同様に、過剰摂取も深刻な問題が生じる。動物性と植物性のあるビタミンAは、前者はレチノール、後者をベータカロテンと呼ばれ、成人の上限量はレチノールなら3,000マイクロ・グラム(=0.003g)に過ぎず、これを超えると吐き気や頭痛、肝障害などを起こす。



重症になると全身の皮膚がはがれ、回復には20〜30日を要するから注意が必要だ。ビタミンAは肝臓に多く含まれるため、厚生労働省ではサメ/マグロなどの大型魚の肝臓は食べないように注意を促している。ハタ科のイシナギは有毒種として食用禁止に指定されているほど危険なのだ。



魚介類や干ししいたけに多く含まれるビタミンDはさらに少量でも作用し、上限量は成人でも50マイクロ・グラムにすぎない。これを超えると体内のカルシウムが高濃度になり、高カルシウム血症や腎障害を引き起こすのだ。



カルシウムは吸収率が低く、野菜からは20%程度、牛乳からでも40%程度しか摂(と)れないため、骨粗しょう症に代表されるように不足しがちな成分だが、代謝調節をおこなうビタミンDが0.00005gを超えただけでも体内で過剰になってしまうのだ。



血中のカルシウムが増え過ぎる高カルシウム血症は、軽症のうちは吐き気や全身の倦怠(けんたい)感で済むが、重症化するにつれて脳機能に障害が生じ、幻覚や混乱、意識障害や昏睡(こんすい)を引き起こす。



カルシウム不足はイライラの原因と言われているが、明確な関連性は無く、むしろ摂(と)り過ぎの方が恐ろしい事態を招くのだ。



水溶性ビタミンは過剰に摂取しても問題ない的な話を耳にするが、これも風説にすぎない。



滋養強壮ドリンクには必ずと言えるほど含まれているビタミンB2/B6は、上限量を超えるとかゆみやしびれ、神経や知覚障害の原因となるので、水溶性ビタミンと言えども油断できない。ドリンクの飲み過ぎでしびれてしまったら、元気はつらつどころの話ではない。



■まとめ



大航海時代にはビタミンC不足による壊血(かいけつ)病が多くみられ、白米がもてはやされた江戸時代はビタミンB1不足から脚気(かっけ)が流行した。その時代の食生活が、ビタミン摂取量を左右していると言えるだろう。



いまはサプリメントで手軽に補給できるようになったが、過剰摂取の危険性が高まったのも事実だ。身体に異変を感じたら、まずは食生活を見直すのが良さそうだ。



(関口 寿/ガリレオワークス)