2011年5月に鳴り物入りでオープンした「JR大阪三越伊勢丹」に、早くも撤退説が飛び交っている。当初の期待とは裏腹に開業直後から売り上げが低迷し、運営会社のJR西日本伊勢丹に60%出資するJR西日本と、三越伊勢丹HD(40%出資)の間に不協和音が鳴り響いているためだ。

 両社の深い溝を象徴するのは、JR西の真鍋精志社長が「運営会社は既に94億円の債務超過に陥っている」と暴露したことだ。運営会社の傘下には、JR大阪三越伊勢丹、JR京都伊勢丹の2店舗があるが、'97年にオープンした京都店は「当初こそ苦戦したものの、今では大丸京都と並んで地域一番店の高島屋京都店を追撃中」(関係者)で、経営の足を引っ張っているのがどちらであるかは明らか。しかも 「94億円は去年暮れ時点の数字。その後も大苦戦を強いられているため、期末の債務超過額はもっと膨らんでいる公算が大」(同)とあっては深刻だ。

 それにしても、デパートのイメージダウンに直結する債務超過に言及した真意は何だったのか。
 「三越伊勢丹HDの大西洋社長への不信感が根強いということです。JR西は、隣接するファッションビル『ルクア』のように、人気専門店を売り場に誘致すれば集客効果が期待できると唱えているのですが、自主編成の売り場にこだわって東京・新宿の伊勢丹を成功させたというプライドのある大西社長がのめる話ではありません。それなのに、何ら有効策を打ち出せないため、JR西は撤退カードをチラつかせて大西社長を牽制しているのです」(ライバル百貨店幹部)

 もし大阪からの撤退に追い込まれれば、三越伊勢丹のメンツは丸つぶれ。三越勢を排除して伊勢丹支配を強化した大西社長のポストも危うくなる。複雑な社内力学を物語るかのように、三越サイドから「大西社長のお手並み拝見」とのクールな声さえ漏れているのだ。
 「何か知らんけど、気取ったスタイルが受け入れられてないのと違いますか」

 どうやら、大阪のおばちゃんたちの、この“本音”が正解のようだ。