クロージングの必殺技

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■「そのうちね」「またいずれ」を言わせない方法

成熟市場におけるクロージングは一筋縄ではいかない。成熟市場では顧客の基本ニーズが満たされているため、いますぐ競合から切り替える必然性が薄い。そのため満足のいく提案でも、「悪くないけど、そのうちね」と先延ばしにされるケースが多いのだ。

ここでやってはいけないのが、強引に契約を迫る行為。顧客から完全に断られたわけではないので、営業担当者としては、ついプッシュ型のクロージングをしてしまう。しかし、たいていはこれが裏目に出て、顧客を怒らせることになる。

そもそもクロージングとは、顧客に契約を迫って首を縦に振らせることではない。私たちは、クロージングを「顧客とスケジュールを共有し、リードしていくこと」と定義している。顧客は営業プロセスに関して時間の概念がない。そのままでは「またいずれ」が延々と続きかねないので、顧客と時間軸を共有して、それに沿ってアクションを起こすように促していく。そうすれば強引に契約を迫らなくても、商談は収まるところに収まっていく。それがクロージングの理想形だ。

顧客に時間軸を意識させる手法は2つある。1つ目は「ステップクロージング」だ。営業プロセスは、基本的に小さなステップの積み重ね。成約という大きなステップも、それまでの小さなステップの延長線上にある。そこでステップごとにしっかりクロージング(約束)を行い、成約というステップについてもクロージングの意識を持ってもらうのだ。具体的には、訪問のたびに時間を区切った何らかの約束を顧客と交わすといい。

「次回訪問の1週間後までに、見積もりに必要な資料を用意しておいていただけますか」

こうして毎回小さな約束を交わしていくと、顧客は営業担当者に対して「時間を重視する人だ」という印象を抱くだろう。そうなれば受注に向けたクロージングの場面でも、時間を曖昧にした返事をされる確率はグンと減るはずだ。

もう1つ、「時限トーク」も効果的だ。時限トークとは、顧客に仮のゴールをイメージさせて、そこから逆算したスケジュールを共有するトークのこと。典型的なトークは次のフレーズだ。

「仮に導入するとしたら、いつごろがもっとも都合がよろしいでしょうか」

これで仮のゴールが決まれば、さかのぼって4週間前には見積もり提出、6週間前には提案書提出というように、仮スケジュールが見えてくる。これを表や文書にして顧客と共有すれば、「そろそろ提案書をお送りしますね」と、主導的にプロセスを進めていくことができる。案件のクロージングもその延長線上にあるため、顧客も了承している自然な形で「ご契約いただけるかどうか、ご検討いただけましたか」と切り出せるのだ。

自分都合でクロージングしてはいけないし、顧客まかせでもプロセスは前に進まない。いま紹介した手法を活用して、ぜひ顧客と時間軸を共有してもらいたい。

(※本記事は『諦めない営業』(横田雅俊著、プレジデント社)からの抜粋です。)

(カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊 構成=村上 敬)