先日のコラムでも少し触れたことではあるが、アメリカの投資会社サーベラス社が開幕直前のこの大事な時期にライオンズに水を差している。サーベラス社はTOBによって西武ホールディングスの株式保有率を高めようと目論んでいる。TOBとは、市場外ですでに株式を取得している株主から直接株を買い集める手法のことで、買付期間や価格などが公開される。もし時価よりも大幅に高い買付額を提示されれば、その株を手放してしまう株主も少なくはないのかもしれない。

サーベラス社はまさに今、西武HDに対し敵対的買収を仕掛けてきていることになる。その理由は、西武HDが完全に拒否している案件を株式取得後に提案しようとしているためだ。そしてその案件とは西武鉄道の不採算路線の廃線、そして埼玉西武ライオンズの売却だ。現在もサーベラス社は西武HDの株式を保有しているわけだが、その数はまだ1/3を下回っている。だがTOBが実施されれば確実に1/3を越え、そうなるとサーベラス社は西武HDに役員を送り込むことができ、後藤高志社長の解任も要求することができる。

多くのファンがご存じの通り、後藤オーナーは2004年に西武球団が揺れた際、体を張って西武ライオンズを守ってくれた存在だ。今こうして埼玉西武ライオンズが西武球団として存続できているのは、後藤オーナーの尽力によるところが大きい。サーベラス社は、その後藤西武HD社長の解任を要求しているのだ。もしこの要求が現実のものとなれば、ライオンズはほぼ確実に球団売却という憂き目を見ることになるだろう。

だが後藤社長をはじめとし、球団専務である飯田則昭氏もサーベラス社の要求を断固拒否している。球団売却という選択肢は100%ないというコメントを発信している。そして選手に対しても安心して野球に打ち込んで欲しいとメッセージを送っている。オープン戦まで非常に順調な形で仕上がって来ていただけに、なぜこのタイミングでこうして水を差されなければならないのか。ファンとしてはサーベラス社に対し不快感しか抱くことができない。

もし西武HDの経営が完全に行き詰まり、球団運営が難しいという状況で身売りをされるのならば諦めもつく。しかしそうではなく、株式を買い付け、株価を高め、利益を得るためだけにサーベラス社はライオンズの売却を要求しようとしているのだ。日本に於けるプロ野球チームの存在意義は、まさに社会的シンボルだと言える。金銭的利益のために簡単に売り買いしていい存在ではないのだ。もしそれを理解した上でTOBを仕掛けようとしているのならば、サーベラス社は多くのライオンズファンと野球ファンを敵に回すことになるだろう。そして株主の中にどれほど多くの野球ファンがいるのか、サーベラス社は果たしてそこまで考えているのだろうか。

サーベラス社としては、恐らく買い付けた株式の値が上がらなければ早々に手放す腹づもりなのだろう。もしくは値が上がれば、下がる前に売ってしまうのだろう。そのような無責任な会社にプロ野球チームを預けることなど決してできない。何度も繰り返してしまうが、サーベラス社に対しては不快感しか覚え得ない。

ちなみにサーベラス社は、一般株主が決して知ることのできない株式情報も入手していると言う。これは当然だが株式市場に於いては公平性に欠ける。だがサーベラス社はすでにTOBを開始しているのだ。期限は3月12日〜4月23日までの約40日間だ。現在サーベラス社は32.4%の西武HD株を所有しているが、これを最大4%引き上げることを目指している。筆者は株に関してはまったく知識を有していないが、サーベラス社がもし西武HDの株式取得の割合を高めれば、西武HDの再上場に悪影響が出る可能性があると言う。そしてライオンズを売却するという選択をすれば、それにより西武HDは大きなイメージダウンを強いられ、企業価値を著しく落としてしまうことにも繋がる。そういうことも踏まえ今日、西武HDは今回のTOBに対し明確な反対を表明した。

後藤高志社長をはじめとし、西武HD全体が反対意見であるため、このTOBがスムーズに進むことは恐らくないのだろう。だがサーベラス社が今後も西武HD株を所有し続ける限り、この問題がクリアされることはない。だがファンとして安心できるのは、西武HD社長である後藤高志西武球団オーナーが、ライオンズの売却を完全否定してくれたということだ。ファンとしてはとにかく後藤オーナーを信じるしかない。そして2004年にライオンズを守ってくれた後藤オーナーであれば、今回も必ずライオンズの危機を救ってくれるはずだ。

今回は最後に、みなさんのサーベラス社に対するご意見を日刊埼玉西武ライオンズfacebookページにてお聞かせください。