メンタルリスクマネジメント代表取締役、日本そうじ協会理事長 今村 暁氏

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「無駄遣いをしない」「毎日勉強する」「人に優しくする」……。身につけたい習慣はいろいろあるのに、なかなかうまくいかない人も多いですよね。でも、掃除の習慣さえ手に入れば、同時に他の習慣も手に入れることができる、というのが私の持論です。これまでたくさんの方に「習慣教育」を行ってきましたが、掃除の習慣を手に入れた人の大多数は、他の習慣を手に入れることにも成功しているという実績もあります。

掃除は、最初から「毎日30分やろう」なんて考えないこと。そもそも習慣が身につかないのは、目標が高すぎることが原因の1つ。最初は「10秒掃除」で十分です。どんなに忙しい人でも10秒ならできるはず。たった10秒でも「余分なゴミを1個ゴミ箱に捨てる」「窓を開けて換気する」などできることはたくさんあります。それを毎日続けるだけ。やり始めたら5分、10分、30分とついやってしまう人がほとんどですけどね。

「初動にかけろ理論」と私は呼んでいますが、初動がうまくいけば大抵のことはうまくいく。掃除も例外ではありません。

掃除をする時間帯は、朝がおすすめです。夜は、残業や飲み会が入ると調整が難しいですからね。朝起きてすぐ掃除すれば、眠気も吹き飛んで爽やかな気分になれるという相乗効果もあります。掃除が快感ということに気づくと、「もっと掃除をしたい」と思うようになり、起きる時間が自然に早くなっていきます。早起きの習慣もいつの間にか手に入るわけです。その結果、起床時間はなぜか5時半になる人が多く、Facebookの中にある習慣教育の非公開サイトは、5時半になると、「おはようございます」と挨拶を交わす人でいっぱいです(笑)。

■自分の欠点がなぜか克服できていく

掃除が習慣化されると、頭の中がすっきり整理されるというメリットもあります。部屋や机の上の状態はその人の思考と同じ。部屋が混乱していると、頭の中も混乱して、仕事にも支障を来します。実際、片付けをしたら頭の中が整理され、「仕事の段取りがうまくできるようになった」「売り上げや業績が上がった」という人がたくさんいます。プライベートでも、必要なものと無駄なものの区別ができるようになり、「無駄遣いが減った」という方もいます。公私ともに、生産性や効率性が上がるわけです。

そしてもう1つ、これは冒頭の持論にもつながることですが、掃除をする習慣を手に入れることで、「掃除ができない」ことに関連するそれまでの自分の欠点も克服することができるのです。

私は掃除ができない人によく、「できない理由は何だと思いますか?」と質問するのですが、みなさん「面倒なことはつい先延ばししてしまうクセがある」「わかっているけどできないルーズな性格だから」と様々な理由を口にします。

掃除ができない人というのは、掃除だけでなく、そうしたちょっとした性格の欠点がボトルネックとなって、他のよい習慣も手に入れられず、活躍できるチャンスを逃しているのです。

掃除ができるようになるということは、そのボトルネックがスーっとはずれて、これまでやろうと思っていてもできなかったいろいろなことが、1度にできるようになることなのです。掃除の習慣が、成功する習慣づくりのきっかけになるわけです。

掃除といっても、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」の4つがあります。それぞれの違いはわかりますか?

「整理」は、不要なものを捨てること、「整頓」はものを使いやすい場所に収納すること、「清掃」はモップや掃除機でほこりを取り除くこと、「清潔」は家具や床をピカピカに磨き上げることです。

もともと片付け上手な人は、「整理」「整頓」ができていますから、毎日ほこりを取って磨きあげる「清掃」と「清潔」だけで済みます。問題は、部屋が片付いていなくて「整理」から始めなければならない人です。「清掃」と「清潔」だけで簡単に掃除が終わるようにするためには、「整理」→「整頓」とスキルを高めていく必要があります。部屋が片付いていない人は、物が多くて捨てられない人が多いので、まずは、不要なものを捨てることが掃除の第1歩です。

ものは大きく分けると「過去のもの」「現在のもの」「未来のもの」の3つに分かれます。過去のものは、過去の思い出に関わるもので、「かつて使っていた」楽器やカメラ、レコードやCD、本など。今は使っていないものがほとんどです。未来のものは「いつか使うかも」と思ってとっているもので、いつかお客様が来たときに使おうと、出張先から持って帰ってきた歯ブラシやひげそりが1例です。

■ビフォー&アフターを携帯写真で確認

今使っているものを見分けるには、「今使ってる? 使ってない?」と自分の心に問いかけること。使っていないものを捨てていけば、使っている現在のものだけが残ります。捨てられない人というのは、自分への質問を「これ高かった? 高くなかった?」「まだ使える? 使えない?」と無意識のうちにすり替えて、せっかくの捨てる機会を逃していますから気をつけてください。高かったものでも、まだ使えるものでも、今使っていなければゴミと一緒です。

今使っていないものに埋もれて生活していると、知らないうちに感性が鈍っていきます。それらを一掃して使っているものだけになると、今使っているものや時間を大切に一生懸命生きるようになって、感性も磨かれていきます。

いざ捨て始めて、使っているかいないか迷うものが出てきたら、「保管箱」を作ってとりあえず入れるようにすると、掃除がはかどります。そのうちエンジンがかかると、ポイポイ捨てられるようになります。保管箱は、掃除をした日にちと中身を簡単に書いてしまっておき、半年後か1年後に取り出して、使わなかったものは箱ごと捨ててしまいましょう。

どうしても捨てられないものは、携帯などの写真に撮っていつでも見られるようにしておくと、踏ん切りがつきます。

携帯の写真は、掃除の効果を確認するためにも活用できます。私は、毎日掃除のビフォーとアフターを撮影して、ブログにアップしていますが、少しずつきれいになっていく様子を見るのは楽しいものです。しかも、初期のころのビフォー写真は、2度とその状態に戻さないための戒めになります。

今使っていない過去のものでも、亡くなった人の思い出の品や、持っていると安心できるものは、必要なものですから捨てる必要はありません。ただ、それが段ボールなどの中に入ったままであれば、使っていることになりませんから、家の中に1カ所だけ「思い出コーナー」を作って飾っておくことをおすすめします。

いらないものを処分できたら、次は残ったものを収納する「整頓」です。見栄えを考える必要はなく、動線を考えて便利な場所に収納するのがポイントです。たとえば、よく使うコップは、棚の奥のほうに入っていると出し入れが面倒で、出しっぱなしの原因になります。これを、自分の動きを最も省力化できる場所や方法を考えてから収納すると、ひと手間はかかりますが、それ以降出しっぱなしにすることがなくなり、結果的には掃除の効率化につながります。

「整理」「整頓」が終われば、後は「清掃」「清潔」を繰り返すだけ。同じ労力で、楽にきれいな部屋を維持できるようになります。

職場の机や自宅のリビングなど、1カ所か1部屋なら、約3週間できれいになります。不思議なことに、どんな習慣でも3週間続けると、無意識にできるようになっていきます。まずは3週間を目標に「10秒掃除」から始めてみてください。「掃除の習慣」が意外に簡単に手に入ることを実感するとともに、自分の新たな可能性を発見できるはずです。

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メンタルリスクマネジメント代表取締役、日本そうじ協会理事長 今村 暁
北海道大学法学部卒業後、日本長期信用銀行を経て独立。「習慣教育」「習慣道」の創始者として知られ、現在は企業コンサルティングや人材育成に携わる。著書は『3分間日記』『子どもの成績を決める親の習慣』『習慣力』ほか多数。

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(メンタルリスクマネジメント代表取締役、日本そうじ協会理事長 今村 暁 構成=小宮千寿子 撮影=萩原美寛)