今季のパシフィック・リーグは、3球団の監督が西武ライオンズ出身者ということになる。埼玉西武ライオンズ渡辺久信監督、福岡ソフトバンクホークス秋山幸二監督、そして千葉ロッテマリーンズの伊東勤新監督だ。この状況はライオンズファンとしては本当に胸が熱くなる。そして想像はさらに膨らみ、オリックスバファローズを清原和博選手が率いていたらどうなっただろうか、などと考えてしまうこともある。

渡辺監督、秋山監督、伊東監督はそれぞれ黄金時代の西武ライオンズの主力選手だった。エースだった渡辺久信投手、不動の3番打者だった秋山幸二選手、正捕手だった伊東勤捕手。ポジションがバラバラであるだけに、監督としての野球もまた同じではない。恐らく黄金時代のライオンズに最も近い野球をするのは、秋山幸二監督ではないだろうか。安定したクリーンナップとバランスのとれた投手陣を率い、脚を絡めてオーソドックスな野球を展開する。いわゆる基本に忠実な野球だ。

伊東監督が率いるマリーンズは、やはりバッテリーを中心としたディフェンス野球となるのだろう。今オフはそれほど大きな補強は行わなかったマリーンズではあるが、開幕直前になって捕手トレードを行っている。これは伊東監督が、どれだけ捕手を重視しているかがよく分かるチーム戦略となった。

そしてライオンズを率いる渡辺監督は、今季はスモールボールに徹すると明言している。恐らくタイプとしては、東尾修監督に近い野球となるのだろう。東尾監督は「Hit!Foot!Get!」をキャッチコピーに早い時期からスモールボールを展開し、97〜98年にパ・リーグ連覇を果たしている。この時期のライオンズの野球はまさにスモールボールだった。松井稼頭央選手、大友進選手、高木大成選手の俊足トリオは他球団の脅威となり、そして彼らが出塁すれば勝負強い鈴木健選手が控え、タイムリーヒットを量産していた。長打に頼った野球をしなかったという意味では、今季のライオンズはまさに東尾野球に近いと言えるだろう。

渡辺監督、秋山監督、伊東監督のスタイルはそれぞれだが、しかしどれが一番良いという問題ではない。重要になってくるのは、どのチームの野球が機能するかという点だ。チーム戦略がそれぞれしっかりと機能すれば、どのチームが優秀をしてもまったく不思議ではない。バランスに富んだホークス、バッテリー強化を図るマリーンズ、スモールボールのライオンズ。

近年、各球団の選手力は拮抗している。ドラフト制度改革や裏金の完全撤廃などがあり、有力選手が一部の球団にばかり集まる状況は、少しずつ改善されている。もちろん未だに「○○球団にしか行きません」と言う選手もいるわけだが、そういう選手はまったくのマイノリティとなっている。基本的にはどこどこのチームの選手になりたい、という選手ではなく、純粋にプロ野球選手になりたいという選手ばかりだ。こういう状況になってきたということを考えれば、やはり逆指名制度の撤廃は正解だったと言えるだろう。

つまり何が言いたいのかと言えば、現代野球は選手力で勝つのではなく、戦術で勝つということがより重要になってきているということだ。いくら良い選手をドラフトやFAでかき集めることができても、その選手たちを含めたチームに対し適応させる戦略を、どれだけ機能させられるか、ということが勝つためには非常に重要なのだ。そしてそれができる管理能力を持った監督が求められている。

例えばスモールボールを目指す今季のライオンズで言えば、盗塁数だけが多くても意味はない。盗塁した走者を、どれだけホームまで還せるかがポイントとなる。そのためには他の走者であったり、盗塁時に打席に立っている打者とのコンビネーション、サインの徹底が求められる。それをどれだけトップダウンでしっかりと意思疎通できるかにより、チームが機能するか否かが大きく変わってくるのだ。

例えば強打者のいるホークスであれば、長打が増えたとしてもその時に走者がいないのでは意味はない。走者がいる状態で長打が出なければ、得点には繋がらないからだ。そしてマリーンズで言えばいくらバッテリーが頑張っても、もしエラーが多ければ意味はない。ヒット性の当たりを好捕する機会が増えることにより、バッテリーの活躍に大きな意味合いが生まれてくる。

渡辺監督、秋山監督、伊東監督は間違いなくお互いを意識しているはずだ。この3人の誰もが「他の2人には絶対に負けたくはない」と考えているはずだ。そしてプライドもあるだろう。今季は恐らくこの3球団とファイターズがペナントレースを引っ張り、そこにどれだけバファローズとイーグルスが食い込んでこれるか、というシーズンになるのではないだろうか。バファローズにしてもイーグルスにしても、主力に新戦力が多い。となるとチームが完全に機能するまでには多少の時間も必要となるだろう。この時間をどれだけ短縮させられるかが、バファローズとイーグルスが優勝争いに加わるポイントの1つになるのではないだろうか。

そしてライオンズ、ホークス、マリーンズからすれば、どれだけ他球団よりも早く自分たちの野球スタイルを板に付けることができるかが、優勝をするためのポイントとなるはずだ。そんな中で行われたオープン戦、最も自分たちの野球を貫くことができたのはライオンズではないだろうか。スモールボールを目指し、しっかりとスモールボールを実践することができている。そういう意味ではライオンズには開幕戦から一気に自分たちのペースに入って行って欲しいと、筆者は心から願っている。

さて、今日は3人の監督に関する質問です。渡辺監督、秋山監督、伊東監督の中で、あなたが最も有能だと思う監督は誰ですか?日刊埼玉西武ライオンズfacebookページより回答をお願いします。