世界ランク1位に返り咲いたウッズ、王者の表情も戻ってきた(Photo by Sam Greenwood/Getty Images)

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 ついに、タイガー・ウッズが世界一に返り咲いた。2010年10月30日以来、29か月ぶりの王座復活。それは想像以上に苦しく長い日々だったのだろうと思う。
タイガー、圧巻今季3勝目!2年5か月ぶり世界ランキング1位に復帰!
 09年暮れに勃発した不倫騒動後、タイガーにとって何が一番のダメージだったのか。私生活では離婚して莫大な慰謝料を払うことになった。大手スポンサーからは次々に契約を解消された。それらは間違いなく金銭的、物理的な痛手だったが、最大の痛手は彼のゴルフそのものの不調を招くきっかけになったもの。それは、長年のコーチ、ハンク・ヘイニーに去られたことだ。
 コーチを失った当時のタイガーは「自分のスイングのことは自分が一番熟知している。スイングチェックは自分でできる」と語っていた。しかし、それが強がりであったことは言うまでもない。そこに左足の故障が加わったことで、スイング作りという基盤が揺らぎ始め、ゴルフ界の王者は闇の中で手探りを繰り返す日々へ落ちていった。
 そんな中、新たなコーチ、ショーン・フォーリーは救世主となった。「僕がこれまでやってきたこととショーンの理論には、かなりの違いがある。だから時間はかかる」と最初から長期戦覚悟でスイング改造に着手。
 左足の悪化で「十分な練習ができなかった」というジレンマの日々が続いたが、「肉体さえヘルシーになれば、練習さえ十分にできるようになれば、コトは必ず起こる。王座に返り咲けるかどうかを疑ったことはなかった」。フォーリーを相棒に得てからのタイガーには、世界一の座から陥落しようと、優勝から遠ざかろうと、すでに希望の光が差し込んでいた。
 昨年は年間3勝を挙げ、今季は2月のファーマーズインシュランス・オープン、3月のキャデラック選手権で早々に2勝。そして臨んだアーノルド・パーマー招待の開幕前、タイガーは自信に溢れていた。
 会見で米メディアから「黄金期と同じぐらいの強さに戻れると思うか?」と問われると、「同じぐらい?そんなことは望んでいない。目指しているのは、それ以上だ」と答え、笑みを浮かべた。「過去に何度もスイング改造をしてきたが、いずれも改造後は“グッド”ではなく“ベター”になってきた」。
 単独首位で迎えた最終ラウンドは雷雨で月曜日へ持ち越しとなったが、タイガーの世界一への復活を一目見ようと訪れた大勢のギャラリーの声援を受けた。一度は孤独な闇に沈んだタイガーは、気が付けば、新コーチのみならず、たくさんの味方に囲まれて記念すべき日を迎えることができた。
 「すべてのサポートに感謝している。すべての努力が報われた。いい気分だ」
 ゴルフは孤独なスポーツと言われるけれど、それはボールを打つ瞬間の話。ゴルフはメンタルなゲームだからこそ、信頼できる誰かは、いないより、いたほうがいい。タイガーでさえ自分自身でスイングを改造することが難しかったように、「1人より2人」は、次元こそ異なるものの、苦戦続きの石川遼にも当てはまる。
 今大会からキャディにつけたサイモン・クラークを「心強い味方」と大いに頼りに感じた石川。これまでプロキャディを付けなかったのは、そういう役割を「僕がキャディに求めていなかった」。だが、実際にやってみると「やっぱり違う」と実感できた。
 石川にとっては、まずはキャディが救世主になるのかもしれない。が、腰への負担を軽減するスイングへ改造中という事情を考えれば、予選落ちや苦悩が続く現在の闇から石川を引っ張り上げる救世主になりえるのは、やはり米ツアーで彼を導くコーチであろう。
 日本からアメリカへ。戦う場を変えたら「キャディに求めるものが変わってきた」と石川自身が感じている。コーチに求めるものも変わって当然。むしろ変わるべき。そこに気づき、アクションを起こすべきだ。
 陰で支えてくれる相棒、信頼できるパートナーを得てこそ、選手は一打一打に全身全霊を傾けられる。そうなって初めて、孤独なスポーツ、メンタルなゲームを戦い抜くことができる。そう教えてくれたのは、パーマー招待を見事に制した世界一の王者、タイガー・ウッズだ。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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