状況変化に応じた課題の仮説

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「何かお困りのことはありませんか?」

顧客が抱えるニーズを探るとき、このようなフレーズで問いかける営業担当者は少なくない。しかし、この質問であぶり出せるのは、すでに顕在化している「問題」だけだ。問題を解決するだけの提案なら誰でもできる。競合に真似されない提案をしたければ、問題をさらに掘り下げて、顧客自身もまだ気づいていない「課題」をつかみ、それを解決する提案を練る必要がある。これが本当のソリューション営業ではないだろうか。

顧客の抱えた課題に迫るときに有効な手法が「仮説ヒアリング」だ。これは「事前情報」と「観察情報」から仮説を導き、それをもとにして「ヒアリング」を行い、顧客が抱える課題を抽出していく手法である。

■事前の「仮説」は当たっても外れても収穫はある

具体的に説明しよう。事前情報とは、ホームページに掲載されている会社の沿革や事業内容、メディアで取り上げられた記事など、訪問の前に調べられる情報を指す。一方、観察情報とは、現場で直接、観察して収集できる顧客情報のことだ。たとえば顧客の店舗に足を運べば繁盛しているかどうかがわかるし、オフィスの受付や応接室に置いてある置物や掛け軸から、経営者の価値観が見えてくることもある。

仮説ヒアリングでは、それらの情報を材料にして、顧客が抱えているだろう課題の仮説を立てていく。たとえば人材紹介会社の営業担当者なら、「新聞で新規事業に乗り出すという記事を読んだ」(事前情報)と「1号店に足を運ぶと、たいへん繁盛していた」(観察情報)という情報から、「新規事業の成長スピードに社内の人的リソースが追いつかず、出店計画の足を引っ張る可能性がある」と仮説を立て、それをヒアリングで顧客に直接ぶつけるのである。

「1号店は大盛況ですね。これから2号店、3号店と次々に出店することになると、マネジャークラスの人材を社内で育成するのも大変ですよね」

この仮説が正しければ、顧客をハッとさせるような提案へとつなげていくことができるだろう。一方、仮説が間違っていたとしても落ち込む必要はない。

そもそも課題の仮説は、ヒアリングで顧客の課題に切り込むきっかけとして活用するためのもの。もし見当外れでも、「人は足りている。いま足りないのはむしろ仕入れ先」と反応があって、別の課題発見につながっていくかもしれない。いずれにしても具体性のある仮説をぶつけることで、「何か困ったことは?」という問いかけより、ずっと課題に迫りやすくなるはずだ。

営業担当者に意識してもらいたいのは、表層的な問題解決ではなく、その奥に潜む課題の発見だ。顧客の要望に即座に反応する前に、「なぜ顧客はこうした問題を抱えているのだろう」と一段深く考えて、仮説を立てていく。そうやって顧客のことを深く理解することが、ターゲットの攻略につながるのである。

(※本記事は『諦めない営業』(横田雅俊著、プレジデント社)からの抜粋です。)

(カーナープロダクト代表取締役 横田雅俊 構成=村上 敬)