GMOインターネットCEO 熊谷正寿氏

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私は20歳のころから新聞のスクラップを続けています。オフィスには約20年分のスクラップを保管しています。

きっかけは、会社を経営していた父から勧められたこと。今は日本経済新聞、日経産業新聞を中心に4紙を購読しています。読み方は3段階。まず、気になるところを赤い線で囲む。余白に日付を入れ、切り取る。それをファイリングする。一連の作業を通じ、最低3回記事に触れることで、内容を頭に叩き込むのです。

かつてはこの作業を中心に情報収集をしていました。しかし、現在はインターネットの出現によって情報源と情報収集ツールが無数に増えています。

一般的なビジネスマンが投じられる資金コスト、時間コストの中で得られる情報が飛躍的に増大したのがこの10年だったと思います。その結果、昔よりもピンポイントで正しい情報に到達することが極めて重要になりました。そうしなければ、貴重な時間を浪費するからです。

では、どうすれば限られた時間の中で正しい情報に到達できるでしょうか。それには2つ決めなければいけないことがあります。

1つは、夢や目標を明確にすること。自分が目指していることをハッキリさせるのです。もう1つは、時間を浪費しないように情報収集の時間を決めること。時間を区切らないでウェブサイトのリンクをたどっていくうちに、ネットサーフィンどころかネットを漂流してしまった経験は誰でも持っていると思います。

以上を大前提として、私の情報収集についてご説明しましょう。現在、私が情報源としているのはインターネット、新聞や雑誌、書籍、テレビといった従来メディア、そして人の3つです。

■テレビは早送りしながら携帯電話でチェック

情報量において圧倒的なのはインターネットですが、質ではメディアに軍配があがります。ほかでは得られないという貴重さでは人からの情報が一番。このような情報の量、質、貴重さという3次元のマトリックスの中で、どこにどんな情報があるかを明確にしたうえで、適切なところへ自分から突っ込んでいきます。

本や雑誌を読むとき、私は新聞と同様に赤ペンを持って気になる個所や興味のあるポイントを線で囲みます。これを「無意識サーチ」と呼んでいて、昔からやっている習慣です。

雑誌は電車内の中吊り広告をネットで確認し、必要なものを購入しています。書籍は自社のブックレビューサイト「ブクログ」や売れ行きランキングなどを見て、興味を持った本を購入し必要な部分だけ速読します。

テレビに関しては「E morning」や「ワールドビジネスサテライト」といったニュース番組を携帯電話などで録画し、移動時間に視聴しています。ただし普通に見ていると時間がかかるので、早送りやスキップをしながらチェックします。

人からの情報収集としては、同業者や若手ベンチャー、自社幹部の人たちと積極的に食事をする機会をつくっています。予定はほぼ毎晩入っていて、自宅で夕食を食べることはほとんどありません。

インターネットは最大の情報収集ツールの1つですが、前に述べた通り時間のワナにはまりやすく、質の低い情報もたくさんあることに注意が必要です。

私はRSS(Webサイトの見出しや要約をまとめてくれる技術)で情報をチェックしたり、グーグルアラート(指定したキーワードに一致する新しいニュースの検索結果をメールで知らせるサービス)を使い、関心のあるキーワードでネット中から情報を得たりしています。掘り下げた情報については各分野の専門サイトを閲覧します。そのうえで、ネットから得る情報はすべて自分宛のメールでURLを飛ばし、Becky!というメールソフトで一元管理しています。こうすれば、メーラーを立ち上げるだけで必要な情報にすぐたどりつくことができ、以前に見たサイトをあらためて探すのに時間をとられません。

ツイッターは職業別に専門家を抽出してつぶやきを読むなど情報源として活用しています。たとえば法律に関する情報が欲しければ弁護士という括りで抽出したり、原発問題が発生してからは原発問題の専門家をフォローしたりするという具合です。

ただしツイッターで得られる情報は、外部に出して構わない情報ばかり。10段階で評価して6から7くらいの情報しかありません。どんなビジネスが今、一番利益が出ているということはわかっていてもみな書かないでしょう。

本丸の情報を得るには、やはり人と直接会う必要があります。だからこそ、毎日たくさんの人に会っているわけです。

■朝、新聞を読む前に手帳で頭を整理する

情報収集を行うのは朝の時間が多いのですが、私はその前に頭の整理を行います。頭の整理とは、イコール手帳の整理。自分の目標は何か、今日のスケジュールはどうなっているのか、昨日やり残したことはあるか――。やるべきことを明確にしてから、情報収集を始めます。

人は自分を制約しておかないと、なんとなく新聞を読んだりニュースを見たりして、ぼんやり時間を過ごしてしまいます。それが普通の行為なのでしょうが、普通のことをしていたら普通の人になってしまいます。それでは絶対にいけない。情報収集の前に頭の整理を行うのは、普通にならないように自分を律しているというのが正直なところです。

どんな情報を集めればよいかは、自分がどんな優先順位を持っているか、すなわちどんな夢や目標を持っているかで決まります。死ぬ気でやりたいと思っていることがあれば、自然に得るべき情報に焦点が当たっていくはずです。

先ほどツイッターで原子力の専門家をフォローしているとお話ししました。なぜネット企業の経営者が原発問題を気にするのかと思われる方がいるかもしれませんが、事業運営も家族の安全も原発問題に大きく左右されます。したがって、リスク管理のためには原発問題に関する一刻も早い情報収集が必要です。

私は仲間やその家族の命を守ることに高い優先順位を置いていますので、いち早く原発問題をクリッピングし始めました。このように自分の夢や目標、そこから生まれる関心によって、得るべき情報が決まってきます。

どんな情報を集めればよいかわからない人は、新聞や雑誌を眺めて関心のあるところに○をつけていく「無意識サーチ」をするとよいでしょう。そのうち自分の関心がどこにあるかわかってきます。

自分がどんな究極的な夢、目標を持っているかを確認するには、「もし明日死ぬとしたら……」と想定してみることです。私自身は「健康」「教養・知識」「心・精神」「プライベート・家庭」「社会・仕事」「経済・モノ・お金」という6つの分野についてそれぞれ人生の目標を定めています。それらをすべて包含する究極の目標を言い表すと、「幸せ」と「成功」です。私と関わるすべての方みんなが幸せになり、成功してほしい。その結果として、自分もそうなる。それが私の夢です。

私は21歳のときに夢ややりたいことをすべて手帳に書き込み、その後15年の人生年表を作成し、それに沿って人生を邁進することに決めました。そのために、情報整理術を身につけることを決意し、実行してきました。その成果がGMOインターネットグループです。

経営者の仕事は判断の連続で、判断には情報が必要です。判断するための情報を選別する基準になるのは、自分が立てた目標です。結局、何のための情報収集なのかが明確でないといけません。

私は90歳までの「55カ年計画」を作成し、定量的、定性的に仲間たちと目標をシェアしています。情報収集はそのために行うものと位置づけているので、ほとんどブレが起こりません。

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GMOインターネットCEO 熊谷正寿 
1963年、長野県生まれ。91年、ボイスメディア(現・GMOインターネット)を設立。99年に独立系ネットベンチャーとして国内初の株式店頭上場、2005年には東証一部上場を果たす。著書に『一冊の手帳で夢は必ずかなう』『情報整理術 クマガイ式』など。

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(GMOインターネットCEO 熊谷正寿 構成=宮内 健 撮影=的野弘路)