『親愛』リー・シンマン監督

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 先ごろ行われた第8回大阪アジアン映画祭でグランプリを受賞した中国映画『親愛』のリー・シンマン監督がこのほど、インタビューに応じた。中国映画では異例の中国残留日本人問題を真っ向から取り上げており、5月20日には中国全土での公開も決定した。

 主人公は中国残留日本人の母を持ち、日系企業で働くキャリアウーマン。だが母亡き後、実母と名乗る中国人が現れて、自身のアイデンティティーが揺らぐ。しかし真実を知るにつれ、血の繋がりを超えた母親の愛情を再認識するという重厚なドラマだ。主演を『エクスペンダブルズ2』で注目のユー・ナンが演じているのも話題だ。

 リー監督は開拓民が数多く住んだ中国・ハルビン出身。「医者だった母の病院には、両親の死去や貧困から多くの孤児を預かったと聞きます。また一度日本に帰国したものの、中国人と認識されて社会に溶け込めず、再び中国に戻ってきた残留日本人の姿も見てきました。わたしにとって残留日本人問題は身近なテーマだったのです」。

 しかし、製作には困難がつきまとった。同作品は2008年の東京国際映画祭の企画マーケットに出展し、出資を名乗り出る日本企業もあった。しかし日中関係の悪化から白紙に。中国国内で出資会社を探すも、リスキーなテーマに新人女性監督であることも相まってなかなか見つからず。2011年中頃にようやく撮影に漕ぎ着けた。

 「企画を実現させるために残留日本人のシーンを増減させて、27回脚本を描き直しました。そんな中、作品に大きなインスピレーションを与えてくれたのが、今村昌平監督『楢山節考』。それがあなたの運命だと言わんばかりの親子の別れのシーンは、本作のラストシーンにも生かされています」

 ただし反日感情が高まる中国で、日本人を好意的に描いた本作は、公開時に物議を醸す可能性が高い。それでもリー監督は「映画の魅力は、平等、自由、民主がそこにあること。狭量な考えで映画を攻撃するようなことはあってはならないと思う。批判を受けても、私はそれを跳ね除けて頑張りますよ」と力強く語る。

 一方、日本公開は未定だ。だがリー監督は「日本人にも見て欲しいですね。我々中国人が過去の歴史をどのように解釈して、そこから抜け出そうとしているのか知って欲しい」と熱く語った。(取材・文:中山治美)