業績が好転した大企業の“賃上げラッシュ”が下請けの中小企業に波及するには、経済がうまく回っても1年以上かかるとみられている。だが、中小企業にはそれを待つ時間的余裕などありそうにない。2009年に時限立法として法制化された「金融モラトリアム法」(中小企業金融円滑化法)が3月末に期限切れを迎えるからだ。

 同法は経営悪化で資金繰りに苦しむ中小企業に、金融機関からの借り入れの元本返済を一時的に猶予するもので、「平成の徳政令」と呼ばれた。返済猶予で一時的に倒産を防ぎ、その間に景気を回復させて中小企業が自力で借金を返済できるくらいまで業績を好転させることを目的としていたのだが、逆にデフレが進んでしまったために経営を再建できていない企業が多い。法律の期限が切れると、金融機関の回収が始まるため、企業は元金返済を迫られる。

 モラトリアム対象企業の倒産は期限切れを前に5か月連続で増加しているが、東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏は「半年後には大規模な倒産ラッシュが起きる可能性が高い」と指摘する。

「円滑化法で借り入れの元本返済が猶予されていても、金利さえ払えない会社が全国に5万〜6万社あります。その多くは金融機関に提出する経営改善計画さえ策定できない。そうした倒産予備軍は、資金のやり繰りで1、2か月を乗り切ることはできても、半年後には続々と破綻することになりかねない」

 幸いにも金融機関の支援継続を取り付けることができたとしても、「賃下げ」は必至だ。

「静岡の某中小企業は、2億5000万円の売り上げ前提で改善計画を提出したところ、取引銀行に『1億6000万円以上の売り上げは無理です』と却下され、役員報酬半減、従業員の給与もカットを求められた。さらに売れる資産はすべて売却することで、ようやくOKをもらった。中小企業は賃上げどころではない」(NPO法人・再チャレンジ東京の清水洋・顧問)

※週刊ポスト2013年4月5日号