信州大学大学院医学系研究科・能勢博教授

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1日1万歩、漫然と歩いても効果なし!?――健康のためにウォーキングをする人の中には、「1日1万歩」を金科玉条のように自分に課している人もいる。ところが、信州大学大学院(医学系研究科)の能勢博教授の研究によると、ダラダラと長く歩くよりも、「早歩き」「ゆっくり歩き」を交互に繰り返して効率的に歩くほうが、体力向上や血圧低下に効果があるという。

能勢教授は、この「インターバル速歩」を提唱しており、このほど都内で開かれたセミナー「DNAの決める健康運命は変えられる 適度な運動が"遺伝子"の働きを変えて健康に〜運動後の効果をさらに高める運動後の乳たんぱく摂取について〜」で、研究成果について語った。

「運動後の乳たんぱく質摂取」の効果とは

運動処方による医療費削減を目的にプロジェクト「(長野県)松本市の熟年体育大学の挑戦」を進めている能勢教授は、「体力の低下こそが病気になる原因」として、体力が向上する「インターバル速歩」を考案した。歩行者は、携帯型カロリー計を身につけ、3分ごとに出される指示に従い「早歩き」「ゆっくり歩き」を交互に行う。単に「1日1万歩」歩く方法と大きく違うのは、例えば時間を30分と決めて、メリハリを付けて短時間で歩行する点だ。

熟年男女を対象に行った実験では、「インターバル速歩」「普通の歩き方で1日1万歩」「何も特別なことをしない」の3条件にグループを分け、5か月後の結果を比較した。インターバル速歩では、「1日1万歩」のグループより、平均して歩行時間と歩数がやや少なかったが、体力向上と血圧低下の効果が大きかった。一方で、「1日1万歩」組は、「何も特別なことをしない」組と近い数値で、ほとんど効果がでなかった。能勢教授は、5か月間のインターバル速歩で「『体力最大20%向上』『高血圧、高血糖、肥満が20%改善』『医療費が20%削減』の3つが達成された」と胸を張る。

また、インターバル速歩の効果は遺伝子からも裏付けられているとして、「(動脈硬化・がんなどの原因となる)炎症促進遺伝子の働きを抑える」と語った。また、インターバル速歩後にミルクなどの乳たんぱく質を摂取することで、生活習慣病の進行を止めることが期待できるとも指摘した。

同セミナーには、なでしこジャパン選手のサポートも手がける公認スポーツ栄養士・こばたてるみさんも登壇した。アスリートの食生活の観点から、たんぱく質の摂取について語り、食材の中でも牛乳はアミノ酸スコアが高く、「良好なたんぱく質」が摂取できると指摘。乳たんぱく質は、筋肉のエネルギー源となる唯一の必須アミノ酸の含有量も多いという。「運動後すぐに摂取すると筋肉へのグリコーゲンを多く取り込めるから、アスリートはミルクを飲むのがおすすめ」とアドバイスした。

同セミナーは2013年3月12日、東京都内のホテルで開かれた。