マーケティングや経営学などビジネスに直結する本は溢れている。だが周りをあっと言わせるアイデアを、誰もが知る事実やセオリーから考えても結局似たり寄ったりになってしまう。人と違う発想をするには、一見ビジネスと結びつかない分野の視点を取り入れることが有効だ。サイエンスはその要求に応えてくれる。

サイエンスの基本は、物事を筋道立てて考えることだ。これをビジネスシーンに置き換えれば、論理的に考え、わかりやすく話をすることに当たるだろう。プレゼンや議論が苦手な人は、論理学やゲーム理論に関する本で論理の種類やパターンを学ぶといい。

論理を操るのが脳だ。池谷裕二さんの本は読みやすいながらも記憶のメカニズムを科学的に解説する。さらに、近年の脳科学研究でもっとも注目されているのが「ソーシャルブレインズ」である。これは脳が他者との関係性の中でその機能を発揮できるという点に着目したもの。組織内、組織間のコミュニケーションのあり方を考えるきっかけになる。

マーケティングを担当する人には「ネットワーク科学」の考え方を解説した『複雑な世界、単純な法則』が役立つ。ある商品をヒットさせるには誰に向けてメッセージを発信すればいいのか。全体の何割が購入したら周りも購入するのか。世界をつながりで捉える手法を知れば、見えないものも見えてくるかもしれない。

■『詭弁論理論』野崎昭弘
説得に有効なのは、論理を用いて搦め手から攻め、相手の気持ちを揺さぶることという。あらゆるビジネスシーンに使える。

■『記憶力を強くする』池谷裕二
年をとると記憶が衰えるといわれるが、実はそうではない。脳の構造に合わせた記憶の仕方があることを説く。

■『ソーシャルブレインズ入門』藤井直敬
複数の脳がやり取りすることで人間関係や社会は成り立っている。人付き合いを脳の仕組みから考えるための一冊。

■『アスペルガー症候群』岡田尊司
対人関係が苦手なアスペルガーに関して、有名人のエピソードや最新の研究を紹介。「職場の困った人」を理解する一助に。

■『うそつきは得をするのか』生天目 章
ゲーム理論によって人間関係や社会現象を読み解く。経済学ではなく物理学の専門家によって書かれている点が新鮮。

■『経済物理学の発見』高安秀樹
「経済物理学」とは経済現象を物理学的な手法で解明する新しい学問。経済学の常識を覆す発見やアイデアを報告する。

■『複雑な世界、単純な法則』マーク・ブキャナン
6人たどれば世界中の誰とでもつながる。この理論を応用することで流行の広がりも計算できるという驚きの事実を紹介。

■『とんでもなく役に立つ数学』西成活裕
世界をスローモーションで捉える「微分」の考え方。これを仕事に取り入れればビジネスチャンスの発見につながるという。

■『東大人気教授が教える 思考体力を鍛える』西成活裕
物事を多角的に見るには「思考の体力」が欠かせない。大局力など体力を6つに分類し、そのトレーニング方法を解説する。

※「人間=人間を知る」(事象も同様)

----------

東京大学 先端科学技術研究センター教授 西成活裕

1967年、東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。山形大学、ケルン大学理論物理学研究所等を経て現職。専門は数理物理学および渋滞学。

----------

(東京大学 先端科学技術研究センター教授 西成活裕 構成=尹 雄大 撮影=向井 渉)