朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジア女性の自立への動きについてレポートします。

カンボジアでは、まだ情操教育が後回しに

 2年ほど前、カンボジアの小学校の図工の教科書を見せてもらったことがある。

 正確には、社会科の教科書の中に、図工らしきページがある、というだけだった。地域によっても違うのだろうが、教育の優先順位は、「国語、算数、理科、その他」といったところだ、という話も聞いた。

 その図工の内容はさらに驚きだった。たとえば、ヤカンの絵が方眼紙の上に描いてある。子供たちは、お手本のヤカンの絵をそっくりそのまま、マス目ごとに間違わないよう写す。モノの形を正確にとらえることはデッサンの基本なのだろうが、情操教育としての図工の授業の目的は、ヤカンを上手に描くことじゃないよなあ、としみじみ思った。

 水彩絵の具の「使い方」が図入りで書いてあったのにも驚いた。ほとんどの学校では、児童一人ひとりにいきわたるほどの教材がない。絵の具など見たこともない、という子供たちも多い。しかし、実物もないのに、絵の具の「使い方」だけ本で習ってどうなるというのだろう。子供たちの手に筆を握らせ、好きなだけ絵の具を塗らせてあげたい気持ちでいっぱいになった。

 教えているのはそれだけではないが、カンボジアの学校教育で図工や美術、音楽といった情操教育が後回しになっているのは事実だ。多くの学校が午前と午後の2部制で、時間も予算も限られている中では致し方ない面もあるのだろう。

 もっとも、若者たちの創造力は、学校の教室でしか育たないわけではない。そう強く思わせたイベントがあった。

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