『CD付き 騙されたがる人たち 善人で身勝手なあなたへ』

最近の振り込め詐欺の手口は、「オレ、オレ」などと電話をかけてきたりはしないで、事前にカモの家族構成を調べ上げて、非日常的なストーリーに引きずり込もうとする。

講談社から3月(2013年)に刊行された、『CD付き 騙されたがる人たち 善人で身勝手なあなたへ』は、ベストセラー『悪徳商法』の著者でもあり、詐欺問題のプロである大山眞人氏自身が、何とその巧妙な振り込め詐欺にひっかかってしまったという、一見信じがたい経験をもとに執筆された、極めてユニークなノンフィクションだ。

「まさか自分が……」引っかかってしまうとは!

ある日、著者のもとに「携帯の番号が変わったから、お母さんとお兄ちゃんに伝えて」と、ふだん連絡を寄こさない次男から、電話がかかってくる。これがまさか詐欺師からの電話だとは気がつかず、著者はその後、電話の相手を次男だと信じ込んだ、実在しない株インサイダー取引の補填のために、詐欺師の口座へ大金を振り込んでしまったというのだ。

困惑する「息子」の声を耳にした瞬間、詐欺問題のプロである著者は、愛する息子が助けを求めているという非日常的なストーリーに嵌まり、罠に引っかかる哀れな父親になってしまったのだ。

こうして、「まさか自分が……」という詐欺被害者の常套句を、著者自身が口にする羽目になったのである。まさに大失態だ。

著者は、もしかすると自分がプロであるという意識から詐欺師を見下し、進んで騙されてしまったのではないかと反省する。そして、最新の悪徳・詐欺商法の手口や被害状況を詳しく取材する。

そのとき、人から騙されるのではなく、「自ら進んで」騙される、つまり「騙されたがっている」人たちが数多くいるという構図が浮かび上がってきたという。そこには、善良だけど、自分に都合のいい判断をしてしまう、「騙される側の責任」というものが存在していた。

こうして詐欺被害にあったからこそ書ける、自分を含めた「被害者を告発する本」が完成する。

その後著者のもとには、長男を名乗る詐欺師から電話がかかってきた。今度こそリベンジだ。著者は騙されたフリをして通話を録音し、警察に連絡してテレビクルーを待機させた。そして詐欺師を罠にはめる緊迫の会話が、本書付録のCDに「振り込め詐欺師の生音声」として、収録されている。詐欺被害の現場を生々しく伝える類を見ない本だ。巧妙で狡猾な振り込め詐欺の手口、知っておいて損はないだろう。