アベノミクス効果で個人投資家が市場に戻ってきたが、相場の流れをいち早く築いたのは外国人投資家だ。ヘッジファンドなど海外の投資家動向に精通するパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズ チーフ・ストラテジストの宮島秀直氏が世界の金融市場の動きを踏まえ、彼らが狙う日本株についてレポートする。

 * * *
 日本のいわゆる「アベノミクス」に対する外国人投資家の評価は高い。そうした見方を代表するのが、アベノミクスは米国で起きた「ボルカー・ショック」に匹敵するとの、ゴールドマンサックスやJPモルガンの指摘だ。

 1979年にFRB(連邦準備制度理事会)議長に就任したポール・ボルカーは、「新金融調節方式」と呼ばれる金融引き締めを、FRB史上最も激しい政治的抵抗を受けたにもかかわらず断行し、1970年代の米国で起きたスタグフレーションを終わらせたことで知られている。この一連の金融政策がボルカー・ショックと呼ばれ、中央銀行が経済に大きな影響を与えた例として高く評価されているのだ。

 アベノミクスの中でも、外国人投資家が期待しているのは日銀による外債購入である。日銀による外債購入は、これまで財務省や日銀の山口広秀前副総裁などが公式に否定してきたが、外国人投資家は実現可能性を高いと見ている。その根拠となっているのは、米国の第一期オバマ政権の財務長官だったガイトナー氏との密約説。自民党とガイトナー氏の間で20兆円の米国債購入が約束され、それが日銀による外債購入ファンドによって行なわれるとの予想だ。

 仮に、日銀が外債購入ファンドを創設し、それを通じて米国債を購入するとどうなるか。為替市場においては、実質的に「円売り・ドル買い」の為替介入と同じ効果があるが、購入の仕組みは海外の「政府系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)」と同じである。従来、日本の為替介入は財務省の外国為替特会を通じて行なわれてきた。外債購入ファンドを活用すれば、為替操作という海外の批判をかわしつつ、市場介入をすることができるようになる。

 1月下旬、白川方明前日銀総裁が退任時期を前倒しすることを表明したとき、海外市場で円安が一気に進んだ。国内では、「過剰反応」との声が聞こえたが、外国人投資家は、日銀の外債購入ファンドの創設が早まるとの思惑が働いたのだ。当然、20兆円の米国債は、まだ始まっていない。実際に購入が始まれば強力な円安要因となるに違いない。

 今のところ、外国人投資家が物色する日本株は、売買金額がこなせる指数や大型株中心で、個別銘柄についての目立った取引は表に出ていない。ただし、底流では、昨年物色を続けていた、医療機器関連やFA(ファクトリーオートメーション)関連銘柄が選好されているようだ。

 特に、FA関連は中国関連銘柄でもあり、日中関係に好転の兆しが見えてくれば、大きく出直る可能性がある。中国沿岸部では、労働力の不足が目立ってきており、労働力不足を工場の自動化技術で補う必要性が高まっているからだ。

※マネーポスト2013年春号