WBC(WORLD BASEBALL CLASSIC)決勝戦、ドミニカ共和国代表チーム対プエルトリコ代表チーム戦は、ドミニカが3対0で勝利。大会初となる予選からの8戦連勝で、初優勝を果たした。

 過去2大会と同様に、今大会で最も利を得たのは、米メジャーリーグで間違いあるまい。
 そもそもWBCは、メジャーリーグの世界戦略の一環として開催されている。具体的には、市場のグローバル化による収益の拡大と、世界各国での選手の発掘だ。

 わが国では昨年、日本プロ野球選手会がWBCの収益構造に疑問を抱き、一時不参加を表明したことは記憶に新しい。 
 過去2大会では、収益の53%が参加国の組織委員会に分配されたが、このうちメジャーリーグとメジャーリーグ選手会の取り分は、それぞれ17.5%収益の3割以上が、メジャーリーグ関係者の懐に入った。わが国は7%、韓国は5%だった。
 仮に大会が赤字だった場合、メジャーリーグが全額補填するのだが、抜け目無いメジャーリーグがそんなヘマをするはずがない。選手会と運営会社を設立し、チケット放映権、記念グッズに代表されるマーチャンダイジングなど、WBCに関する権利を一元管理。収益の最大化を図った。
 このことに対し、わが国の選手会が異を唱えたのだが、日本野球機構(NPB)が代表チーム、侍ジャパンに関するスポンサー権商品化権を得たことで矛を収めた。
 メジャーリーグ側が一人勝ちする収益構造は、今大会も変わっていないのだろう。

 WBCは、将来のメジャーリーガーの品評の場でもある。テキサス・レンジャーズダルビッシュ有ミルウォーキー・ブルワーズ青木宣親オークランド・アスレチックス中島裕之シカゴ・カブス藤川球児などはそれぞれ過去の大会に参加。メジャーリーグ関係者からの評価を上げた。
 新聞報道によると、今大会でも関係者は前田健太田中将大といった選手に熱視線を送っていたそうだ。

 今大会は、台湾オランダプエルトリコといった国々の躍進が目覚しかったが、これもメジャーリーグは歓迎している。野球が世界に普及すれば、市場も、選手の発掘の場も広がるからだ。

 大会開催国の米国は今大会、第2ラウンドで敗退3大会通じての屈辱に、米国内では不満の声も挙がっているが、メジャーリーグには痛くも痒くもない
 優勝できなくても、メジャーリーグのブランド力が弱まることはないし、いつものように「本気ではなかった」「時期が悪く、ベストメンバーを揃えられなかった」と、言い訳をすればいいのだ。

 「いくら高い給料をもらっても、奴隷は奴隷だ」とは、元セントルイス・カージナルスカート・フラッドの言葉だ。
 フラッドは1969年オフ、自らをフィラデルフィア・フィリーズにトレードしようとする球団に激怒。当時の金額で90万ドル、現在の10億円以上の契約を得ていたが、どんなに大金を得ても金銭で売買されている限り、選手は奴隷と変わらないと主張した。

 フラッドの言葉を借り、WBCをメジャーリーグによる奴隷ビジネス奴隷品評会と言うのは言い過ぎだろうか。

 もちろん、メジャーリーグ側にも言い分がある。大会を企画・立案し、開催しているのは、他ならぬメジャーリーグ。文句があるのなら、自分たちでも大会を作ればいい、というのが彼らの本音だろう。

 わが国は今大会、決勝ラウンドの準決勝でプエルトリコの敗退。3連覇はならなかった。このことについて、敗因分析が進んでいる。
 敗因分析ももちろん大事だが、次大会に向け、いかにメジャーリーグに発言権を認めさせるかも、求められる。