事業部の士気を高める施策を検討。質の高いDJ製品の開発を支える

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WOMAN’S CAREER Vol.106

パイオニア株式会社 粕谷聡美さん

【活躍する女性社員】プロDJからも評価される機器の開発を支え、課長としても活躍する粕谷さん


■技術者としての経験を生かして、経営層と設計者たちの懸け橋になっていきたい

「世界初」の技術やサービスを生み出すことにこだわり、カーナビゲーションやカーオーディオなどの車載機器、ヘッドホンやホームシアターシステム、DJ機器などの音響・映像機器、有機EL照明などの新規事業を展開しているパイオニア。粕谷さんは入社以来、ソフトウェア設計を担う技術者としてキャリアを重ねてきた。とりわけ、入社7年目から13年間携わってきたDJ機器の設計において、プロDJから評価される機種を生み出してきた。
「『新しい製品には必ずプラスワンコンセプトを加えていく』という方針の下、お客さまが求めていらっしゃる機能はもちろん、『こんな使い方もできるんだ』と驚きを感じていただける機能を加えようという意識を持って企画・営業・設計・品質生産管理部門の担当者たちと共に取り組んでいました。設計にあたっては、『こんなシーンを演出したい』という視点から議論を重ねて製品の構造や仕様を決め、試作を繰り返して仕上げていきます。そうして自分が設計に携わった製品をDJの本場であるヨーロッパやアメリカのプロDJが使い、観客を盛り上げている様子を見ると、感動で鳥肌が立ちます。こだわって作ってきて良かったと思える瞬間です」

DJ機器以前に担当していたのは、業務用カラオケや医療・教育現場のデータ管理に用いられるオートチェンジャーの設計。CD、DVDなどのメディアを数十枚〜数百枚単位で収納し、メディアを入れ替えて再生・記録する機器だ。繊細により早くメディアを入れ替えるプログラムを考え、実現する先輩たちのもとで、粕谷さんはエンジニアとしての基本を身につけていった。
「不具合が起こった際には、思いこみにとらわれず、起こっている現象を分析して原因を突き止め、最適な解決方法を導き出すことが大切だということを教わりました。技術的な知識だけでなくモノづくりに携わる技術者としての姿勢が身についた6年間でした」

その後、長女と次女の出産・育児を経験しながらCDJプレーヤーやDJミキサーの設計に携わり、14年目にはDJミキサーのソフトウェア設計のグループリーダーに。全体の仕様からプログラム構成を描き、メンバーがプログラムを組む際のサポートやアドバイスを行う立場として6年間で4機種の設計をけん引した。中でも大きな学びを得たのが、17年目に担当したDJミキサー「DJM-900nexus」の設計。メンバーの一人と意思疎通がうまくいかず、自身のコミュニケーション方法を見直すことになったのだ。
「設計課題とともに、体制や環境の課題も一緒に解決してほしいという思いで相談してくれたにもかかわらず、私はただ設計課題の解決策を示すだけでした。背景を考えず、体制や環境の課題を解決することを怠ってしまったんです。そのメンバーからはトラブルがあっても報告してもらえなくなり、チーム全体も険悪な雰囲気に。そして、他チームの社員に間を取り持ってもらって関係を修復することになったのです。メンバーがイキイキと仕事ができる場を作ることがグループリーダーの役割であり、一人ひとりが納得して仕事をすることで質の高い製品を生み出せると考えていたにもかかわらず、メンバーからの信頼を損ねてしまい、反省しました。人間関係を構築することの大切さをあらためて実感し、一人ひとりと向き合い、表情や反応を見ながら話すことの大切さを学んだ経験でした」

一方で、「DJM-900nexus」の設計はメンバーと協力し困難を乗り越えるやりがいと、顧客から評価される製品をつくり上げる喜びを感じた仕事でもあったという。
「音楽のテンポとエフェクト(※)のタイミングのずれを自動的に補正する『クオンタイズ』機能を搭載するのに苦労したのですが、若手メンバーの粘りに助けられました。DJが最も恐れているのは、演奏中に音が止まることとミスをすること。ミスを軽減するとともに、パフォーマンスの幅を広げる機能に仕上げるため、何度も試作と操作性の確認を繰り返し、プログラムを仕上げていったのです。できあがった製品をドイツやイギリス、ベルギーに足を運んでお披露目した際には、プロDJやクラブオーナー、楽器店のスタッフなど多くの方から好評を頂くことができました。人で苦労しつつ、人に助けられた機種だったと感じています」
※音に効果を与え、曲調やテンポ、音域を変化させるもの。同じ箇所を繰り返す「ループ」、残響音を擬似的に作り出す「リバーブ」など多数の種類がある。

そして、入社20年目を迎えた2012年、粕谷さんに新たな転機が訪れた。DJ機器事業を担うプロSV事業部全体の人事や総務、経理、法務などを担う事業統括部経営管理課の課長を任されたのだ。これらの業務をとりまとめつつ、事業部の従業員ニ百数十人全員が同じビジョンに向かって笑顔でイキイキと仕事ができる風土を作るための仕掛けを考え、実践していくことが求められた。
「メンバーがイキイキと仕事ができる雰囲気づくりを心がけていたことを評価していただき、事業部全体に向けて実践してほしいとのことでした。現在は、事業部の従業員全員が参加して事業部のビジョンや経営状況を共有したり、新製品の設計の苦労などを担当者にプレゼンしてもらい、ねぎらう場を作ることにも取り組んでいます。事業部の従業員の約8割は設計部門のメンバー。技術者出身の私だからこそできることがあると思うので、事業部の経営層との懸け橋になり、これからも設計者たちがイキイキと仕事ができ、お客様に驚きを感じて頂ける製品が生み出される環境を作っていければと思います」

プライベートでは2児の母。DJ機器の設計部門の女性社員の中で初めて出産を経験したことから、育児休業から復帰した後は育児を理由に仕事をおろそかにしないよう工夫を重ねたという。
「私が信頼を得られなければあとに続く女性社員に影響が出るし、自分も仕事をしづらくなると思い、子どもが体調を崩して早退したときは別の日に早く来て遅れを取り戻したり、業務の進捗状況を可視化して『いないからわからない』という状態を作らないようにするなどして業務に支障が出ないようにしました。そうやって信頼を得られたことで今があると思います」