長らく沈んできた土地や不動産の価格にも上昇機運が見られる。国土交通省の調査では地価の上昇地区が増え、REIT(不動産投資信託)市場にもマネーが流入している。全体の値動きを示す東証REIT指数は底値の倍以上にまで上がっている。

 しかし、それもいつまでも続く保証はない。信州大学経済学部の真壁昭夫教授の指摘。

「バブル期のように、借金をしてまで不動産投機に走る人はほとんどいないので、資産価値の上昇はどうしても限定的です。たしかに来年4月の消費増税を控えた駆け込み需要は期待できます。問題はその先。それを超えてさらに土地バブルともいえるような状況にまで押し上げる動きは見えない」

 経済ジャーナリストの小泉深氏は別の角度からこう分析する。

「バブル崩壊の後遺症が未だ根強い銀行は、金融庁が目を光らせていることもあって、リスクをとってまでお金を貸そうとはしない。貸し渋りは依然続いているのです。一般庶民にまで不動産融資が行き渡ることは考えにくく、バブルと呼べるほどの地価上昇は到底見込めないでしょう」

 目下、不動産価格の上昇期待から含み益の増大が見込まれ、土地を所有する企業の株価が急騰している。だが、それが期待外れとなれば、それもまた株価下落の要因になる。株価上昇も地価上昇も、薄氷を踏むような状況なのだ。

 もっと本質的な問題がある。仮に株や土地が上昇したとしても、庶民の生活の向上には結びつかない。経済学者で、慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績氏が指摘する。

「小泉政権下でも景気拡大局面が現われて株高となったが、庶民はそれほど恩恵を受けられなかった。現在、それと同じような状況がある。株や土地が上がっても持たざる人や投資資金のない人には関係ない。円安で業績が好転して賃上げにつながるのは一部の大企業にすぎません。多くの庶民にとっては賃金が上がらない中で、物価だけが上がるというのはマイナスでしかありません」

 バブルの崖は一寸先かもしれない。目先の株高や地価上昇に浮かれている今だからこそ、気を引き締めておきたい。

※週刊ポスト2013年3月29日号