CVSグループ 広告販促企画部  白井明子  1976年生まれ。2008年法政大学大学院経営学研究科を修了。99年ローソン入社。営業を経て、広告販促企画部。現在はエンタテインメント・web分野の広告販促を担当。

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アカウントはなくても、著名人の「ツイート(つぶやき)」を見るなど、ソーシャルメディアやSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)の利用経験をもつ読者は多いだろう。

特徴のひとつは、情報伝達のスピードの早さだ。利用者の関心が高い話題は、ときに発信者の思惑を超える速度で共有され、拡散していく。それは大きなチャンスであり、同時にリスクにもなりうる。マーケティングを考えるうえで、もはや無視できない媒体へと成長している。

利用者数の増加には波がある。ミクシィは06年から07年、ツイッターは08年から09年に国内での利用者を激増させた。10年にはフェイスブックがサイトへのアクセス数で検索最大手グーグル(Google)を抜き、世界一になった。

フェイスブックは米ハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグが、学生向けに、04年から開始したサービスである。実名登録制で、利用には個人情報の登録が必要だ。参加へのハードルは高いが、それだけ親密なコミュニケーションを交わすことができるとして世界中で利用者が急増した。

一方、一大ブームとなったツイッターは、東日本大震災であらためて注目を集めた。11年3月の利用者数が約1800万人に達したのは、多くの人が、震災関連の情報をツイッターに求めたからだとみられている。

ツイッターが開始されたのは06年7月。日本語版が始まったのは08年4月。140字以内の短文を投稿・閲覧するというシンプルなサービスだ。アメリカではオバマ大統領やホワイトハウスがいち早く情報発信に活用した。日本でも首相官邸や各省庁、報道機関が情報発信に取り組んでいる。震災後に急遽開設されたアカウントも多い。そして多くの企業でも、宣伝やPR、情報収集のためにツイッターの活用が進んでいる。

こうしたソーシャルメディアをビジネスで活用するうえでは、何がポイントになるのだろうか。

ひとつは、利用者との距離の取り方だ。たとえば「仕事」と「プライベート」を分けたいと考えても、利用者はそれを一体に捉えてしまう。発言によっては「不謹慎」との誹りを受けることもあるだろう。距離の近さには、チャンスとリスクが共に潜む。

■架空の女子大生が「4億円」を稼ぐ

架空のキャラクターを活用することで、こうしたリスクに対応している企業がある。コンビニ大手のローソンでは、社員ではなく、「あきこちゃん」というキャラクターを使って情報発信を行っている。コンセプトは「みんなでつくるソーシャルメディアネットアイドル」。「生みの親」である広告販促企画部の白井明子氏はいう。

「あきこちゃんには、『役者』として活躍してもらっています。キャラクターを立てれば、担当者が変わってもやりやすい。利用者の声をどんどん取り入れていくことで、愛されるキャラクターづくりを目指しました」

きっかけは新浪剛史社長の「うちもツイッターをやろう」という指示だった。当時、白井氏はツイッターについてほとんど知らなかったが、専門家に助言を求めるなど2カ月間で準備し、10年4月に開始した。

誰が発言をしてもぶれがないように、当初から「20歳の大学2年生」「都内で一人暮らし」「滋賀県出身」といった設定や「どんな顔文字を使うか」「どんな言葉遣いか」といったポリシーが詳しく決められている。その一方で、開始時のイラストは「後ろ姿」のみで、後から「顔」のイラストをネット上で公募するなど、「人格をみんなでつくる」(白井氏)ことで、利用者との距離を近づける工夫がされている。

ローソンでは、ツイッターやフェイスブックをはじめ、複数のソーシャルメディアに公式アカウントを開設している。利用形態にもよるが、基本的に大きな投資が必要となるものはない。専任のスタッフはおらず、通常業務と並行して情報発信を行っている。だが効果は大きいという。

「ソーシャルメディアからの自社サイトへのアクセス数を、ポータルサイトの広告料金に置き換えると、媒体価値は約4億円になります。一般のお客様がコンビニのウェブサイトを訪れる機会は少ない。メディアごとに『店舗を出店する』ことで、より多くのお客様と接点をもてればと考えています」(白井氏)

メディアによって特性が異なるため、使い分けも行われている。ツイッターは素早く伝えるのに適しており、1日5〜6回は投稿する。フェイスブックは仲間内での拡散性に優れているが、利用者は都内に集中。不慣れな利用者も多いため、投稿は1日1回に抑えている。一方、「モバゲー」や「グリー」は携帯電話からの利用者が多く、地方在住のユーザーに効果的だという。

ソーシャルメディアの展開には、広告金額やアクセス数には置き換えられない効果もある。顧客に対して、「先進的」「目新しい」といったイメージをアピールできるからだ。

「ローソンは30代男性が中心というイメージが強い。女性の支持を増やすためにも、『いち早く面白いことをやっている』と印象づけたい」(白井氏)

ローソンは11年6月にフェイスブックの新サービス「チェックイン・クーポン」を導入した。これは、近くの店や建物を知らせる「チェックイン」の機能を使って、携帯電話などから割引券を取得できるサービスだ。ローソンは国内初導入の14社の1社になっている。

白井氏は、取材の最後に、「ソーシャルメディアには、顧客開拓の点で無限の可能性がある」と話した。活用はさらに進んでいくだろう。

(フリーライター 大山貴弘=文 遠藤素子=撮影)