「アキバにご奉仕いたしますっ!」(コスプレイヤー=みるる 撮影=宮嶋)

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■人間にたとえると、こんなかんじ

秋葉原で働くようになった2年前から、ほぼ毎日秋葉原で過ごしていますが、それまでも秋葉原は私にとって馴染みのある街でした。子どものころは夏休みの宿題を手伝ってもらう口実で、無線マニアで機械いじりが趣味だった父に、電子部品を求めて電気街によく連れて行ってもらいました。今でも新しいパソコンを購入する際は、その手の知識が私より数段上の父にアドバイスを求めて、秋葉原に同行してもらいます。ただし、メイド喫茶は父にとって居心地が悪いのか、誘ってもあまり行きたがりません。

私自身の仕事でも、2000年ごろから頻繁に秋葉原に通っていました。そのころはアジア各地で自国のコンテンツ産業を育成するため、日本の事例を学ぼうとする気運がありました。ちょうどその分野の研究に手を出していた私は、秋葉原とアジア各地とを頻繁に行き来していました。秋葉原駅周辺の再開発が始まった2005年ごろも月に一度は秋葉原に通っていたので、訪れる度に大きく変化している秋葉原の様子に毎回驚いていたものです。

さて、皆さんには「秋葉原」という街にどのようなイメージがあるでしょうか。私がイメージする「秋葉原」は、人間にたとえると、それほどイケメンでもないし、服装もぱっとしない、一見どこにでもいるような青年男性。しかし、なにか活力に満ちたオーラを感じ、なんだかおもしろいことが起きるかもと心浮き立つような期待をさせてくれる存在です。

彼はけっこう有名人で、世界中で彼の名前を知っている人がたくさんいます。しかし、彼がどんな人物か、うまく説明できる人はなかなかいません。ときどきテレビや新聞でも紹介されるのですが、かなり興味本位でおもしろおかしく伝えられ、それを鵜呑みにした人たちから誤解をされたり、忌み嫌われたりさえします。

ふだんの彼は、仕事の時も遊びの時もいつも楽しそうで、あえて一言で表せば「カワリモノ」です。しかも、彼の興味の対象はいろんなことに向けられていて、そのこだわりが半端ではありません。「そんなことに時間とお金を使うなんて、何の意味があるんだ? おかしな奴だな」と呆れられることもしばしば。しかし、彼はそんなことはお構いなしに、自分が楽しいと思うことに没頭しています。

■成熟しないから、成長できる

そんな彼の周りには、同じ関心を持つ仲間たちがいつも集まってきます。彼はいろんなことに詳しいので、集まる人たちもいろいろです。でもどうしたわけか、彼は女性にモテない。少しは女の子にモテようとお洒落を試みたこともあったのですが、あまり成果はなかったようです。しかし、一部の女性には密かに人気があったりして、彼の周りに集う人たちの中にも、最近は女子をちらほら見かけられるようになりました。

また、「カワリモノ」の彼は、誰でも分け隔てなく受け入れます。彼ほど度量が大きい者を私は知りません。彼の周りに集まる人たちの中には、学校や会社や家庭で居場所のない者、つまはじきにされる者、疎外される者もいます。それらの人たちも何ひとつ区別することなく受け入れ、ともに好きなことを楽しみ、生きる喜びと安心感を与えてくれます。

さらにもうひとつ、忘れてはならない「カワリモノ」秋葉原の最大の魅力ともいえる、尋常でない特質があります。

秋葉原が持つもうひとつの特徴は、その変わり身の早さです。単なる新しい環境への適応ではなく、自ら生み出した新しい価値観や手法をこれまでの伝統の上に積み重ね、新たな秋葉原の姿へと変身してきたのです。秋葉原は、戦争直後に電子部品を売る小さな店舗が集まり、経済成長で豊かになり始めると家庭向けの家電製品を売る店舗が生まれました。余裕が出てきて趣味を楽しめるようになると、オーディオや高級家電、個人向け電化製品が目立つようになり、パソコン、アニメやゲームなどのコンテンツ商品やサービスの店舗が増えました。今や年間売上高が40兆円以上と言われる秋葉原は、日本の消費文化や生活スタイルの動向を絶えず先取りし、時代の先頭を走り続けてきました。

街は生き物です。誕生し、成長し、成熟し、衰退し、生まれ変わる。ところが、秋葉原には、いつまでも成熟というものがないように思えます。いつまでも「こども」なのかも知れません。「こども」だからこそ、いろんなことに興味を持ち、いろんな人を受け入れられる「カワリモノ」であり続け、大人たちが不安に感じる時代の変化もチャンスだと捉えて素早く変身し成長し続けるのです。

今、私たちの手本となるのは、秋葉原のような街だと感じています。秋葉原には、これからの時代を生きるヒントがたくさんあるのです。この連載では、「カワリモノ」秋葉原で見つけたさまざまなヒントを伝えたいと目論んでいます。いろんな人が集まり、いろんな活動がある秋葉原の実態を紹介しながら、そこから普段の生活に活かせる成長の種を届けたいと思います。

(次回のお題は「福袋」。3月26日[火]更新予定)

(梅本 克=文(デジタルハリウッド大学客員准教授))