砂金を掘る趣味の話




「砂金掘り」を趣味にしている人がいます。普通に暮らしていて「金」を目にする機会というのはあまりありませんから、金が自分で採取できるとなるとテンションが上がりそうですね!



『甲斐黄金村・湯之奥金山博物館』の親善大使も務めている天野直人さんにお話を伺いました。



■砂金掘りはなぜ始める!?



――天野さんはどのように「砂金掘り」の趣味を始められたのでしょうか?



天野さん もともと私はアウトドア系の趣味が好きで、富士川水系で渓流釣りやアユ釣りもしていたんです。



身延(みのぶ)の近所ですが、そこで猟師が鹿を捕ってはく製にしたんですよ。そのはく製の歯に金が付いていたという話がありまして。それを聞いたんで「いつか砂金掘り」をやってみたいなあ、と思っていたんです。



――独学で始めたんですか?



天野さん はい、最初はほとんど知識もないまま一人でやっていまして、なかなか採れないときに『湯之奥金山博物館』で行っている講座の中で実際に砂金掘りのやり方を北海道の方が見せてくれたことがあり、それに参加して「大体の要領」を覚えて……あとは独学でどんどんやりました。



また、仲間も大勢できましたので、情報の共有化で技術を上げやすかったのは非常に幸運でした。



――砂金掘りを始めてどのくらいたちましたか?



天野さん もう12年になりますかね。砂金掘りの趣味を始める人はいろいろなタイプがいます。鉱物好きなので始めた人、自然が好きで河川歩きなどから砂金掘りに入った人などが多いと思います。



――砂金掘りが好きな人は全国にいるんでしょうか?



天野さん 全国におられます。湯之奥金山博物館が交流、情報交換の「ハブ」になっているようなところがあります。ただ、気を付けていただきたいのは、湯之奥金山博物館は金山衆の歴史資料館であって「砂金掘りの方法」を教える場所ではありません。



あくまでも資料館であり、スタッフも砂金のことはほとんど知らないので「砂金の掘り方」などを問い合わせないようにお願いいたします。



■砂金掘りの趣味はもうかりますか?



――みんなこれが聞きたいのだと思いますが、砂金掘りの趣味はもうかるものなのでしょうか?



天野さん 正直に言いますが、もうからないですよ。買った方が安くつくでしょうね。採算ベースに乗るんだったら企業がやってますよ(笑)。



――あの、天野さんは12年も砂金掘りをされていますが、今まで掘った金を一つの塊にしたりしないんですか?



天野さん 皆さん誤解されているかもしれませんが、砂金というのは純金じゃないんですよ。大体金の含有率が80%ぐらいで、あとは銀が混ざっているとか、鉄分が入っているとかですね。要は、河川によってその砂金の質が違うんです。



で、金の塊にして製錬すると……純金の塊にするときれいかもしれませんが、実は採ったままの「鉱物標本」の方が価格が高いんですよ(笑)。



――えっ、そうなんですか?



天野さん 鉱物としては、産地がはっきりしていた方がいいんですよ。それに、産地や河川の上下流によって砂金の形状が違うので、私も分類しています。



■日本の河川はほとんどで金が採れる!



――砂金はどこに行っても採れるのでしょうか?



天野さん 河川によって採れる量の多寡はあると思いますが、日本の河川の95%で砂金が採れるという話もありますので、自分の地元でチャレンジしてみるとよいと思います。



――川で砂金を採るのに何か許可みたいなものはいるのでしょうか?



天野さん それはグレイゾーンなんです。厳密にいえば、川で勝手に砂金を掘るのは違法になります。ただ、河原で個人が石を拾って持って帰っても、捕まったりすることはないですよね。あくまでそれの延長で、ある意味、お目こぼしをしてもらっている趣味ですね。



――ああ、それはちょっと悲しいですね。



天野さん あと、どの川でやってもいいわけではありません。「鉱区」が設定されている川もあります。これは企業や個人が実際に掘るためにお金を支払っている場所なので、そこに入って掘ったらいけませんね。



■どうすれば金が採れるのか!?



――砂金ってどうすれば採れるんですか?



天野さん まず、目利きです。皆さん、砂金掘りというと、川の砂利を採ってすくって濾(こ)して……なんていうイメージをお持ちかもしれませんが、実はそればかりではないんです。



純金は比重が19.3もあり、鉄の2.5倍。砂金もそれに近い比重があります。要するに石ころよりも流れにくいので、増水時に川底をはうように流されていき、基盤岩のへこみやクラックに落ち込んで濃縮堆積していきます。



例えば、川にコンクリートブロックが敷かれているところがあります。この溝に砂金が入ると、溝の中でかき混ぜられているうちに沈んでいき、溝から出られずにたまっていきます。また、川端に生えている水草の根に砂金がひっかかっていたりとか。これは、砂金を含んだ水が草の根のところで濾(こ)されて、金が残るからなんですね。



――それは素人には分からないですねー。



天野さん まず「ここにありそうだ」という「目利き」ができないといけないんです。これは、同行者が採れたら「どこで採れたか」を聞いたり、自分で勉強したりしないと身に付きません。



――なるほど。個人にそういうノウハウがないといけないんですね。



■素人が砂金掘りの趣味を始めるには!?



――全くの素人が砂金掘りを始めたい場合はどうすればいいでしょうか?



天野さん すでに趣味でやっている人に連れていってもらうのが一番いいと思います。



――その場合は何が必要でしょうか? そろえておくべき道具はありますか?



天野さん そうですね、必要なものは「パンニング皿」ですかね。



――あの、砂金採りというと想像する、砂利を水と一緒にすくって回すやつですね。



天野さん はい(笑)。ゴールドパンともいいますが、要は比重選鉱ができればいいんです。金は重い物質ですから、軽いものをより分け捨てて、お皿に残るようにするんです。



溝がしっかり鋭角についていて深いものを選ぶのがいいですね。プロライン製のものがお薦めです。



――価格はどのくらいでしょうか?



天野さん 2,800円ぐらいでしょうか。最近では通販でいろいろなパンニング皿が簡単に買えるようになっています。



――ほかに必要なものはありますか?



天野さん 川に入りますから、あとは長靴と移植ゴテ、砂金を入れる容器があれば取りあえず大丈夫でしょう。



――では、割と安価に始められる趣味なんですね。



天野さん そうですね。ただ、これは最低限の準備で、入れ込みだすと必要な装備が増えてお金をつぎ込んでしまいますよ(笑)。金属探知機を購入して使ったりもします。



――えっ。そんな掘り方もするんですか?



天野さん でも、そんなに有効なツールじゃないんですけどね(笑)。私自身は「メガネ掘り」という、川遊び用の「タコメガネ」を使って砂金を探すのが好きですね。楽なのと大物が採れるので。



■採れた金で指輪を作る人も!



――採った金は天野さんのように保管する人が多いんでしょうか?



天野さん ほとんどの方が保管しています。中には「指輪」を作る人もいますよ。



――かなりの金がないとできないんじゃないですか?



天野さん いえ、4-5gあれば指輪になります。調子のいい日だと1日に10g採れる日があったりしますので、そういう日に当たればすぐに指輪ができますよ。めったにないですけどね。



――それはいい話ですねー。



天野さん 彼女や奥さんに贈ると喜ばれますよ(笑)。ただ、これから砂金掘りを始める人には一つ注意していただきたいことがあるんです。



――何でしょうか?



天野さん 「砂金」というのは、いわば「お宝」ですから、目の色が変わる人がいるんですよ。例えば、景勝地の基盤岩を破壊してしまったり、河川の形状を変えるくらい掘ってしまったり。



――そこまでやる人がいるんですか?



天野さん はい。実際にあったことです。先ほど申し上げたみたいに、あくまでも目こぼしされている趣味なので、むちゃなことをして、地元に迷惑をかけてはいけないです。あまり金に目がくらんで没頭してしまうといいことはありませんので。また、同じ趣味の人にも迷惑がかかりますので。



――趣味の範囲で、節度を守って、ということですね。



天野さん はい。それが一番いいと思います。楽しみ方はいろいろあって奥の深い楽しい趣味ですので、お金のためにやるのはやめた方がいいです。





「砂金掘り」はどうも楽しそうです(笑)。あなたも始めてみませんか?







(高橋モータース@dcp)





⇒『甲斐黄金村・湯之奥金山博物館』

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