凛とした表情が印象的クリスティナ・フルトゥル(Crisitina Flutur:アリーナ役)(左)と吸い込まれてしまいそうな目をしているコスミナ・ストラタン(Cosmina Stratan:ヴォイキツァ役)(右)。
photo: Katase 

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本日3月16日から公開のルーマニア映画『汚(けが)れなき祈り』、カンヌ国際映画祭で女優賞と脚本賞を受賞した注目の作品だ。そのカンヌ女優が来日!ということで、ルーマニア人女優コスミナ・ストラタン、そしてクリスティナ・フルトゥルを取材した。

幼少期に同じ孤児院で育った親友、ドイツに出稼ぎに出ているアリーナ(クリスティナ)と修道女として歩むヴォイキツァ(コスミナ)。心のすれ違いから、精神を患ってしまうアリーナを救うため、修道院で行われた悪魔祓いの儀式がまねいた悲劇を描く作品だ。

残念ながら日本で知名度が低いルーマニア。日本人がルーマニアで思い浮かべるのはドラキュラ、コマネチくらい? 転出届けでルーマニア住所記載の際、イギリスやイタリア、アメリカでは市(県)レベルまで求められたのに、ルーマニアでは国名のみ……。
まずどこにあるかの説明を求められることがほとんどのルーマニア、かろうじて知られている首都ブカレストから更に鉄道で5〜6時間離れた地方都市ヤシ出身という2人。なんと私もそのヤシに住み、彼女達の母校の大学で教鞭を取ったこともあるという偶然!

早速、ルーマニア語でインタビュー開始。挨拶や自己紹介はインタビューアーとして常識範囲。でもね、私は方言だって使えるんだから! と、映画内で出てきた表現を披露。関西弁ならぬ、マイナーな地区弁を話す外国人をイメージして欲しい。驚いた彼女達に、調子にのって新しいルーマニア語表現も教えてもらったり。

新人女優にしてカンヌ受賞の彼女達、これから益々遠い存在になってしまうだろうから、格好よく取材を! と思うも、一度方言を話した時点でやはり流れは地元ネタ。街で好きな場所に挙がった学生デート定番の通りや、住民しかしらない地域・お店など。2人が小学生で行った遠足先に私が観光地として訪ねていたり!飲み会で同じ路線使用やご近所だと妙に盛り上がる、そんな感じ!カンヌ女優がちょっと身近に感じた時間だった。

地元ネタに花を咲かせつつも映画の話を。今回難しい役柄で笑顔も少なかった2人。2カ月半の撮影中、週末など休日も首都や自宅には敢えて戻らず、修道院のある現場地域で静かに過ごしたとのこと。外には「違ったエネルギーがある」と感じるようになったとか。また撮影を通しての宗教観や世界観への影響を尋ねると「全てがとても変わってしまった」とのこと。“クルー間でも全く異なる宗教信条を持ち、映画のシチュエーション自体に危険がはらんで”(Production note引用)いて、現在でも現地で論議があるセンセーショナルな事件。新聞の一面になったニュースがこんな風に映画にとりあげられて良いのかと思ったそう。

観客には、映画からそんな宗教観やルーマニアの背景はもちろん、人生の全てのことにおいて「選択」の重要性を感じて欲しいとのこと。神への気持ち、愛か否か、善か悪か、白か黒か…。人生は多くの選択で溢れ、そのひとつの間違え・勘違い・すれ違いが悲しい運命を導くこともある。スクリーンでの彼女たちの葛藤から、是非人生を見つめて欲しい。

最後に、「あまり知られていないルーマニアについて、日本人に何を知って欲しいか」聞くと、笑いながら「femeii(女性たち)」という答え。え!? 実は「ルーマニア×女性」のワード検索で筆者ブログにたどり着く人は多い。すると、そんなルーマニア事情も男性だけでなく女性にも、全ての人に知ってもらいたいと答えた。ルーマニアの女性は美しく、そしてまっすぐしている。母国ルーマニアを愛するカンヌ受賞の女優たちの強さを見た。

初来日、浅草で着物歩きやお点前を体験という彼女達。「とにかく時間がなかった」と残念がっていた。次はもっと長く日本を探索して欲しい。そして次は日本のネタで盛り上がれることを願って。
(川上・L・れい子)

■ 『汚(けが)れなき祈り』
原題:DUPA DEALURI(英題:BEYOND THE HILLS )
(2012/ルーマニア・フランス・ベルギー/ルーマニア語/カラー/152分)
第65回カンヌ国際映画祭 女優賞&脚本賞 W受賞
製作・監督・脚本:クリスティアン・ムンジウ(『4カ月、3週と2日』)
原案:タティアナ・ニクレスク・ブラン
出演:コスミナ・ストラタン、クリスティナ・フルトゥル、
ヴァレリウ・アンドリウツァ、ダナ・タパラガ
配給:マジックアワー
シネマスコープ/ドルビーデジタル
協力:コムストック・グループ/後援:ルーマニア大使館
公式サイト:kegarenaki.com

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■ 「汚(けが)れなき祈り」公式サイト
■ 地球の歩き方編集部・取材&日記:カンヌ映画祭で2部門受賞の注目のルーマニア映画『汚(けが)れなき祈り』
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■ スマイル専門フォトグラファー 片瀬昭 (インタビュー撮影協力)