生きたまま市場に持ち込まれるニワトリ。近代的なスーパーマーケットは都心部にわずかにある程度で、多くの国民がこうした市場を利用している(写真は今回の鳥インフルエンザ感染とは関係ありません)=プノンペン市内で【撮影/木村文】

写真拡大

朝日新聞のマニラ支局長などを経て2009年に単身カンボジアに移住、現地のフリーペーパー編集長を務めた木村文記者が、カンボジアの鳥インフルエンザ問題についてレポートします。

カンボジアは世界最悪の状態

 カンボジア国内で、今年に入ってから、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の「トリからヒト」への感染が急速に広がっている。1月下旬に最初の死者が出てからわずか1カ月余りの間に9人が感染、このうち8人が亡くなっている。

 国連の世界保健機関(WHO)によれば、2月末現在、世界で鳥インフルエンザの人への感染が報告されているのはカンボジアのほか、エジプトと中国の2カ国だけ。中国では2人、エジプトでは1人が亡くなっている。

 鳥インフルエンザ。すっかり慣れて、報道での扱いが小さくなってしまったが、カンボジアの死者数8人は突出して多く、実は世界最悪の状態なのだ。

 幸いなのは、いずれのケースもまだ「トリからヒトへの感染」にとどまっており、「ヒトからヒトへの感染」が起きていないことだ。だが、毒性の高い鳥インフルエンザウイルスが、いつ「ヒト・ヒト感染」を引き起こす新型ウイルスに変異するか、だれにもわからない。

 ウイルスに国境はない。ヒト・ヒト感染がいったん始まれば、世界的な爆発的感染(パンデミック)の恐れもあるのだ。言うまでもなく、パンデミックは政治、社会、経済のすべてに致命的な影響を与える。カンボジアの感染拡大について、政府もメディアも国際機関も、もっとアラームを鳴らしてもいい、と思うのだが、それは煽りすぎなのだろうか。

 カンボジアで、今年1月下旬から2月末までに亡くなったのは、(1)17歳女性(タケオ州)、(2)35歳男性(コンポンスプー州)、(3)17カ月女児(コンポンスプー州)、(4)9歳女児(カンポット州)、(5)5歳女児(タケオ州)、(6)3歳女児(カンポット州)、(7)2歳男児(カンポット州)、(8)35歳男性(コンポンチャム州)。1月上旬に感染が判明した男児は回復している。

 カンボジアの地図を広げて見ていただければわかるが、1番目から7番目の犠牲者の居住地は、いずれも首都プノンペンから南下した州の農村地帯。同じ村や、1〜2キロしか離れていない地区から死者が出たケースもある。

 ただ、8人目の犠牲者、2月25日に亡くなった男性はプノンペンより北のコンポンチャム州在住。明らかにこれまでとは離れた地域だ。トリへの感染が、南部にとどまらず、広がっている可能性は高く、さらなるヒトへの感染拡大が懸念される。

 こうした農村地帯では、養鶏といっても庭先で数羽を放し飼いにしている場合が多い。病気になったニワトリを、それとは気づかず子供たちが触る可能性は高く、鳥インフルエンザ感染の死者には子供が多い。カンボジアでは、2005年に最初の犠牲者が出てから今回も含めて27人が死亡しているが、そのうち約7割が14歳以下の子供という。今回のケースも死者8人中5人が子供だ。

続きはこちら(ダイヤモンド・オンラインへの会員登録が必要な場合があります)