出版編

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業界トレンドNEWS Vol.164

出版編

大手書店が開始した出版社との関係見直しとは?縮小傾向が続く出版業界の動向をチェック!


■業界全体で電子書籍への取り組みをさらに加速。書店との関係見直しも今後の課題の一つ

出版科学研究所によると、2012年における書籍・雑誌の推定販売金額は、対前年比3.6パーセント減の1兆7398億円だった。ピーク時だった1996年(約2兆6500億円)に比べ、3分の2程度の水準にまで落ち込んでいる。内訳を見ると、書籍が対前年比で2.3パーセント減だったのに対し、雑誌は4.7パーセント減だった。

雑誌の退潮ぶりは、新規創刊点数の減少にも表れている。12年の創刊点数は前年より22少ない97で、47年ぶりに100の大台を割り込んだ。これに対し、休刊点数は150程度とされ、7年連続で休刊点数が創刊点数を上回っている。一方、書籍の分野では、単価の安い新書・文庫の割合が増えているのが懸念材料だ。また、一部のベストセラーが突出した売り上げを記録する一方、それ以外の作品が伸び悩む「二極化現象」も進んでいる。

縮小傾向が続く出版業界で、比較的明るさの見える分野が「電子書籍」だ。インプレスR&Dによれば、11年度における国内電子書籍の市場規模は629億円。電子書籍を読む端末の主役が従来型の携帯電話からスマートフォンに移り、いわゆる「ケータイ小説」などの需要が減少した影響などがあって、前年の650億円から微減となった。ただし、12年7月、楽天が日本向けの電子書籍専用端末「kobo touch」を発売。さらに、10月にアマゾン・ドットコムの電子書籍専用端末「キンドル」が日本に上陸したことで、端末や販売サイトが充実してきた。今後はこれらの専用端末をはじめ、スマートフォン・タブレットPC・携帯型ゲーム機といった「新プラットフォーム」が普及すると見込まれるため、電子書籍市場の拡大が進みそうだ。16年の市場規模は、現在の3倍以上にあたる2000億円程度に拡大すると予想されている。

こうした中、電子書籍に注力する動きはますます活発になっている。例えば講談社では、新刊本は原則的に、紙の本と電子書籍を同時発行する方針を発表。また、電子書籍への取り組みが遅れていた中小の出版社を支援するため、「出版デジタル機構」が共同設立された。主婦の友社、マガジンハウス、竹書房、双葉社などが活用を決めており、新規本・既刊本の電子化に拍車がかかると期待される。

不振が続く雑誌業界だが、新たな読者層を開拓する取り組みも盛んだ。例えば、幻冬舎が13年4月に創刊する『DRESS』は、40代のアラフォー独身女性がメインターゲット。この世代を対象にした雑誌はこれまでにもあったが、独身女性に絞り込んだ例は珍しい。また、『Tarzan』(マガジンハウス)、『LEON』(主婦と生活社)などに代表される、30〜40代男性向けファッション・ライフスタイル誌は、売り上げ好調な分野だ。このように、紙媒体に対する愛着が強く、消費意欲が旺盛な読者層にアプローチする動きには注目が必要だろう。

従来の出版業界では、定価販売を義務付け、かつ所定期間内であれば書店が出版取次を通じて出版社に書籍を返品できる「再販委託制度」が採用されてきた。しかし、大手書店チェーンの文教堂グループは、複数の出版社と「完全買い切り制」を開始。売れ残っても出版社に返品しないことを前提に、仕入れ価格を下げている。この方式は、出版社には返品のリスクがなく、書店側も売れる本を見極められれば利益率の向上につながる。こうした書店との関係見直しも、一つの焦点と言える。