石川遼にとって特別な場所となったプエルトリコ。だがそれは勝者の特別感とは少し違っていて…(撮影:ALBA)

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 プエルトリコ・オープン3日目を終えたとき、石川遼に尋ねた。「プエルトリコに特別なものを感じていますか?」なぜ、そんなことを尋ねたか?もちろん、プエルトリコでは石川に不思議なことが起こるからだ。
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 昨年は、まだ手にしていなかったマスターズ出場権を自力で掴もうと、はるばるカリブ海を渡り、会場入りした。その途端、マスターズ特別招待の報が舞い込み、そして最終日にはプレーオフを待つという米ツアー自身初の体験をした。結果的にプレーオフにはならなかったが、米ツアー自己最高の2位に食い込み、今季シード権獲得へと大きく前進した。
 そして今年。正式メンバーとなって挑み始めた5試合で4度の予選落ちを喫し、苦悩が続いていたのだが、プエルトリコでは予選通過どころか、3日目はホールインワンまで達成し、8位という好位置で最終日を迎えることになった。
 だから、特別感を感じるかと尋ねずにはいられなかった。すると、石川は、静かに頷き、こう答えた。「はい、感じざるを得ないです」
 自分にとってプエルトリコは特別な場所。どうしてだか、いいことが次々に起こる不思議な大会。そう思わざるを得ないのだと石川は語り、首位と6打差で挑む最終日は「優勝を狙える範囲内だと思う」と、きっぱり言い切った。それは、3日目に風の中で自在に操ることができた低い球への自信、フィール&タッチが合っていたショートゲームへの自信に裏打ちされた言葉ではあったが、「プエルトリコは特別」という得体のしれない感覚が、彼の胸の中で膨らんでいたことは言うまでもない。
 しかし、サンデーアフタヌーンに石川のその特別感はどこかへ消えてしまった。アイアンのスイングがバラバラになり、ピンに絡まず、「満足のいく内容じゃなかった。悔しい」。39位に沈み、唇を噛む結末になった。
 もう1つ、不思議なことが別の形になって起こった。初優勝を遂げたスコット・ブラウンは、石川が2位になった昨年大会でひっそりと5位になった選手だ。米ツアー2年目のブラウンにとって、その5位がキャリア最高の成績だった。そして今年、彼はそのプエルトリコで初優勝を遂げた。
 ブラウンの胸の中にも「プエルトリコは特別」という感覚があったのかどうか。石川に投げかけたものとまったく同じ質問を優勝の興奮が残るブラウンにぶつけてみた。
 「スペシャルと言えばスペシャルだね。でも、迷信みたいな特別感は感じていなかった。僕が感じていたのは、このコースが僕のゴルフに合っている、この芝が好き、だからプエルトリコはスペシャルという感覚。そして今週、僕のショット、パットは初日からずっと好調で、2日目も3日目も好調で、今日の最終日も出だしから絶好調で……そういう意味でスペシャルだった」
 アメリカ人は合理主義で現実主義。だからブラウンは迷信を信じないという面もあるのかもしれない。だが、ブラウンは自分の技術に絶対的な自信を抱いていた。“自分にとって最高レベルに噛み合っていたショットとパットを4日間持続できた”ということに特別感を感じていた。そんなブラウンにとって迷信めいた特別感の出る幕はなく、米ツアーチャンピオンになるべき自身の土台の強固さを実感しながら最終日に挑んでいた。
 それは、最終日にスイングを崩し、「完成度の問題。今までの僕は4日間のうち1日、バラバラになるのは自分にとって当たり前だと思っていたけど、今はそれがすごく悔しい」と振り返った石川との最大の差だったように思う。
 運命的な特別感を抱くことは私は素敵だと思うけれど、そこに完成度の高い技術と経験と自信がプラスされたとき、石川にとっての特別も優勝という名の特別に変わるのだろう、きっと――。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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