経営とファイナンスは表裏一体である。しかし、ファイナンスという領域は経理部門の人を除き、社長になるまでその重要性を認識していない人が多い。これは大きな問題である。

事業に必要なお金は、銀行や投資家に頼めばすぐ振り込まれるというわけではない。きちんと戦略や事業計画を立て、将来生み出されるキャッシュフローや借入金返済の確実性、自社の企業価値を説明できなければ資金調達は困難である。営業力や技術力だけではなく、財務面から見て「この会社に資金を提供してみたい」と銀行や投資家に思わせる努力を経営者はしなければならないのだ。

また、企業活動を行った結果は必ず会計に反映される。その数字を見て銀行や株式市場が反応し、次の資金調達をできるかどうかが決まってくる。このメカニズムを理解しておかなければ、資金調達が必要な事業などできない。

将来経営者を目指す人にはぜひファイナンスを学んでほしい。それにはここに挙げた本を読むだけでなく、興味のある上場企業の開示資料を実際に見ていくことをお勧めする。

いまではインターネットを通じて上場企業の開示資料が無料で簡単に入手できるようになっている。実物を見ることでわかることも多いし、企業の実体をかなり細かく知ることができる。私のメルマガでも、実例をもとに解説をしているのでぜひ読んでみてほしい。

■『132億円集めたビジネスプラン』岩瀬大輔
ビジネスプランの実例はあまり本になっていない。ライフネット生命創業者による本書は新ビジネスを考える際に参考になる。

■『起業のファイナンス』磯崎哲也
日本のベンチャーは財務の知識がなくて失敗する例が多い。これから起業する人が成功することを祈って執筆したもの。

■『ベンチャー企業の法務・財務戦略』宍戸善一
弁護士、公認会計士、ベンチャーキャピタリスト等が執筆。国内ベンチャー業界の状況と、将来のあるべき姿を伝える。

■『現代の金融入門[新版]』池尾和人
最新の金融論がわかりやすくコンパクトにまとめられている。世界的な金融危機の経験を踏まえた、旧版の改訂版。

■『ルワンダ中央銀行総裁日記 増補版』服部正也
1965年にルワンダ中央銀行総裁に就任し経済を立て直した著者の話。経済の本質がわかるうえ、冒険物語的にも読める。

■『借金を返すと儲かるのか?』岩谷誠治
どこをどうすると会計の数字が動くのかをイメージできる人は専門家以外には少ないが、本書を読むと全体像が掴める。

■『企業価値評価〔第4版〕上・下』マッキンゼー・アンド・カンパニーほか
企業の価値とはどのようなもので、それをどう評価するのかという手法について書かれた本。教科書として定評がある。

■『金融リスクマネジメントバイブル』東京リスクマネジャー懇談会
保険などさまざまな金融商品のリスクについてどう考えればよいかが述べられている。辞書的に活用するとよい。

■『永久差異』山田有人
著者は大原大学院大学教授。吉本興業の監査役も務め、世界の税務にも詳しい。企業の税務戦略について解説する。

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磯崎哲也事務所代表 磯崎哲也

1984年、早稲田大学卒。長銀総合研究所を経て98年ベンチャービジネスの世界へ。2001年独立。ビジスパにて有料メルマガ「週刊isologue」を配信中。

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(磯崎哲也事務所代表 磯崎哲也 構成=宮内 健 撮影=尾関裕士)