40代以上の「オトナ婚」の魅力とは?




40代、50代と年齢を重ねてから結婚をする「オトナ婚」が増えていると耳にします。ノンフィクション作家の衿野未矢さん(50)もその一人。東日本大震災の後、「誰かと一緒に暮らしたい」という気持ちが高まっていた衿野さんは、新潟県魚沼市小出郷文化会館館長の桜井俊幸さん(57)と2012年2月に結婚しました。オトナだからこそ楽しめる「オトナ婚」の魅力について、衿野さんにお話を伺いました。



■親は大喜び。周囲への波及効果が大きい



だんなさまとの出会いは7年前。魚沼でのマラソン大会に出席したことをきっかけに、そこで知り合った友人の紹介で衿野さんは桜井さんと出会いました。お互いを意識し始めたのは、仕事で上京した桜井さんと、たまたま飲み会で同席したときのこと。東日本大震災の約一か月後でした。

そこから東京と魚沼という遠距離恋愛のお付き合いが始まりました。



――お付き合いを続けるのではなく、「結婚」という形を選択したのはなぜでしょうか。



衿野さん 恋愛ゲームを楽しみたいのではなく、人生や生活のパートナーを得たい、家族が欲しい、と思ったからです。



――結婚を決めたときの、周囲の反応はいかがでしたか。



衿野さん まず、親は手放しで大喜びです。この年齢だと、結婚するというだけで身近な人たちにとっては大ニュースです。魚沼市長から、「衿野さんのおかげで魚沼は大騒ぎよ」と言われるほど地元は盛り上がっていました。



考えてみれば、オトナ婚世代の既婚者は、子どもの就職や結婚、更年期など、人生のターニングポイントを迎えているんですよね。

同世代の友人は、「この年齢になると葬式ばかりなのに、まさか同級生の結婚式に呼ばれるとは」、「結婚に限らず、自分の年齢でも、まだまだ可能性があるのだと元気づけられた」などと喜んでくれました。



夫も同様に、独身の友人知人から、「仕事ばかりで浮いた話などまったくなかった君でさえ結婚できたのだから、自分にも可能性がある」と、「希望の星」だと呼ばれているそうです。



■ドレスへの抵抗もなく、セレモニーを余裕で楽しめる



――どのような結婚式をされましたか。



衿野さん 式も披露宴も、それぞれ2回ずつ行いました。結婚式の1回目は魚沼市内の神社で荘厳な神前式を、2回目は新婚旅行先のフィリピン・セブ島からさらに船で1時間の無人島のビーチでウェディングドレスとタキシード姿での結婚式でした。



ドレスへの抵抗感? まったくありませんでしたね。式場やヘアメークの人たちも、ごく自然に受け入れてくれました。



こうして結婚式や披露宴イベントをとことん楽しめるということも意外な発見でした。若いカップルと違い、さまざまなセレモニーに出席した経験があるため、「どんな披露宴にしたいのか」を明確にイメージできます。



親や式場など周囲の言うなりになることなく、「したいこと」と「したくないこと」が判断できます。手伝ってくれる友人たちも経験が豊富だからスムーズだし、別料金のかかるオプションを強く勧めてくる式場と駆け引きをするのも楽しかったです。



――住み慣れた東京を離れ、地縁のない魚沼へ行くことに不安はありませんでしたか。



衿野さん 一人暮らしをやめて家族と暮らすことの方が私にとっては大きな変化でした。それに比べたら、住む場所が杉並区でも魚沼市でも、そう変わらないのではと思いました。

それに、「生粋の魚沼人である夫と自分が合うということは、魚沼の人たちの気質とも合うのではないか」という気がしていました。



■束縛や不自由な思いが、「安心感」に変化した



――「オトナ婚」の魅力とは、どういったところでしょうか。



衿野さん 結婚して気付いたのは、30代ぐらいまでは面倒に感じられたこと、例えば「家族がいて、自分の都合だけでは動けない」ことや、近所付き合い、親せき付き合い、それらの束縛や不自由が、「安心感」や「見守られている」感に変わったことです。それらが宝物だと気付けるのは、オトナならではだと思います。



――40代、50代の「オトナ婚予備軍」の皆さんへのメッセージをお願いします。



衿野さん オトナはライフスタイルや価値観がすでに出来上がっているから、「今更他人とうまくやっていけるだろうか、とても無理だ」と最初は不安でした。



しかし、実際に義父を含めて3人で暮らし始めると、社会生活で知らず知らずに身に付いていた、「人とうまくやっていくコツ」や、「人との距離のとり方」、「ストレスを発散する方法」などが、結婚生活である「他人だった相手との同居」や、「親せき付き合い」、「近所付き合い」などに活(い)きることに気付いたんです。



オトナ婚とは「男女とも40歳を超えてからの結婚」だと私は定義づけています。結婚してみると、「一緒に朝ごはんを食べる」や、「手をつないで歩く」といった、日常の小さな出来事に新鮮な喜びを感じている自分に気付き、「私にもそんな面があったのだ!」と驚くなど、発見が多々ありました。

40代、50代までに培ってきた生きるスキルは、本人が感じている以上に大きい。「20代、30代の自分とは変わっていることを計算に入れて、これからを考える」ことができれば、人生が違うふうに見えてくるのではないでしょうか。



交際を始めた当初、「私は独身主義者だから結婚はしない」と断言していた桜井も、今は「結婚して幸せになれた。がぶり寄ってくれてありがとう」と言っています。慣れ親しんだ環境を変えることをためらってしまう年齢ではありますが、いざ踏み出してみれば、オトナだからこそ、うまくやっていくことができる。「自分のこれまでの人生は、決して間違っていなかったな」と感じさせてくれるのが、オトナ婚だと思います。



――ありがとうございました。



成熟世代だからこそ味わえる、「結婚することの充足感」が伝わってくるお話でした。年齢を重ねても「結婚」という選択肢があり、周囲がそれを祝福する時代。そのスタイルは、これからどんどん増えるような予感がします。







取材協力:衿野未矢氏。作家。現代人の心の奥底にせまるノンフィクション作品を、精力的に発表し続けている。モットーは、「依存症や不倫など、表に出にくい現象にこそ、人間や社会の本質があらわれる」。ランナーであり、落語家でもある。『十年不倫』(新潮文庫)、『セックスレスな女たち』(祥伝社黄金文庫)、『「子供を産まない」という選択』(講談社)など、著書多数。



(尾越まり恵×ユンブル)