数学は、実際のところ何の役に立っているの?




理系に進んだ人なら、仕事に数学が活かせるケースも多いでしょう。しかし、文系に進んだ人などは、社会人になると同時に触れる機会はほとんどなくなってしまいます。「あんなに苦しい思いをして勉強したのに……。

数学って結局何の役にたつの?」と、疑問に思うこともあるのではないでしょうか。そこで今回は、実社会で数学がどのように役立っているのかということについて、大学では数学を専攻し、社会人になった今でも数学が大好きというAさんにお話をうかがいました。



■三角関数は山の高さを測るときに役立つ



サイン、コサイン、タンジェントというフレーズに、聞き覚えはありますか? 三角関数がイマイチ理解できず、数学が嫌いになってしまったという人は多いと思います。数学が苦手な人にとっては、何をしているのかさっぱりわからないこの呪文は、一体何の役に立つのでしょうか。



「例えば、山の高さを調べるときには、三角関数を利用します。標高がわかっているふもとのある地点をA、そして高さを調べたい山の頂上をPとしましょう。そうすると、AとPを結ぶ直線を斜辺とする直角三角形が描けます。



この直角三角形の斜辺の長さをa、Pから真下に向かって伸びる直線の長さをb、斜辺と水平面の作る角度をαと名付けておきましょう。三角関数の公式『b=a×sinα』に、実測したaとαの値をあてはめて解けば、bの長さがわかります。ある地点Aは標高がわかっていますので、地点Aの標高にbの長さを足せば、山頂の標高がわかるというわけです」



■過去のことを計算するには、マイナスの概念が必要



中学生になって数学でつまずくポイントのひとつに、「マイナス同士の掛け算」があります。マイナスとは何かよくわからないうえに、なぜマイナス同士を掛けるとプラスになるのでしょうか?



「マイナスの数同士をかけ算すると、答えがプラスになるというのも、数学が苦手な人にとっては理解が難しいようですね。『鉛筆が-10本』と言われても、ゼロ本以下の鉛筆など、想像ができません。



例えば、自社の業績をグラフに表したとしましょう。通常のグラフなら、横軸には年を、縦軸には売り上げをとりますね。毎年売り上げが1千万円ずつ増加していれば、グラフはきれいな右肩上がりとなります。そうすると、『業績の伸びは順調だ!』と思えるでしょう。



しかし、時間ならどうでしょうか。みなさんは2時間前、どこで何をしていましたか? この2時間前というのを数字で表現するとしたら、-2時間ということになります。



そこで、マイナス×マイナスについて考えてみましょう。時速50kmである地点から東に向かって進んでいる自動車があります。この自動車は、2時間後にはAから東に100km進んだ、つまり+100kmの地点にいることになり、式にすると『50×2=100』です。それでは、同じく時速50kmの早さで、この自動車が西に向かって進んだらどうでしょう。東向きに進む際には、時速が+50kmですので、反対側の西に進むなら、時速-50kmということになりますね。



それでは、この時速-50kmで進む自動車が、-2時間後(つまり2時間前)にいる地点はどこでしょうか? 西を向いて走っている自動車が2時間前にいた地点ですので、現在の位置から東に100kmの位置ということになります。これを式に表すと、『(-50)×(-2)=100』と、答えがプラスになるわけです」



■「平均」年収には要注意



物理や数学の知識が必要な職業に就いている人以外は、日常的に数学を駆使することはあまりないかもしれませんが、この世の中には、数学があふれているようです。知っておくと得する話も教えていただきました。



「統計や確率の分野は、仕事や日常生活との結びつきが強いかもしれません。例えば、平均です。求人広告などで、『社員の平均年収○○○万円』と書かれていることがあり、『入社したら、自分もこれぐらいもらえるのか』と思うのではないでしょうか。



しかし、ほとんどの場合、実際にその企業の一般社員がもらっている年収は、平均年収を大きく下回っているのです。例として、社長が9,000万円、役員2名が各5,000万円、一般社員50名が各400万円ずつ年収を受け取っている会社について考えてみましょう。



平均年収を計算してみると、約736万円となります。しかし、実際に一番たくさんの社員がもらっている年収額は、一般社員50名の400万円です。これを最頻値(モード)と呼び、すべての数値を順に並べて、そのちょうど真ん中にあたる数値を中央値(メジアン)と言います。この企業の場合なら、メジアンは一般社員の400万円です。つまり、一般社員としてこの企業に入社すると、年収400万円程度の待遇になるという線が濃厚です。



このように、平均値ではなく、最頻値や中央値が重要な意味を持つケースもあります」



■数学的に考える力は、ビジネスでも大いに役立つ



数学で学んだことが日常生活で活用されていることはわかったのですが、実際に使うことはほとんどありません。どうして勉強しなくてはならなかったのでしょうか。



「簡単な計算さえ身に付いていれば、数学ができなくても日常生活で困ることはないでしょう。ただ、何かの現象についてその理由を説明したり、対象同士を比較したり、仮説が正しいことを証明したりするためには、数学が必要になるのです。



ビジネスの世界や日常生活でも、『数学的な考え方ができること』はとても重要だと思います。学生時代に数学を学ぶのは、こういったことを身に付けるためだと言えるでしょう」



学生時代には「大人になってから、どうせ使うことなんてないんだから……」と、授業を適当に聞き流していた人も多いはず。そんな方も教科書を引っぱり出してきて、復習してみてはいかがでしょうか。現在の仕事に活かせる知識が見つかるかもしれません。



(OFFICE-SANGA 森川ほしの)