仕事がきつく、残業が多いうえに残業代も払われないなど違法性が高い「ブラック企業」に、カジュアル衣料大手の「ユニクロ」があたるのではないか――。驚異の成長が称賛される一方で、これまでそんなネガティブ報道もチラついていた「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが、事実上こうした批判を受け止め、態勢の見直しに本腰を入れることを明らかにした。

まず、新卒採用後の配属を適材適所の「人物本位」に転換する。サービス残業も、同社の柳井正会長兼社長が「サービス残業は会社を潰す」と、積極的になくす努力をするよう、檄を飛ばした。もう「ブラック企業」とは言わせない、というわけだ。

元社員、「ユニクロ一色の生活」と証言

週刊東洋経済(2013年3月9日号)は、9ページにわたって「ユニクロ疲弊する職場」を特集した。「ユニクロ」が抱える問題点を、正面から「告発」する異例の内容だ。

そこには元社員のコメントとして、「日曜日は毎週徹夜でした」、「とにかくマニュアルを覚えることと、大量の業務に追われていました」との声が綴られ、「ユニクロ一色の生活」を送っていた、と振り返っている。

新卒で入社して、早ければ半年で店長として店を任せたり、海外で活躍する機会を積極的に与えたりするのが同社の方針で、新入社員はそれを目指して日々勤めている。

もちろん、半年で店長になれたり、海外勤務に就けたりする人材は限られている。そして、店長になったとしても、「名ばかり店長」の可能性もある。記事によると、ユニクロは店長の月間労働時間の上限を240時間に定めている。違反した場合には降格などの懲戒処分がとられるが、実態としては240時間以内に業務を終えるのは困難で、サービス残業になっているという。

ユニクロの新卒社員が3年以内に離職する割合は、じつに5割前後にのぼるというが、こうした過酷な労働条件に耐えられず、辞めていく人が少なくなかったことをうかがわせる。

この特集を、ファーストリテイリングはどう受け止めているのか、J-CASTニュースが改めて聞いたところ、「(サービス残業が)過去にまったくなかったということはありません」と、認める。実際に240時間を超えて勤務した店長に、降格などの処分を下したこともあるという。

柳井氏はこれまでもことあるごとに「サービス残業は会社を潰す」と言っており、今回の特集記事後も改めて社内でその旨を強調したようだ。

さらに同社は、新卒採用後の配属先について見直しを決めたことを明らかにした。これまでは採用後、約半年間の研修を経て「店長資格」を取得させ、ほぼ全員を店長として各店に配属してきた。

それを今後は「店長資格は取得してもらいますが、その後の配属は適材適所を考え、たとえば本部スタッフとして配属することもあります」と話している。

2014年入社の新卒学生から適用する。

今後は人材の「ケア」にも力を入れる

「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは、「英語公用語」を打ち出していることなどもあって、受験可能な学生が限られ、大学生の「就職人気ベスト100」に入ることは少ない。しかし、きわめて知名度の高い企業であり、国際的にも活躍したいと考える学生には人気の就職先だ。2013年2月8日、同社が東京・六本木で開いた新卒採用イベント「ユニクロ・ジーユー希望塾」には、800人もの学生が集まった。

上場企業であり、成長力もあって、給料も悪くない。「若手に海外で活躍する機会を積極的に与えていることが学生には魅力的に映るし、身近で、なじみがあることも人気の要因」と、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はみている。

ユニクロによると、「(今回の週刊東洋経済の報道がきっかけで)内定者が辞退したり、採用方針への問い合わせがあったりすることはありません」という。

同社は「(若いときからの店長経験や海外経験を)チャンスと感じ、自分の力を試してみたいと思って頑張っている学生が多いのも事実です。その一方で、入社時に意欲をもっていても、国内勤務の段階で辞めていった人や国内でも転勤のない職場を希望して辞めていく人もいます。ただ、これまでは人材育成ばかりに目を向けていましたが、今後はケアの部分にも力を入れるよう、改善していきます」と話している。