ヤンキースとイチロー・スズキの2年契約を理解するには、昨年9月の彼になにが起こったのかを知っておかなければならない。衰えたアイコンだった彼が、シーズン終盤の16試合ではポストシーズン進出の原動力となり、大人気のスーパースターとして生き返った。

彼らは、イチローがその16試合で記録した打率.394、出塁率.405、長打率.563を、今年の162試合でも続けられるとは期待していない。そして「彼はその理由を見つけなければならない。そうしないと、ヤンキースでの最初の51試合を無視して、シアトルでの最後の1年半に言及することなく、1年に直すと1週間だけの素晴らしい週を、彼は過ごしたことになる」より重要なのはこれである。

準備は良いだろうか? イチロー復活の秘密は・・・

「野球っていうのは、良くなったとか、悪くなったとかの理由を、ピンポイントで説明するのが難しいスポーツだから」彼は通訳のアレン・ターナーを通して言った。「陸上競技みたいにタイムがあって、それを元にもっと良いタイムを出すことができるっていうのではないんだ。野球っていうのは、そういうスポーツ」

「それが無意識的なもので、特別なことは何もないっていう彼の意見には賛成する」ケビン・ロング打撃コーチは言った。

そうなのか。

ならば、短期間のヤンキース選手だったイチローが、他にも大勢いた選手の中で、複数年契約を結んだ唯一の選手に変わったことの説明を求めるのなら、あらゆる要素を見なければならない。それは彼の人気を理由に、オーナーグループは熱狂的なサポートをして、そして野球部門の経営者側は、代わりになる他の選手が気に入らなかったために、強行に反対しなかったことだ。

それと共に、ここにいることを本当に喜んでいるその選手との契約は、ファンが後押ししたようにも見える。それは2013年のヤンキースにとって、小さなことではない。

「ニューヨークにきた時、ファンがとても暖かく僕を歓迎してくれた」イチローは言った。「それが僕の、野球に対するエネルギーになって、僕を助けてくれた。だけどヤンキースファンっていうのは、試合の楽しみ方を見ていると、とても洗練されていると感じる。彼らは表面のことだけではなく、中身を見ている。プレー内容に注目しているんだ」

確かに、「もっとホームランを打て!」と叫ぶヤンキースファンが、イチローと彼のスモール・ベースボールのエッセンスが加わったことを歓迎した。当然、出塁して初めてスモール・ベースボールができる。そしてイチローはシーズン終盤の追い込みで、2012年の出塁率を.307に押し上げた。しかしそれでも、昨年600打席以上の選手82人の中で71番目だった。

ヤンキースは、今冬のフリーエージェントを見渡したが、気に入らなかった。彼らは 毎日プレーできるだけの十分な能力をもった12人の外野手を見極めたが、すべてのチームが外野手の補強を見据えていたなかで、可能性は限りなく低かった。2014年の総年俸額を189百万ドル以下に抑えるというヤンキースの目標が、これらの選択肢のほとんどを消し去った。

1年あたり6.5百万ドルのイチローは、並べてみると極めて入手しやすいものだった。もし彼が出塁率を、2010年に記録した.359には届かなくても、.320前後にまで上げることができて、そして堅実な守備で貢献すれば、ヤンキースはその費用対効果に感激するだろう。

ロングは、9月の熾烈な優勝争いのなかでプレーしたことが、10回のオールスター選手であるイチローのためになったと信じていると語る、多くのヤンキース関係者の一人だ。

「その時期に意味のある試合をしていなかった彼にとって、それは違うものだった。彼はどれくらい長く、そこから遠ざかっていたんだっけ?」ロングは私に尋ね、私は2003年からだと答えた。「私は、それがかなり影響したと思う。みんなが見たのは、スポットライトを浴びる一人の選手が、意味のある試合を楽しんでいた姿だと思う」

彼はまた、新しいチームメイトを高く評価している。

「初めてヤンキースにきた時、ここはすごくシンプルな目標を持っていて、その目標にみんなのエネルギーが向かっているって思った。みんなが持っている野球に対するその姿勢を僕は好ましく思ったし、楽しんだ」イチローは言った。「それに試合後も、勝ちや負けに対する試合後の捉え方も、彼らはすごく上手くコントロールしていた」

「それは、僕がクラブハウスやチームに求めていたもので、それが現実に存在するなんて知らなかった。クラブハウスってこうであるべきだと思うような、理想的なクラブハウスを見つけることを諦めかけていたけど、去年見つけることができた。それがここだったんだ」

彼が見つけた新たな幸せは、おそらく彼個人と球団全体の流れを、上向きにすることができる。そしておそらく彼は、倹約を進める新しいヤンキースにとって大バーゲンであると証明するだろう。

それでもまだ、昨年の9月に彼がどのようにして復活したのかを知りたいと思うだろうか?

参考記事: Secret behind Ichiro's late-season streak an unsolved mystery for Yankees By KEN DAVIDOFF NYPost.com