女性が働きやすい環境づくりを企業に促し、経済活性化を目指す

写真拡大

WOMAN’S CAREER Vol.105

埼玉県庁 本谷直美さん

【活躍する女性社員】女性が働きやすい環境づくりを整え、経済活性化を目指す本谷さん


■子育て経験、子どもがいることによる生活感覚を仕事に生かすことができる

人口約720万人を擁し、人口の密集する大都市から過疎などの課題に取り組む中山間地域まで多様な住環境や産業を持つ埼玉県。同県はこの環境を「日本の縮図」ととらえ、再生可能エネルギーの活用や女性が働きやすい環境の整備、健康長寿社会の実現など、全国に共通するような大きな課題にも挑戦する取り組みを行っている。本谷さんも、これらの取り組みを担う一人だ。
「入庁前の県職員に対するイメージは、決められた仕事を淡々とこなすというもの。確かに県税の課税・徴収など法律に基づいて進める仕事もありますが、実際は自分たちでアイデアを出しながら世の中にある課題にチャレンジできる仕事もたくさんあることを実感しています」

本谷さんが現在携わっているのは、県の三大プロジェクトの一つである「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」。生産年齢人口が減少している中、女性が活躍できる環境を整えることにより消費を拡大し、経済を活性化することを目指す取り組みだ。本谷さんはプロジェクトの推進部署として2012年4月に設置されたウーマノミクス課で、課のメンバーと共に一から取り組み内容を描き、推進している。まさに、「自分たちでアイデアを出しながら世の中にある課題にチャレンジ」する仕事だ。
「配属時点で決まっていたのは『女性が働きやすい環境づくりを行う企業を認定する“多様な働き方実践企業認定制度”の創設』『企業内保育所の整備促進』などの大枠だけ。これらを具体的な形にするべく、私のグループは『多様な働き方実践企業認定制度』の認定基準や認定の時期・頻度などの詳細を検討することから始めました。そして現在は、認定可能性のある企業を訪問して活用状況などをヒアリングし、2カ月に1回認定を行っています。また、12年7月に施行された改正育児・介護休業法により従業員数100人以下の企業にも短時間勤務制度の導入が義務づけられましたので、民間の事業者に委託して県内企業のうち約2000社を訪問し、制度の導入・活用を働きかけています。これらの取り組みをはじめ、女性が働きやすい環境づくりを推進するための各種取り組みがスムーズに進むよう進行管理を行うのが私の役割です」

そんな本谷さんも、入庁後約10年間は県税の課税・徴収、滞納整理など「法律に基づいて進める仕事」に携わっていた。「法制度に基づき役割を全うする」という状況から、特段法制度の縛りはなく、アイデアを出して課題にチャレンジするやりがいを強く実感するようになったのは入庁12年目。南西部地域振興センター(朝霞[あさか]市)で管内の7市町の防災・防犯業務を担当したときだった。自らの判断で管内の自主防犯活動組織「わがまち防犯隊」の広報を強化。その効果を目の当たりにしたのだ。
「県下に5000以上ある『わがまち防犯隊』の活動に必要な費用を市町村を通じて補助するのが県の役割ですが、誰に見られるでも褒められるでもない中、隊員の皆さんが自発的に活動されることで地域の防犯が支えられていることに感動し、ただ金銭面で補助するだけでなく、地域の防犯により効果的で、隊員の方々がよりいっそう活躍できることをしようと考えたのです。防犯隊の活動を県民の皆さんに紹介する機会をこれまで以上に多く作ろうと、予算内でできる限り取材させていただいて県のホームページなどで紹介しました。すると、取材にうかがった先での意見交換を通じて隊員の方々の士気がさらに高まったり、他媒体から掲載内容を紹介したいという問い合わせを頂くことができたのです。また、県全体でも犯罪件数が減少していたので、その一翼を担うことができたように思います。私たちの仕事は工夫次第でさらなる効果を生むことや、そこでの自分の責任をあらためて認識することができました」

その後も、同センターが取り組んでいた地域振興事業の担当として管内の商工会やNPO、市町と協力してイベントを企画するなど、課題にチャレンジする機会を得てきた。そして現在も、ウーマノミクス課で日々女性が働きやすい環境をつくるための事業を行っている。「多様な働き方実践企業認定制度」などの取り組みを始めて約1年。今後の課題も見えてきている。
「訪問した約2000社のうち75パーセント近くは短時間勤務制度を導入できていますので、あとはどれだけ活用してもらえるかが課題。女性の育児休業取得率が8〜9割に及んでいるのと同じように、これからは短時間勤務制度を利用して女性が子育てをしながら働くことが当たり前になるよう、そして、女性がキャリアを継続できるよう管理職や男性社員の方々に理解していただく取り組みにも着手していきたいと思っています」

企画を考える際に根底にあるのは、南西部地域振興センター時代をはじめ、県税の課税・徴収や滞納整理を担当する県税事務所など県民と直接接する機会の多い地域機関での経験だ。
「県民の皆さんのお声に直接触れたことで、『“それなら税金の払いがいがあるな”と県民の皆さんから思っていただける仕事をしなければならない』という意識が自然と身についていったように思います。一生懸命取り組んで、必ず県民の皆さんに貢献しなければという気持ちは常に持っています」

また、結婚や出産と仕事との両立を考えて転職したことや、子育てを経験したことも今の仕事に大いに生きているという。
「自分の経験を通じて、現在担当している事業の必要性を身をもって感じています。また、子育てをしながら働いてきた一人の生活者として、仕事と子育てを両立する女性の思いや、そんな女性たちに必要な配慮も理解できますし、学校行事やPTA活動に参加したり近所の方と話したりする中で感じた感覚やニーズから離れずに発想できるなど、自分の経験や生活感覚を生かすことができている実感があります。県職員の仕事は県民の方々のために取り組むものですから、子どもがいることによる生活感覚を生かすことができるのはウーマノミクス課の仕事に限りません。子育てに忙しい時期は大変でしたが、今は仕事をする上で子どもがいることは決してマイナスではなく、むしろプラスなんだと強く感じています」