宮部みゆきインタビュー、最新作『桜ほうさら』に込める思いは“家族だけが世界の全てではない”

宮部みゆき氏の最新刊『桜ほうさら』がPHP研究所から刊行された。今回は宮部作品でもファン待望の時代小説。

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主人公は御家騒動に巻き込まれ、切腹した父の汚名をそそごうと江戸へ出てきた古橋笙之介(ふるはし・しょうのすけ)。江戸深川の長屋に暮らしながら、父が切腹する原因となった偽文書作りをした人物を探す笙之介の周囲では次々にミステリアスな事件が起こっていく。
また、謎解きに彩りを添えるのが謎の美少女・和香の存在。おとなびた和香とおっとりした笙之介の初々しい恋模様も描かれている。
人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語。

 

【宮部みゆきインタビュー】家族の難しさを実感して

――笙之介は切腹した父を尊敬していましたが、母親、兄とは確執がありました。同じように和香と母親も、少し問題を抱えています。親子関係を描きながらも、家族愛を前面に押し出さなかったのはなぜなのでしょうか。

【宮部】 家族の問題を意識するようになったのは、絆を見直そうという気運が高まった東日本大震災後です。家族が大切なのはよく分かりますが、家族は万能薬ではありません。笙之介が家族のトラブルで辛い経験をしたように、血が繋がっているからこそ、しがらみが生まれ、離れられないままお互いに不幸になっていく場合もある。

ニュースを見るだけで、その現実を嫌というほど突き付けられています。だから、たとえば親を愛せず、親から愛されないとしても、それだけで人として大切なものを失っているわけではない、家族だけが世界の全てではない、と言いたかったんです。

――それは、長屋ものを書き続けていることと関係があるのでしょうか。 

【宮部】 江戸ものが楽しいのは、他人なのに家族のような関係の長屋の住人たちの姿を書けるところです。最近は、シェアハウスを舞台にした現代小説も増えていますが、これらも、家族の意味を問い直そうとしているのかもしれませんね。

(聞き手=末國善己、『文蔵』2013年3月号【特集】宮部みゆき「時代小説」の世界 より一部抜粋)

『文蔵』公式サイト http://www.php.co.jp/bunzo/

【著者プロフィール】
宮部みゆき[みやべ・みゆき]
1960年、東京生まれ。87年、「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。92年に『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞、93年に『火車』で山本周五郎賞、99年に『理由』で直木賞を受賞。他には、時代ものに『初ものがたり』『あかんべえ』『孤宿の人』『ばんば憑き』「ぼんくら」「三島屋変調百物語」の両シリーズ、現代ものに『小暮写眞館』『ソロモンの偽証』などがある。

【商品情報】
■発売日:2013年2月27日
■判型:四六判並製 
■ISBN:978-4-569-81013-3