柴田知栄(しばた・ちえ)  1967年生まれ。中央大学法学部卒業。第一生命入社後、国際企画部(ニューヨーク勤務)を経て、96年から営業職員に。1999年度から13年連続で第一生命の契約高1位を記録している。特選営業主任は、第一生命4万人の営業職員のうちトップクラスの営業職員に与えられる資格(2013年現在7人)。MDRT(世界百万ドル円卓会議)会員、トップ・オブ・ザ・テーブル会員。現在、第一生命保険株式会社 特選営業主任。

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「保険営業は、2000件断られてはじめて一人前」。……一人前になるより先に心が折れてしまいそうな数字だが、セールスパーソンのなかでもトップクラスになると、「やればやるほどおもしろい」という境地に達するものらしい。それは、人と人とのつながり、経験と経験のリンクによってより広く深くなったネットワークの力を感じられるようになるからだ。
前回にひきつづき、今回のゲストも第一生命の契約高1位を記録している柴田知栄さん。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)なんか使わなくても、リアルなネットワークを存分に活かしている彼女の仕事ぶりには、人間という社会的な生き物が形づくる「ネットワーク」なるものに思いを馳せるうえで示唆に富むポイントが満載だ。

経験を積み、パターンを入力していくと、ネットワークが構築される

武田 商談の席を頂戴した企業が1000を超えたあたりから急に、なんだか勘が当たるようになった感じがあって……。なんで先の展開が予感できるのか、最初のうちは不思議だったんですけど、あぁこれは、きっと僕の頭のなかでパターンが蓄積されてきたからなんだなと気づいたんですね。

柴田 そういう経験は保険営業でもよくあります。私は先輩に「2000件断られてはじめて一人前」と言われました。それだけの数の経験を積むと、断りにもある程度慣れ、断られ方・気持ちの切り替え方・話の進め方・お客さまとの距離のとり方なども感覚的につかめるようになってきます。

武田 前回の対談の「いまは受注できなさそうだから、笑わせて帰ろう」という判断もそうですよね。どこからモードをシフトするかなど、知栄さんのなかに積み重なった経験が、意識される前に行動として表れるのではないでしょうか?

柴田 そうですね。体で覚えている感じです。「習慣は第二の天性」と言いますが、まさにそれだと思います。

武田 私も部下に、抽象的な理論も大切だけど、具体的なテクニックの習得から見えてくる本質もあると伝えています。何千件と経験して、先の展開が予測できるようになるというのは、経験によって記憶されたノード(点、接合点。ネットワークを構成するふたつの要素のうちのひとつ)が増え、それらをつなぐリンク(線。ノードとノードをつなぐ、ネットワークのもうひとつの要素)が発達して、自分のなかに自然とネットワークが構築されるのを待たなくてはならない。それまでの道のりは長い。

 でも一度ネットワークが意識されるようになると、ひとつの商談で得られたたったひとつのサイン(情報)でも、ネットワークとつなげて考えてみれば、全体の流行の変化を告げる重要なサインになるかもしれない。だから、営業はやればやるほどおもしろくなる。

 営業という行為を、ネットワークをクリエイト(創作)しようとしている行為なのだと定義してみると、一社一社、一人ひとり、また、一つひとつの情報(商談での経験)ですら単なる思い出ではなく、リンクを光らせ、ネットワークを輝かせる重要なノードに見えてきます。

 このネットワークの感覚を知ってみて、営業活動を魅力的な舞台にできるなと実感しました。営業は断られるつらさばかりが目立ったり、業種によっては自社のサービスが実際に使われている様子を知る機会が少なかったりと、いろいろな苦労もついて回りますが、やっぱり自分を育ててくれる仕事ですよね。

柴田 ご契約いただく際の独特の緊張感がいいんですよね。何とも言えない高揚感があり私は好きです。

武田 企業と企業、人と人の間を貨幣が流通するでしょう?それで経済は回っていく。現在、私たちの生活を支えるさまざまな商品やサービスは、それぞれ貨幣の流通を通して運ばれているわけです。営業という役割は、経済活動のなかにあって、みんなの期待を乗せた貨幣の道を新たに切り拓いていく仕事だと思うんです。

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