部長で終わる人、役員に上る人、係長にすらなれない人【2】

■「引き上げられやすい人」の条件は?

【近藤】挨拶と愛嬌が基本ですね。プラスアルファで主体性がほしい。役職が上にいくほど孤独だからエレベーターで声をかけられるだけでも嬉しいもの。煙たい上司や、直属の上司ではない人にでも「おはようございます」と元気に挨拶すべき。挨拶すらできない人が出世したのを見たことがありません。

【坂田】少しでも言葉を交わしておけば、覚えてもらって何かのときに助けてくれるかもしれません。金魚のフンみたいにくっつく必要はないけれど、自分を引き上げてくれそうな上司には折に触れてコミュニケーションをとっていくべきだと思います。

【八巻】といっても、お中元やお歳暮は逆効果。

【坂田】モノをもらって喜ぶ人についていっても将来はないわね。その人はもらって終わりですよ。いざ自分が危なくなったときにかばってくれるかといったら、たぶん一番に切り捨てられてしまう。

【近藤】モノより情報のやりとりだよね。若い人は何を考えているのかを知りたい上司もいるし、逆に「教えたがり」の男も多い。

【八巻】愛嬌でいえば、とにかく笑顔。何か頼まれたときに笑顔で「ハイ! やります」と引き受ける人がいい。「僕はこんな仕事をやるためにこの会社に入ったんじゃありません」という表情をする人は、重要な仕事も任されなくなっていくものです。

【近藤】なついてくる人はかわいく感じるのが人情だよね。指示されたことをこなすだけでは引き上げてもらえない。

【坂田】主体性に関しては、社風を考慮したほうがいいと思います。弊社は古い体質なので「上に言われたことを真面目にやる人が出世する」社風です。とくに若いうちは発想力よりも黙って仕事をする人が評価されます。

【近藤】意見を言わないと生き残れない外資とは大違いだね。

【坂田】主体性がありすぎてもなさすぎてもダメなのです。自己アピールが強い若手は上層部からは面白がられますが、周囲の支持が得られずに上がれない。かといって完全な指示待ちでは目立たずにチャンスが回ってこない。

【八巻】指示待ちではなくても、呑み込みが遅い人、決断力がなさすぎる人はチャンスを逃しやすいですね。私の同期で10人中唯一係長になれなかったのがこのタイプの男です。考えすぎる人は係長にすらなれません。

【坂田】結局、ほどよく気が利いて真面目でチャンスを逃がさない「真ん中の人」が出世していきます。つまり、要領がいい人ですね。

【近藤】1つ注意してほしいのは、派閥は両刃の剣だということ。あまり若いうちから特定の派閥に入ると、鉄砲玉として使われて終わってしまいかねない。いろんな派閥から声がかかるようになったら、自分は順調に出世コースを歩んでいると思っていい。でも、少なくとも30代前半までは派閥にはどっぷり入らないほうが無難だよね。

【坂田】引き上げてもらえる人の条件として、日本では「場の空気を読む」ことはやはり重要だと思います。例えば、みんなで楽しく飲んでいるときに難しいビジネス書を持ち出して、「僕はこういう本を読んでいる」と話し始める人。「おまえだけ何を気取っているんだ?」と思われますよ。そういう人は飲み会にもゴルフにも誘われなくなります。

【近藤】周囲はお構いなしで自分の話をしたがる「オレ様君」や「構って君」が多いよね。

【八巻】自分だけにスポットライトを当ててほしい人ですね。他の人が話し始めるとつまらなそうにする。

【近藤】興味がなくてもあるような顔をして聞いていればいいのにね。

■外見はどうですか

【近藤】ファッション誌から抜け出したような服装はむしろしないほうがいい。おしゃれすぎると「女好き」「軽い男」とみなされて女性からは嫌われます。仕事場なんだからオーソドックスな色と形のスーツを選ぶべき。

【八巻】私は必ずネクタイと靴下と靴を見ます。ネクタイが妙なセンスな人はまずダメですね。

【坂田】勝負時は赤のネクタイと思い込んでいる人が同僚にいます。アメリカ大統領じゃあるまいし(笑)。あまりに真っ赤なのでプレゼンテーションの場でも浮いてしまい、肝心の話が頭に入ってこないと陰口を言われています。

【近藤】いざというときの1本にするならばポルカドット(小さめの水玉模様)のネクタイが鉄則。そして、きちんとしめること。

【八巻】つま先やかかとがすり切れていたり、毛玉がある靴下はNG。もちろん、黒い靴に白い靴下なんて論外。

【坂田】素敵なスーツ姿なのに、後ろ姿を見たらズボンの裾がほつれていてガッカリしたことがあります。「奥様にお見送りされていないんだな」とまで思ってしまいました。

■「絶対出世しない」タイプは?

【近藤】キャリアに傷をつけたくなくて巧妙に責任逃れをする人。出世競争に興味のない女性にとっては、そういうのが見えてしょうがない。陰で言ってますよ。「あの人は卑怯だ」「タヌキだ」ってね。

【坂田】失敗したときに矢面に立ってくれて、「今回は負けちゃったけど、おまえはがんばったな」と努力を認めてくれる人は部下の支持を得て伸びていきます。史上最悪だったのは、「ごめんね。やっぱり女性に頼んじゃいけなかったな」と言った人。そういう失言があると、女性はワァーッと話しますので、社員食堂で、トイレで、給湯室で、その日のうちに広がる。彼の評判は一気に下がりました。女性に嫌われると将来の希望は絶たれます。

【八巻】上司が部下の悪口を言うのは絶対にNG。部下を悪く言うと自分にはね返ってくることがなぜわからないのか。

【近藤】管理職なのに陰口を言う人は出世しないね。以前、私とポジションを争った男性がいました。職歴も学歴もその男性が上なのに、なぜか私が選ばれた。経営層が後で「彼はあまりにも噂好きすぎる」と理由を言っていました。

【坂田】守秘義務すら守れないハイリスクな人だと思われたんでしょうね。私は一度、ある上司の噂話を他社の人から聞いたことがあります。本人と一部の人しか絶対に知らない内容だったので、誰が話したのかがすぐわかりました。

【近藤】口が軽すぎると信頼がガタ落ちになるね。

【八巻】細かい話ですが、お金にセコイ人は大きくは出世しないと思います。公私混同して領収書をもらいまくったり、部下と食事したのに1円単位まで割り勘にしようとしたり。仕事ぶりも見えてしまいます。

【坂田】自分はどのような職業人になりたいのかを考えず、「かしずかれたい、給料を上げたい」というだけのモチベーションで出世したがる男性がいまだに多いのに驚きます。今の時代、出世=高給ではないと思うのです。業績が下がると上のほうからボーナスがカットされていく。出世には責任とリスクが伴います。

【近藤】外資はボーナスカットどころじゃない。トップが代わると管理職は総とっかえになることも。私はそれでも決定権があるほうが仕事が面白いから努力して出世してきた。

【八巻】「出世して何をしたいのか」というミッションがない男性は多い。それでも頭脳とスキルがあって上にゴマをすれればある程度は出世できるんだよね。

【近藤】でも部長止まりでしょう。役員にはなれないね。

【坂田】どのコースで出世したいのかを考えるべきだと思います。現場のプレーヤーとして頂点を極める道もあります。社長になりたいのなら独立したほうが早道かもしれない。それを考えず、同期が先に課長になったぐらいで悔し涙を流している人には呆れます。

【近藤】「なんであいつが」なんて言う人は、仕事や会社の本質が見えていない証拠。だからあんたは出世できないんだよ、と言ってやりたいね。

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近藤幸子さん(50歳・仮名)外資系企業や公務員としてマネジャーを経験。
八巻里美さん(45歳・仮名)弁護士事務所に勤務後、大手メーカーにてマネジャーに就任。
坂田 彩さん(40歳・仮名)同族経営の老舗メーカーに勤務するマネジャー。

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(大宮冬洋=構成)