ツアー初勝利を挙げたトンプソン やっぱりちょっと地味?(撮影:岩本芳弘)

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 首位から13打差の4オーバー、37位で終わったタイガー・ウッズ。今季は自身のシーズン初戦となったアブダビ選手権で予選落ち。米ツアー初戦のファーマーズ・インシュランス・オープンは、いきなり優勝。だが、アクセンチュア・マッチプレー選手権は1回戦で敗退し、今大会は振るわずじまい。果たして好調なのか、不調なのか。
苦しい戦いが続く石川遼が目指すゴルフとは
 初日はショットが良くてパットが悪く、2日目はその逆となって噛み合わなかった。そして決勝ラウンドはエクスキューズのオンパレードになった。3日目にチャージがかけられなかった原因は風とボールに付いた泥だと言った。「5〜6アンダーで回れるはずだった。ピンは狙っていける位置だったし、グリーンはスムーズで速くなかった。悪くとも首位と6〜7打差以内になるはずだった」。
 実際は首位と8打差で迎えた最終日はボギーとダブルボギーを次々に重ねる大荒れになった。18番のイーグルが唯一の見せ場。そして再びエクスキューズを連ねた。「そんなに悪いプレーではなかった。1〜2アンダーで回れるはずだった。ただ、ペナルティが多すぎた。池が2回、それにロストボール。問題はそれだけだった」。
 本当に「それだけ」だったのか?強風と寒さに震えた最終日は「とにかく忍耐の日だった」とタイガー自身が振り返った。その中で大きく崩れたのだから、忍耐不足だったのではないのか?ショットやパットが「そんなに悪くない」のなら、なおさら問題はメンタル面にあったのではないのだろうか。
 「目指すはW」――タイガーの常套句だ。「W」は「Win」の意。勝利のみを追い求めるタイガーであれば、勝利からほど遠い位置でのプレーとなったとき、忍耐を重ね、一打に固執するモチベーションは下がりがち。悪条件に対応し切れず崩れていった原因は、おそらくは、そこにあったはずだ。
 そんなタイガーと似た要素が石川遼にも見て取れる。石川も「優勝するためにここに来ている」を繰り返している。今大会は5戦目にして4度目の予選落ちとなったが、その結果を憂う様子はない。今後も目標を下方修正する意志はなく、初日を慎重にプレーして予選通過を目指すという姿勢もシーズン序盤の今は取るつもりはないという。毎試合、出だしから「今の僕の技術でできる最善のゴルフ」で攻め続け、そうしていく中で「はまったときに優勝争いをするゴルフを目指していく」。
 コツコツ地道に積み上げるのではなく、すべてが噛み合って「はまる」という希少なチャンスを狙い撃ちして優勝を目指す。それが現在の石川の希望だが、そうなるとタイガー同様、勝利のチャンスからほど遠い位置でプレーする際のモチベーションは下がりがちになるだろう。実際、唯一予選を通過したノーザントラストの最終日も「予選を通っても、この順位なので経験値はあんまり……」と渋い顔だった。
 何の因果か、その石川と予選2日間を共に回ったマイケル・トンプソンが堂々の初優勝を遂げた。ツアー3年目のトンプソンはタイガーや石川とは対照的なコツコツ型だ。「慌てず熱くならず、じっと耐える。それが僕という人間なんだ」。首位に立っても、ムービングデーの3日目であっても、決して無理に攻めず、「ダブルボギーだけは叩かない賢明なプレーを心掛けた。最終日も同じことをやるのみ」。
 サンデーアフタヌーン。2位と1打差で迎えた17番ではクラッチパットを着実に沈めてパーを拾った。バンカーからピン1メートルへ寄せた18番の第3打は見事だった。最悪でもパーで良しと考えたラストホールはバーディーフィニッシュとなり、2位に2打差で勝利。「アドレナリンのおかげで寒さは感じなかった」。
 勝利への渇望をそうやってコントロールし、忍耐と冷静さで初優勝をもぎ取ったトンプソン。「自分のゲームプラン通りに戦っただけ」。地味で地道で堅実なゴルフが、強風と寒波に見舞われた難コースを制し、スポットライトの興奮を熟知している他選手たちすべてに勝った(まさった)日。
 それは、ゴルフの怪か、ゴルフの妙か。それとも、それがゴルフなのだろうか。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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