日本人ビジネスマンの取扱説明書!? 外国人管理職が日本赴任前に受けている「日本のビジネス文化に関するレクチャー」とは

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先日、何人かの欧米人たちと会ったときのこと。彼らが日本に赴任する前に、日本のビジネス文化についてのレクチャーを受けたということを聞きました。

そして、「日本のビジネス文化は、今までで行った国の中で抜群に変わっている!」と言うので、レクチャーの内容を聞いてみました。すると、そこから逆に欧米人の仕事の仕方も垣間見えて、実に面白かったのです。

「日本勤務前のレクチャー」の話をしてくれたのは、アメリカ人、イギリス人、フランス人2人の4人。国際的なメーカー企業で仕事をしている人、建設会社の設計責任者など、日本に来て日本人を部下にし、日本企業に発注する管理職の人たちです。彼らの赴任期間は短く、長くても1年半くらい。その後、次の国へ移動し、またその国の人を管理する、といった働き方をしています。

4人はバラバラのレクチャーを受けたので、今回の記事に書くのは彼らが話していた内容の寄せ集め。レクチャーを受けずに赴任した欧米人管理職の人もその場にはいたので、全員がこのようなレクチャーを受けているわけではないと思われます。また、若干講師が大げさに語っている感もあります。でも、レクチャーの内容に「それは違う」と異を唱える欧米人はいなかったので、ある程度日本人の仕事の仕方について的を射たものだと考えられます。

ということで、彼らが教わったという内容のうち、興味深かったものを5つ紹介します。

■日本人が「できる」と言ったことは本当にできると見なすべし!
「えっ、それの何が驚きなの?!」と逆に思いますよね。でも、諸外国では取引先や部下が「できます!!」と言ったことが、本当はキャパオーバーだということは日常茶飯事なのだそう。日本人は大口を叩くことをせず、「できる」と言うことはちゃんとでき上がってくるので安心感が高いのだと、あるイギリス人は言っていました。

「受注先の企業は自分たちの稼働可能量をきちんと把握している。発注先も部下も、自分の仕事に対する責任意識が高い。自分の仕事が時間内に終わらなかったら『ボスの仕事の振り方が悪い。もう時間なので帰ります〜』と帰ってしまう諸外国の部下とは大違い。そして要求した以上に細かいところに配慮が行き届き、均質な成果を出すので、仕事がやりやすい」とも教えてくれました。

■日本人にとって「お客様は神様」であるということを忘れるな!
欧米人、特にフランス人にとっては客とサービス提供者は対等。サービスとお金の交換をしているのだから。だからサービス提供者はできないこと、特にやりたくないことは「できない」とはっきり言います。でも、日本人にとって「お客様は神様」。だから発注時には注意しないと受注者に無理な注文を強いてしまうかもしれないのだと、一人のアメリカ人は言っていました。

彼は「でも、良い成果を出すためには、受注側も発注側も遠慮なく言いたいことを言うべきだよ」とも。

■日本人にとって会議は決定や議論の場ではなく決定事項の報告の場である!
会議の場所は、活発な意見が飛び交うものだというイメージを持つ欧米人にとって、報告会でもないのに報告会になっちゃっているような会議はとても不思議なのだとか。

「ネマワシって言うんだよね」と言っていたフランス人は、根回しに対して否定的なのかと思いきや、「日本においては効率的だ」と肯定的。事前に意思決定する立場にある人にメールを打っておけば色々なことが思ったように決められるので、すばやくて良い、とのことでした。「優秀な部下の意見は、聞ければ聞きたいけど、会議で意見を吸い上げようとしても言ってくれないしね」ですって。それはちょっと残念なことかもしれません。

■「決定が遅いのは、日本人が無能だからである」と思うのは間違いである!
記者が一番驚いたのは、この内容。「日本人って決定が遅いと思われてるの? しかも、無能だから決定が遅いと思っているの?」と、まずびっくり。しかも意思決定が遅いのは無能だからじゃなくて何か理由があるそうなのです。

これを教えてくれたのはフランス人。詳しく聞いてみたところ、日本人は決定をするのが確かに遅いそう。しかし、それは無能だからではなく、「決定に至るまでのプロセス」がフランスとは違うから。

説明のためにちょっと極端な例をあげて説明するとこんな感じ。例えば予算が50万円・希望工期2ヶ月の仕事を外部に発注するとしようとして、4社に見積もり依頼をした場合を想像してください。A社が55万円・工期2ヶ月、B社が48万円・工期2ヶ月半、C社が49万円・工期2ヶ月、D社が50万円・工期1ヶ月半でできると見積もりを提出してきたとします。

この場合、フランス人だと、A社とB社は検討せず見た瞬間に却下。C社とD社だけを検討するそう。でも日本人の場合、予算をプラス5万円を出せるか、工期を半月伸ばせるかを含め、4社すべて比較検討し、最終的な仕事のクオリティが最上になるように検討するというのです。だから、意思決定に時間がかかるのらしいのです。

予算と希望工期を算出するにも時間がかかっているはず。それをさらに検討するのは前の仕事をムダしているのと同じだとフランス人には思える。つまり、フランス人は仕事のプロセスを大事に考えて前の工程まで戻らない。でも、もしかしたら最終の成果を考えて現時点で考えたら前に決定した内容は変わってくるかもしれない。つまり日本人はプロセスよりは仕事の成果の方を大事に考えるのだ、と彼はそのレクチャーで教わったというのです。

実際に日本人と仕事をしてみて、そのレクチャーの内容は正しかったと、そのフランス人は言います。「仕事のクオリティを最上にしようという日本人の飽くなき追求心は賞賛に値する」と言っていました。

■本音を言うのはお酒の席で。日本人にとってはお酒の席も仕事であると心得よ!
欧米人にとって、仕事の後に「ちょっと一杯飲んでいきましょう」というのは、よほど個人的に仲が良い場合以外はあまりない話。しかし、レクチャーでは「積極的に部下と飲みに行った方が良い」と言われるのだとか。

なぜなら、お酒の席でないと日本人は本音や思ったことを素直に語らないから。昼間の会議で何かの決定事項に大賛成をしているように見えた部下が、実はその決定に懸念を抱えているのを、飲んだ後ならしゃべる可能性があると、説明されたそう。

「別に怒らないし、会議中に良い意見を言ってくれたら評価するし、手間も省けるのに」と、教えてくれたイギリス人は言っていました。

いかがでしょうか。一人のフランス人は、「色んな国で仕事をしたが、ビジネス上の文化が欧米と驚くほど大きく違ったのはインドと日本だ。日本の仕事の仕方は、意思決定の仕方や細部にこだわるところなど、学びが多かった」と言っていました。

若い人にはちょっと当てはまらない日本のビジネス文化もあるように思います。でもレクチャーの内容で、日本人の美点として言われていることはその通りにできた方が良いだろうし、欠点として言われていることはやらないようにすれば好意的に思われるかもしれません。また、欧米人と仕事の仕方が違う場合は、そのやり方を試してみるのもいいですよね。

記者は意思決定の仕方を、ちょっと欧米風に変えて、スピードを高めてみようと思いました。

(文=FelixSayaka)
写真=Flickr(combust)