経営戦略とは一言で言えば資源配分のこと。企業活動では、人員配置や予算の確保が通常業務として行われている。ただ留意すべきは、資源配分の背後に意図したシナリオがあるかどうか、そしてその意図がきちんと反映されているか、ということだ。

資源配分の背後にあるシナリオとして大切なことは「ボケとツッコミ」のバランスが取れていること。「ボケ=まさか、ツッコミ=なるほど」とも言い換えられる。

「ツッコミ」とは、「なるほど」と思える道理の通った考え方。この部分は訓練すれば比較的誰にでもできるようになる。教科書的な経営戦略の本は「ツッコミ」の素養を養うには効果的だろう。右の図書のうち、最下段に挙げたアカデミックな著作は、戦略の道理を学ぶのに最適だ。

より難しいのは「ボケ」の部分。「まさか」と思わせる新しい考え方を編み出し、付加価値をつける作業だ。ビジネスに使える「ボケ」のセンスを身につけるためには、経営戦略の王道の本ばかりを読むより、多様な分野の本から発想の種を常に仕入れるほうがいい。ビジネスとは無関係に思える、古今のヒットメーカーや哲学者の言葉、文学者の対話本なども、経営のための能力を磨くのに十分有効なツールだ。

いい経営戦略は「なるほど」という道理を踏まえたうえで、「まさか」という手法を組み合わせたところに生まれるものである。

■『企画脳』秋元 康
稀代のヒットメーカーが明かす、思考回路の仕組み。ネタの上手な仕込み方など、ビジネスでも使える方法論。

■『アイデアのつくり方』ジェームス W.ヤング
かつての米国広告業界の大物経営者が語る、発想の導き方。良質なアイデアを手に入れる方法がここにある。

■『反哲学的断章』ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
独創的な哲人の言葉を集めた。思索家の深い言葉が、経営の真髄に通じる。折に触れて読者を救ってくれる1冊。

■『ゲーテとの対話』エッカーマン
前人未到の境地に達した、ゲーテの普段の姿が見えてくる。偉大な賢人の考え方は、経営にも活用可能。

■『パーキンソンの法則』C.N.パーキンソン
風刺的に物事の仕組みを解き明かす。奇抜な着眼点がユーモアを持って書かれているが、その分析は本質を突く。

■『Exit,Voice,and Loyalty』A.O.ハーシュマン
組織と人間の関わりを描いた古典的名著。最初の2、3章を読むだけでも十分な学びに。訳書もあるが、原書に挑戦したい。

■『現代企業の組織デザイン』ジョン・ロバーツ
ゲーム理論で名を馳せる著者が戦略のエッセンスを記す。経営戦略の真の論理を知りたければ、この1冊で十分。

■『実践力を鍛える戦略ノート[戦略立案編]』原田 勉
ショートケースを多用しながら、アイデアの具体化の方法を説く。ケース分析に挑戦し、力を磨く実践的な1冊。

■『小倉昌男 経営学』小倉昌男
闘う名経営者が語る、経営の真髄。ボケとツッコミのバランスの好例。ビジネスマン必読のロングセラー。

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神戸大学大学院 経営学研究科教授 原田 勉
1967年生まれ。スタンフォード大学よりPh.D(経済学)、神戸大学より博士(経営学)取得。専攻は経営戦略、技術マネジメントなど。企業の研修プログラムの企画なども行う。

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(神戸大学大学院 経営学研究科教授 原田 勉 構成=田原英明(プレジデント編集部) 撮影=浮田輝雄)