雪山で遭難したら?国立登山研修所に聞いてみた!



この時期は雪山のハイキングで遭難する人が多いそうです。では、実際に遭難してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか? 遭難救助研修などを行っている、日本スポーツ振興センターの国立登山研修所にお話を伺いました。







■雪山では自分がどこにいるのか把握することが大事



――この時期、雪のハイキングを楽しむ人が多くいますが、こうした雪山の登山で遭難しないようにするには、どんなことに注意しないといけないのでしょうか?



雪の山は夏の山と異なり、雪がすべてを隠しています。道はもちろん、道しるべや目印の赤いテープなども雪に覆われて、認識が難しくなります。地図を頼りに自分の進むべき方向と自分がどこにいるのか正確に把握できるナビゲーション能力が不可欠です。



休日ともなれば人の歩いた跡があることもありますが、むやみに足跡をたどれば、分岐点で自分の行きたい方向と異なる道に進んでしまい、目的地にたどりつけないことも十分にあります。



――ほかの人がそっちの方に進んでいるから、と安易に同じ道をたどるのは危険なのですね。



不幸な遭難事例に、初心者が登りやすい山に行くつもりが、180度反対の踏み跡をたどってしまい、ピッケル・アイゼンを駆使する尾根に踏み込んで滑落したという事例があります。



――上級者向けのコースに進んでしまったのですか。



また、天気予報が晴れの予想であっても、山では強い季節風や寒気の影響で山だけが雲に覆われ、強風・雪・濃い霧となることも多々あります。少しでも天候が安定しないときや、降雨・降雪・寒気の流入が登山をするすぐ次の日に予想されるときは、予想以上に早く天候が悪化する可能性があるので登山は中止にするべきです。



――わずかでも天候に不安があれば避けた方がいいのですね。



そうですね。きれいな雪山も晴天があればこその美しさです。



――その方が気分もいいでしょうね。遭難しないために所持しておいた方がいいという道具はありますか?



読図能力があり、夏の山などで使用法に習熟していることが前提ですが、GPSは自分の現在位置を把握するのに有効です。雪山では、天候が急変して降雪や濃霧となることが多く、遠くに見える山や尾根、谷の様子を地図で読み取ることが困難になります。



そうなると、現在位置を割り出すことができず、夏の山で培った読図能力を十分に活用できないことがあります。



――なるほど。そういった場合に、GPSが有効になるのですね。



■雪山ではとにかく冷静に



――もし、雪山で遭難してしまった場合は、どうすればいいのでしょうか? 最初にやるべきことなどを教えてください。



遭難してしまった場合は、



・その場を動かない。

・状況を冷静に分析する。

・リーダーを中心にして、無事に帰る方法や対処法をメンバー全員で確認する



といったことが大事です。単独行の場合、独り善がりな判断を下して、事態を深刻化させる可能性が多くあります。この点からも単独登山は避けるべきです。



連絡を取ることが可能な場合は、警察・消防に連絡を取り、状況を正確に伝え(このためにもメンバー全員で状況分析・対処法を話し合う必要がある)諸機関の指示に従う。連絡が取れない場合は、その場所を動かず、付近に安全に待機できる場所を見つけて避難・待機する、などが重要です。



――雪山で遭難してしまった際に役立つ道具、またその使い方などを教えてください。



雪山で身動きが取れなくなった場合、一番の危機となるのは風と寒さです。これらを防ぐために、「ツエルト」(ツェルト)と呼ばれる簡易テントを雪山では必ず携行すべきです。樹木帯であれば、木の枝などを利用して簡易テントを設営し、そこに避難することで体力の消耗を防ぐことができます。



――テントが設営できない場所だった場合はどうすればいいですか?



その場合は、なるべく風を避けることができる場所、例えば岩陰や樹木の根元には空洞があり、ここを利用すれば比較的安易に安全な空間を手に入れることができます。ここでリュックサックに腰かけてツエルトを上からかぶり、風が入ってこないようにすそをたくし込みます。



――とにかく風が直接当たるのを防ぐのですね。



ツエルトに加えて、ロウソクや登山用コンロを常に持参して、ツエルトの中で使用すれば、暖かな空間を作り出すことができます。また、日帰りの登山であっても、着替え(手袋や靴下も含めて)・防寒具・非常食・ヘッドランプを携行するようにしましょう。



これは雪山に登山する者の最低限の心得です。



■遭難の原因は準備不足と認識不足



――日本では毎年どれくらいの人が遭難しているのでしょうか?



警察庁の発表では、2010年で2,396人(死者・行方不明者294人)、2011年は2,204人(死者・行方不明者275人)となっています。



――毎年多くの人が遭難しているのですね。遭難の原因はどんな理由が多いのでしょうか?



道迷い・転滑落・雪崩などが主な遭難の原因です。しかし、これらは事前の準備で防ぐことが可能です。言い換えれば、事前の準備不足や認識不足がすべての遭難の原因といえるでしょう。



――準備不足や認識不足ですか……。



そうですね。登山をする者、自然界に分け入る者はすべて自然を学び、危険を理解して、安全に人間界に戻る義務があると考えています。自然の危険さや帰ってくる義務を認識した上で、心身の鍛錬や登山の技術の訓練など、しっかりとした準備をすることが必要です。



自然に対して真摯(しんし)に取り組む者でないと、登山をする資格はないといえるほど、山は途方もなく奥の深い世界です。こうした真摯(しんし)に取り組む心や山に対する認識を持って、登山に臨んでもらいたいと思います。





ブームだから、と安易に始める人も多い昨今。山で遭難しないためにも、登山というのは危険と隣り合わせということをちゃんと認識し、しっかりと事前の準備をして山に臨むようにしないといけませんね。



(貫井康徳@dcp)





【日本スポーツ振興センターHP】

http://www.jpnsport.go.jp/





【国立登山研修所HP】

http://jpnsport.go.jp/tozanken/