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開催3候補の東京、イスタンブール、マドリード(スペイン)のうち、マスコミ報道や英国のブックメーカーの予想では財政・治安面で群を抜く東京が本命、イスラム圏で初五輪開催となるイスタンブールが対抗視されているが、IOC首脳の意思は両都市にないことが、図らずも今回の理事会でのレスリング除外で表面化したのだ。
 そこで浮上するのが、欧州債務危機の影響をもろに受け、五輪開催どころじゃないと見られてきたマドリードである。こちらはメダル実績のないレスリング除外は歓迎で、「除外確実」とみられていた近代五種は生き残った。ここからも2020年マドリード五輪が見て取れるのだ。

 欧州の五輪貴族を中心に構成されるIOCにおいて、今なお強い影響力を持つのが前IOC会長だったスペイン人のサマランチ氏('10年死去)のファミリー。現在は息子のサマランチ・ジュニアがIOC理事に就いており、国際近代五種連合の副会長も務める。14人の投票で決めた先の理事会で近代五種が生き残れたのもそのためだろう。
 サマランチ前会長は剛腕を発揮して'92年バルセロナ五輪を実現させたが、スペインは多民族国家でカタルーニャ地方のバルセロナで開催されたことに不満がくすぶり続けている。中央政府のあるマドリードの開催を望む声が強いのだ。

 しかも、1972年、2012年、2016年とこれまで三度立候補したものの、ミュンヘン、ロンドン、リオデジャネイロに敗れている。父の遺志を継ぐ意味でも、サマランチ・ジュニアはマドリードでの五輪開催に心血を注いでいるのだ。
 「本はといえば、東京が本命に躍り出たのは大本命のローマが財政危機を理由にマリオ・モンティ首相が立候補を断念したからです。マドリードは欧州連合を背景にローマ票を取り付け、フランスとも2024年のパリ五輪とバーターする形で支援を取り付けている。パリは100年ぶりの五輪が2024年となることで待望論が強い。これが実現すると、ロンドン、リオデジャネイロのあとにマドリード、パリと欧州都市が続くことになるが、実はそれが狙いなのです。五輪は欧州主導のもとで開催し、アメリカ、日本などの商業主義とは距離を置く。英国、フランス、スペイン、ポルトガルのかつての欧州列強国は同時にアフリカ、南米、オセアニア各国の旧主国でもあり、いざ選挙となれば連携してくる。孤立無援の日本にはとても勝ち目がない」(五輪評論家)

 2020年五輪開催都市は9月7日のIOC総会の投票で決まる。投票権を持つIOC委員111人の内訳は欧州47人、アジア24人、パンアメリカン20人、アフリカ15人、オセアニア5人。あとは各競技連盟の会長と選手委員が各15人。
 このうち日本人はJOC会長の竹田恒和氏ただ1人。創始競技の柔道を含め競技団体のトップに日本人はゼロ。これこそ、冒頭で進次郎氏が問題提起する部分なのである。
 今回のIOC理事会で除外が決まったレスリングだが、日本、米国、ロシア、イランなどの反発もあり、復活のチャンスは残された。5月の同理事会(タイ)で復活を目指す野球・ソフトボール、空手、太極拳、スカッシュ、ローラースケート、スポーツクライミング、水上スキーで「残り1競技」を競うことに…。

 しかし、IOCの意思がマドリード五輪にある以上、東京、イスタンブール五輪の象徴であるレスリングが復活するとは考え難い。
 「レスリングに関してはもはや白旗状態に近い。福田会長は“室内競技を理由に冬季五輪へ行けばいい”と発言するなど、平常心を失っている。いずれにせよ最悪のケースを視野に入れている、ということ」(レスリング協会関係者)

 東京招致委員会会長の猪瀬直樹知事は「日本のお家芸の一つだから入らないとすれば非常に残念だが、招致活動に影響はない」と力説するが、3月4日にはIOCの評価委員会が東京を訪れ、4日間にわたって中央区晴海に建設される選手村の予定地や各競技予定地の現地調査に入る。
 「この時期はちょうどWBC第1ラウンドと重なり、宿敵キューバ戦(3月6日)に向けて侍ジャパンの人気が頂点に達する。野球が東京五輪で復活するにはレスリングに外れてもらう以外には方法がなく、日本の世論は真っ二つに割れる。あえてこの時期に視察を選んだとすれば、IOCの戦略は恐ろしい限り」(スポーツ紙デスク)

 とうてい日本のかなう相手ではない。