東芝サプライズ社長人事、実績軽視、経団連会長狙い優先と社内から疑問の声も

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 2月26日、東芝が佐々木則夫(63)社長の後任に、田中久雄(62)副社長を昇格させる人事を発表した。

 今回の人事は、東芝社内の問題だけではない。財界人事の混迷の影響が大きかったと見るほうが正しいかもしれない。

「6月に佐々木則夫社長が経団連副会長に就き、西田厚聡会長は経団連副会長を退任する。これに伴い、西田さんは東芝の会長も退任すると見られていた」(経団連関係者)というが、蓋を開けてみたら、西田氏は東芝会長職に留任。東芝が上場して以降初めて副会長職を設けて、佐々木氏をそこに押し込んだ形だ。西田、佐々木のパワーバランスを保つ必要性が出てきて、両者と等距離に位置した田中氏が選ばれたという筋書きが見えてくる。

●狙いは経団連会長

 では、なぜ西田氏が東芝会長職に留任したのか?

 前出の経団連関係者は「経団連会長を両にらみで狙っているというアピールですよ」とささやく。

 西田氏は前回の経団連会長レースでは最有力候補だったが、当時は同じく東芝の岡村正(74)相談役が日本商工会議所の会頭を務めていた。同一企業から財界団体のトップを2人選出することに一部会員が懸念を示したため、結果的に住友化学の米倉弘昌会長が経団連会長に選出された。西田氏は経団連の副会長職を辞め、東芝の会長も退くと見られていたため、「財界総理の芽は完全につみ取られた」ともメディアは一斉に報じた。それがまさかの東芝会長の留任で、「現役の社長、会長に限る」という経団連会長になるための不文律に触れなくなったわけだ。

 一方、経済財政諮問会議の民間議員で経団連副会長に就く佐々木氏は、本命不在の「ポスト米倉」を争うレースで急浮上中。東芝としては西田、佐々木の「2頭出し」で、是が非でも財界総理の座を手中に収めたいわけだ。

●財界、社内優先の人事に、社内から疑問の声も

 冒頭の東芝OBは、次のように語る。

「『ポスト米倉』は混沌としていて、経団連副会長で日立製作所会長の川村隆(73)の名前もささやかれ始めている。東芝にしてみれば、永遠のライバル日立にだけは財界総理の座を渡したくない。また、東芝OBの中には、米倉さんを含め経団連の西田さんへの扱いがあまりにもひどいと憤慨している人もいる。前回は本命視されながらトヨタ自動車の反対で外され、今回も米倉さんの単なる『西田嫌い』で最短距離にいながら一度は外された。複雑な事情が絡み合い、西田さんの東芝会長職の留任が決定したのでは」と語る。

 近年は生産部門や調達部門の重要性が増す。調達部門出身の田中氏社長昇格は、こうした流れに位置づけることもできる。しかし、「異例の人事」に東芝社内はシラケムードだ。ある若手社員は「実績を残した人が登用されずに、社内や財界のパワーバランスで社長を選ばれてもね」とこぼす。

 西田氏は2月26日の記者会見で、東芝の課題としてグローバル化の進展の遅さを指摘した。だが、内外から疑問が噴出する不透明な人事にこそ、世界との乖離の一端が透けて見えるのは気のせいだろうか。
(文=江田晃一/経済ジャーナリスト)