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ビジネスパーソン研究FILE Vol.201

株式会社リクルートマーケティングパートナーズ 池田脩太郎さん

新規事業を立ち上げた池田さんの仕事の醍醐味とは?


■入社2年目には23名のスタッフをまとめるエリアリーダーに。自ら講演の企画も立て、大成功を収めた

「世の中に影響を与える仕事がしたい」と考えてリクルート(2012年より分社化。現リクルートマーケティングパートナーズ)に入社した池田さん。現在、主に手がけている仕事は、受験生に向けたWebサイト『受験サプリ』のWeb予備校コンテンツ開発だ。身近なサービスでダイレクトにユーザーの反響を感じる大きなやりがいがあるという。
「入社前、配属先の希望について聞かれ、どこでもいいから規模の小さな部署にしてほしいと伝えました。仕事の全体像を見渡しやすいし、発達途中の分野で刺激を感じながら成長していけると考えたんです。僕の配属先はまさにそんな部署。30名程度の社員が200名の業務委託スタッフと共に、全国に5000ある高校に対し、大学を紹介する情報誌などのメディアを活用してもらうよう働きかけていました。入社後は、2日間の研修を受けた後、すぐに先輩に同行して担当する30校の引き継ぎへ。右も左もわからないまま、とにかく仕事を覚えていきましたね」

池田さんのミッションは、担当する高校に向け、進路選択に役立つ無料の情報誌『進学ブック』やWebメディア『進学ネット』を案内し、使ってもらえるように働きかけること。半年間、現場で仕事の流れを学んだ後、高校の先生方とやりとりする渉外担当の神奈川県のエリアリーダーとして、8名のスタッフをまとめることになった。
「すごいスピード感で仕事を任されていくことに驚きとやりがいを感じました! しかし、スタッフの多くは40〜50代の自分の母親にも近い女性で、ド新人の僕にとっては人生の先輩とも言える存在。マネジメントする難しさをすぐに痛感しました。現場の主な仕事は、担当する高校に一定部数の情報誌を届けることと、情報誌やネットサービスの魅力を伝え、高校生の読者登録を増やすこと。当時、事業拡大に向け、配布部数や登録者数を大幅に増やすという新たな目標が掲げられていたので、『何でこんなに仕事が増えるの』というスタッフの不満も多く、やる気になってもらうためにどうすればいいか悩みました」

そこで、池田さんは「もっと仕事にやりがいを感じてもらおう」と考え、個々で動くのではなく、チームとしての成果を評価する方針を立てた。各自の成功例、失敗例などもミーティングで共有し、汎用性の高い事例を型化。数字目標の裏側にある背景もしっかりと説明した。事業全体の中で、自分の仕事が持つ意義を理解してもらい、一緒に目標を達成する喜びを感じてもらう努力を続けた。その結果チームの士気は上がり、今の不平不満ではなく、今できることを議論し、積極的に情報交換するまでになった。
「現場を回っていたころ、情報誌を届ける意味について考えたことがありました。先生たちは情報誌が欲しいわけじゃなく、生徒の未来を良くしたいとだけ願っている。僕らが目指すべき本当のゴールは、届けた情報誌を活用してもらい、高校生たちがより良い進路を決められるように支援することなんです。進路が多様化し、膨大な進学情報があふれる今、生徒はもちろん、先生もその情報を把握しきれないもの。そこをつなぐ仕組みをつくりたいと強く感じて! スタッフそれぞれにも、高校生の将来を応援したいという想いがしっかりあったので、自分の仕事が彼らの役に立つということを理解してもらおうと考えました」

入社2年目、池田さんは九州に異動し、23名のスタッフをまとめる業務推進リーダーとなる。しかし、社内のマネジメント体制や、業務内容に対するスタッフの不満の声はさらに大きく、既存のスキームに限界を感じていたという。
「『僕らの仕事は情報誌を届けるだけのものではなく、そこから高校生のアクションを生み出し、進路選択のきっかけにつなげる役割を持っている』と毎回、説得しましたが、なかなか大きな改善にはつながらなかった。そこで、僕自身、情報誌を届け、間接的にアクションを生み出す既存の仕組みでは限界があると感じていたので、それなら『高校生が直接アクションするような仕組みを創ろう!』と思いました」

そこで思い出したのが、入社1年目のエピソード。「情報誌が欲しいのではなく、生徒に人生の道を選ばせたい」という先生たちの声に応え、仕事の探し方や学校選びの考え方について教える高校での講演会を開催し、高く評価してもらえたことがあったのだ。池田さんはこの経験を生かそうと考える。
「進路についての情報誌を配布していたので、これを使って進路について考えさせる講演を開催し、高校生自らにその場で、直接アクションさせようと。これなら、先生のニーズに応えることができるうえ、アクションの最大化も実現できる! 講師は自分がやればいいと考え、さっそく企画を立てました」

上司に相談して即OKをもらった後、高校側にも打診すると、「うちの学校でもやってほしい」という多くの声が! 1人では限界があると感じた池田さんは、九州エリアの大学・専門学校への営業を担当する営業部にも講師として協力してもらい、講演リソースを増やすことを計画。エリアを統括するマネージャーに一緒に動いてもらえるように働きかけ、営業メンバーの協力も得られることになった。
「配布だけでは能動的な高校生しか動かせなかったんですが、講演のおかげで、受動的な高校生も動かし、資料請求アクション率が300パーセントアップしたんです! 営業担当者から『もっとやろう』という声が上がり、スタッフからは『エリアリーダーが多くの高校生を動かしていく姿に、大きなやりがいを感じた』と言ってもらえて。とても感慨深いものがありましたね」

また、講演後のアンケート結果から、進路について真剣に考えるようになった高校生の様子が垣間見え、大きな手応えを感じたという。
「講演時にも、『やりたいことが見つからない。どうすればいいのか』などの質問に答えることも多く、『今、目の前にいる高校生たちが真剣に将来を考えている。僕らが今、そのきっかけをつくっている』という喜びを感じました。自分の手がける仕事には大きな意義があると実感できましたね」


■新規事業コンペを経て、「Web予備校」サービスを実現! 世の中に影響を与える手応えを実感

自ら仕組みをつくり、組織を動かした池田さんは、入社3年目でメディアプロデュース部に異動する。商品企画を手がけるこの部署で、池田さんは新たな仕事の難しさに直面する。
「これまでは既存のメディアを活用する仕事でしたが、今度はメディアそのものを新たに創り出していかねばなりません。何を企画してもいいので、何から手をつければいいのかもわからなくて。それに、現場だけでなく、経営層を説得できる根拠がなくては企画が通りませんから。とにかく毎日の会議、資料づくりに必死でした」

まずは高校生やクライアントである大学や専門学校の現状や抱えている課題をより深く理解しようと考え、既存サービスに結びつけた企画を手がけたが、なかなか大きな成果は得られなかった。そんな池田さんに大きなチャンスが訪れたのは、配属から半年後のこと。当時のリクルートで例年実施していた新規事業コンペに挑戦することになったのだ。
「既存の商品企画会議でアイデアを出し合う中、『結局のところ、高校生が見たいものって何だろう?』と。そこで思いついたのが、予備校の授業。カリスマ講師の授業も、オンラインで利用者を広げれば安く提供できるのではないかと考えて。上司と2人でディスカッションしながら企画をまとめていくうち、コンペに出すことになりました」

すぐに上司と共同し、営業部やメディア戦略部のメンバーなどを集め、総勢8名のチームを結成。社外のシステム開発会社にも協力を仰いで企画づくり。第一関門の一次審査は、応募総数300件から50件に絞られる厳しいものだったが、池田さんのチームは無事通過! 次に控える最終審査に向け、当時のリクルート社長をはじめとする経営層を説得できるだけの論理的な材料をそろえていったという。
「まず『なぜ競合がこのサービスを手がけず、そしてなぜうちの会社がやるべきなのか』をみんなで考えました。『リアルの授業を展開し高価格、高コストの予備校では、オンライン授業の可能性を感じていても低価格で提供するような価格破壊に踏み切ることが難しく、まさにイノベーションのジレンマ。しかし、業界未参入でさまざまなオンライン事業を展開しているわれわれなら破壊的イノベーターになれる可能性がある!』という結論を導き出しました。さらに、コストを抑えて事業を拡大するため、少数精鋭のカリスマ予備校講師と組む方法論を考えた。チーム全員で大手予備校に知り合いがいる知人を片っ端から当たり、講師を紹介してもらって必死で口説き落としました。『受験に自由を。経済的、物理的な理由で塾や予備校に行けない高校生のためになりたい』というわれわれの理念に共感いただけたこと、これが決断の決定打でした」

さらに、実際にサービスが受け入れられるかどうかを検証するため、韓国のオンライン予備校サービスの視察を敢行。利用者だった現地の大学生20人にインタビューを行い、「なぜリアルよりオンラインを選んだか、本当にオンラインで勉強できるのか」をひも解くことで、成功要因を明確にした。
「日本の大学生100人にもグループインタビューしましたね。協力してもらう予定の人気講師の授業をオンラインで受けてもらった結果、80パーセントの高校生が『利用したい』と回答。目の前で反響の大きさを実感し、これまで検討してきたことに間違いはなかったという確信を持つことができました。自分の中でリアリティーが湧いたのはまさにこの瞬間。経済的、物理的な理由で予備校に行けなかった学生から『こういうサービスがあったなら、自分も使いたかった』という声を直接聞けたことで、社会的意義のあるサービスを提供できると実感。僕らで絶対に実現しようと決意を固めました」

最終審査のプレゼンの反応は上々で、事業化へのGOが出たのはプレゼン当日の夜だった。
「仕事中に事業化決定のメールが届いたんです。その瞬間、静まり返っていたフロアにメンバーたちの『やったぞ!』と叫ぶ声が響き渡って。メチャクチャうれしくて、泣けるほど感極まりました(笑)。ゼロから組み立てたものが認められる喜び、そして何より、『世の中に影響を与えたい』という入社時からの夢を実現できると感じました!」

その後、池田さんはWeb予備校のコンテンツの開発を担当し、授業を撮影するスタジオ探しから撮影・テキスト業者のディレクション、講師との講座のラインナップ設計、生産管理などに奔走。8カ月の準備期間を経た後、ようやく「Web予備校(現在の受験サプリ)」のスタートにこぎ着けた。
「オープンから1カ月で、サイトの評価欄には5000件ものコメント書き込みがあり、9割以上が高い評価と感謝のコメント。ツイッターにも『受験サプリありがとう。助かりました!』というコメントがたくさんあり、『カスタマーに受け入れられるサービスを創り、世の中に大きな影響を与えた』という大きなやりがいを感じた瞬間でした。また、もちろん入社するときは、まさか自分が予備校を創るなんて想像もしておらず、でも振り返ってみるとまさにこれがリクルートで働く醍醐味なんだなと。現在、『受験サプリ』は受験生の3人に1人が利用していますが、いずれは受験生の誰もが使うスタンダードなサービスへと成長させていきたい! 真に求められるサービスにするため、磨き込む努力を続けていきます」